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タイムスタンプの役目と付与及び一括検証~電子帳簿保存法はこう活用する!領収書電子化ガイド解説 第6回~

Hiroaki Funakoshi |

前回までは、電子帳簿保存法のスキャナ保存を申請する企業において検討していただく、内部統制に関するルールの策定等について説明しました。
今回から第8回までは、スキャナ保存に対応する製品に求められる機能に関して、特にConcur Expenseにおける対応機能をもとにして説明いたします。

まず今回は、タイムスタンプ機能について深堀します。

電子帳簿保存法についてより詳しくはこちら:改正電子帳簿保存法 活用事例集

令和三年度税制改正徹底解説!電子帳簿保存法で領収書のスキャナ保存、電子化はどうなる?

タイムスタンプは何のために付与するのか?

領収書の電子化をご検討の皆様の中には、タイムスタンプとは何なのか?と思われている方もいらっしゃるかもしれません。
タイムスタンプとは、当該の電子ファイル・データが、「その時刻」に、「その内容」で存在していたことを証明するためのものです。

今回のスキャナ保存におけるタイムスタンプの意義は、「その内容で存在していた」ということを証明する点にあります。つまり、電子化された領収書の画像に対してタイムスタンプを付与しますが、付与した時点での領収書の画像の内容を、その後ずっと証明し続けることが目的になります。

もう少し簡単にお話ししますと、領収書の画像に対してタイムスタンプを付与した時点での内容が「正」のものとなり、もしタイムスタンプを付与した後に、何らかの画像の改ざんを行った場合、そのタイムスタンプは「無効」となります。つまり、領収書の画像に対して改ざんが行われてないかどうかを、後で見つけることができるようにするために、タイムスタンプを付与する、ということになります。

どのようにして改ざんが行われていないかどうかを検知するのか、については、「タイムスタンプの一括検証」の項にて説明いたします。

タイムスタンプの付与

よく「領収書の電子化」と言いますが、実際には、以下のプロセスを完了することで、領収書の電子化が完了いたします。(以下の例は、領収書を受領した本人が電子化をする場合)
領収書を受領した本人が電子化を行う場合に注意したいのは、「自筆で署名をする必要がある」ことです。
「自筆で」ということになりますので、図の中にも記載しておりますが、押印での署名は認められません。自筆で、フルネームを記載する必要があります。
理由としては、「領収書の使い回し」を防止するためです。
そのため、確実に受領者及びその領収書を使って経費を精算しようとしている人が誰なのかがわかる必要があります。苗字だけの印では、同じ苗字の人がいる場合、判別がつかなくなる場合がありますので、フルネーム、ということになっています。

署名後、領収書の画像を作成することになりますが、Concur Expenseにおいては、iOS/Android向けに配布しているアプリである、Concur Mobileをご利用いただくことで、規定された画素数(388万画素以上)で撮影をし、クラウドサーバーへ送信することが可能です。
Concur Mobileでの読み取り機能については、次回第7回で詳しく説明します。

また、スキャナを利用して画像を作成する場合は、主にPDF形式でスキャンいただき、Concur ExpenseにログインしているWebブラウザを通してアップロードしていただけます。

Concur Expenseでは、クラウドサーバーに画像ファイルがアップロードされた後、ほどなくタイムスタンプが付与されます。

実はこの第6回は、弊社の本社がある米国ワシントン州のベルビューにて執筆しておりますが、今回本社に来た目的が、このタイムスタンプ機能の最終確認及びテスト運用の開始です。ちょうどこの出張の間に、タイムスタンプ機能の実環境でのテストが、弊社Concur Japan社内で開始されましたので、すぐさま米国で受領した領収書を、Concur Mobileにて撮影し(もちろん自筆済み)、Concur Expenseにアップロードいたしました。
アップロード後、1分と経たずにタイムスタンプが付与され、正しく動作していることを確認いたしました。皆様にお届けできる日も近いと思います。

このタイムスタンプの付与までが、電子化のプロセスになります。ですので、この時点での領収書の内容を「正」として、保管し続ける必要があります。

ここまでを、領収書受領者本人の場合は3日以内に行う必要があります。この3日間は、領収書を受領した翌日を起算日にして3日以内です。例えば、月曜日にもらった領収書は、火・水・木曜の3日間に行う必要があります。これは土日も含みますので、金曜日にもらった領収書は、土・日・月曜の3日間ということになります。
早期入力方式の場合は1週間、業務処理サイクル方式の場合は、最長1か月+1週間までに電子化を行う必要があることなります。

タイムスタンプの一括検証機能

タイムスタンプが付与された領収書画像は、法定期間中保存しなければなりません。
通常は7年間ですが、繰越欠損金がある企業は10年間となります。

冒頭でも説明しましたが、タイムスタンプは、領収書の画像が改ざんされていないことを証明するために付与するものです。その証明のために必要な機能が、この「タイムスタンプの一括検証機能」になります。
この機能は、税務当局が税務調査をする際、過去に電子化された領収書に改ざんが無いかどうかを確認するための機能になりますので、実際に電子化を行っている企業の方は、ほとんど使わない機能になると考えています。

ではどのように改ざんを見つけ出すことができるのかを、簡単にご説明します。

領収書画像へタイムスタンプをつける際、その画像の「指紋」ともいえる「ハッシュ値」というものを取得します。このハッシュ値は、一つ一つのファイルで全く異なる値が取得されますので、まさにファイルの「指紋」と言ってもいいかもしれません。
このハッシュ値を使用して、当該ファイル用のタイムスタンプが生成されます。このタイムスタンプ内にハッシュ値が格納されており、それが領収書画像とともにタイムスタンプの形で、7年間、ないし10年間保存されます。
 
もし保存期間中に、画像ファイルに何らかの改ざん(例:画像加工ソフトを用いて金額や日付を書き換えるなど)された場合、どうなるでしょう?
その画像ファイルのハッシュ値を改めて取得した際、当初(改ざん前の「正」の画像)のハッシュ値とは異なった値になります。
つまり、改ざんしたことにより、当初の「正」ファイルとは「異なったファイル」が生成された、ということになるのです。

このタイムスタンプの一括検証機能では、最初にタイムスタンプが付与された、「正」のファイルとした時点でハッシュ値と、税務当局が調査の際、本機能を使ってその時点で取得したハッシュ値が「一致」すれば、「最初にタイムスタンプが付与されて以降、領収書の画像ファイルは改ざんされていない」ということを証明できます。
もし一致しなければ「改ざんされた」ことが類推可能になります。
つまり、タイムスタンプの検証を通して、改ざん等がされていないかどうかを「検証」するということになります。

その検証を、特定の期間のすべての領収書画像ファイルに対して「一括して」行い、その結果を検索・表示できるようにするための機能のことを、「タイムスタンプの一括検証機能」と呼んでいます。

Concur Expenseにおいては、このタイムスタンプの一括検証機能もご提供いたします。

タイムスタンプに関する機能の説明は以上といたします。
 
第7回は、紙の領収書の読み取りの方法(スキャナ、モバイル)や、紙の大きさ情報の保存に関しての説明をいたします。

電子帳簿保存法はこう活用する!領収書電子化ガイド(リンク集)

第1回「領収書電子化の目的及び、必要な検討・対応は何か?」
第2回「領収書電子化の要件の概要と申請までの流れ」前編後編
第3回「領収書を電子化するための方式と日数制限」
第4回「適正事務処理要件に基づく社内規程の策定」
第5回「紙の領収書を廃棄するための定期検査はどうすればいい?」
第6回「タイムスタンプの役目と付与及び一括検証」
第7回「モバイルでの読み取りと読取情報の保存」
第8回「Concur Expense利用時における想定事務処理フロー」

コンカーではじめる電子帳簿保存法はこちら

「電子帳簿保存法はこう活用する!領収書電子化完全ガイド」がダウンロードできます

ブログの内容をPDFにまとめました。また、PDF版として特別に弊社に寄せられる「よくある質問」などもご紹介しています。
これから領収書電子化の検討をはじめる方におすすめです。是非「電子帳簿保存法はこう活用する!領収書電子化完全ガイド」をご覧ください。


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