テレワークの通信費はどうなる?気になる労務制度や費用負担

ICT(情報通信技術)を活用した時間や場所にとらわれない柔軟な働き方、テレワーク。実際にテレワークを始めようと思ったとき、気になるのが労務管理や費用負担についての考え方ではないでしょうか。今回はテレワーク導入において、企業が考慮すべき費用負担や労働基準についてお話しします。

 

在宅勤務における労働法規はどうなる?

労働基準法上の従業員については、テレワークを行う場合においても、 労働基準関係法令が適用されます。よって、テレワーク実施時においても、以下の法令を遵守する必要があります。

● 労働基準法(昭和22年法律第49号) 
● 最低賃金法(昭和34年法律第137号) 
● 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号) 
● 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号) など

具体的には、企業はどのような対応が必要になるのでしょうか?

①労働条件の明示 

企業は労働契約締結に際し、就業場所を明示する必要があります。これによって、 従業員がテレワークを行う予定の場合、就業場所を明示するのが望ましいですが、従業員の業務内容や都合に合わせて働く場所を柔軟に運用する場合は、就業の場所についての許可基準を示した上で、「使用者が許可する場所」といった形で明示することも可能です。(労働基準法施行規則5条2項)

②労働時間の把握 

通常の労働時間制度に基づきテレワークを行う場合についても、企業は労働時間を適正に管理するため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき、従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録しなければなりません。同ガイドラインにおいては、労働時間を記録する原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によること等が挙げられています。また、 やむを得ず自己申告制によって労働時間の把握を行う場合においても、同ガイドラインを踏まえた措置を講ずる必要があります。

また、テレワークでも企業の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、事業場外みなし労働時間制が適用されます。(労働基準法第38条の2)その場合、①企業の指示により、 常時情報通信機器が通信可能な状態におくとされていない(回線の接続や会社携帯は所持しているけれども、従業員に即応の義務が課されていなかったり、自由に接続を切断することが認められているような状態)、②企業の具体的な指示に基づいて随時業務を行っていない(「具体的な指示」には、業務の目的や期限といった基本的な事項についての指示・変更は該当しません。)という2つの要件を満たすことが必要です。

③業績評価・人事管理等の取扱い 

テレワークにおいては業績評価や人事管理についても、評価者・従業員が懸念を抱くことのないように評価制度および賃金制度を明確にする必要があります。オフィス勤務と異なる制度を用いる場合には、その取扱い内容を取り決め、説明しておく必要があります。また、就業規則の変更手続も必要です(労働基準法89条2号)。評価が「出社ありき」になっている場合は、オフィス勤務と同様の評価を行うためにも業務目標の設定や、評価基準の見直しをおすすめします。

④通信費・情報通信機器等の費用負担 

費用負担については、従業員がその負担を負うことがあり得るため、あらかじめ労使で話し合い決めておく必要があります。 在宅勤務等を行う従業員に通信費や情報通信機器等の費用負担をさせる場合には、就業規則に規定する必要があります。後ほど解説します。

⑤社内教育の取扱い 

在宅勤務等を行う労働者について、社内教育や研修制度に関する定めをする場合にも、当該事項について 就業規則に規定しなければなりません。テレワークを行うと、従業員のOJT教育に困難が発生することもあり得るため、社内教育を充実させましょう。また、テレワークを行う従業員についての社内教育や研修制度に関する定めをする場合も、就業規則に規定する必要があります。(労働基準法第89条第7号)

 

通信費をはじめとする費用負担はどう考える?

通信費・水道光熱費などの負担については、テレワーク導入にあたって明確なルールをつくり、従業員に説明しましょう。労働基準法第89条第1項第5号に「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項を就業規則に定めなければならない。」と規定されているとおり、必要に応じて就業規則の変更もしなければなりません。 なお、就業規則の作成義務がない会社では、労使協定を結んだり、労働条件通知書で従業員に通知します。

 テレワークの導入によって、発生する費用は次のようなものが考えられます。 

 ①情報通信機器の費用 

パソコン本体や周辺機器、携帯電話、スマートフォンなどの情報通信機器は会社から貸与しているケースが多く見られます。 会社が貸与する場合、会社負担としているところが多いようです。

②文具、備品、宅配便等の費用

切手や宅配メール便など、事前に配布できるものは従業員に渡しておき、会社宛の宅配便は着払いにするなどで会社負担として対応ができます。長期の在宅等でやむを得ず従業員が文具消耗品の購入や宅配メール便の料金を一時立て替える場合は、精算基準や方法についてもルール化しておくことが必要です。

③通信回線費用

モバイルワークでは携帯電話やノートパソコン、Wi-Fiルーターを会社から貸与することで会社負担としているケースが多く見られます。しかし、在宅勤務では自宅内のブロードバンド回線の工事費、基本料金、通信回線使用料等が発生するため、個人の使用と業務使用との切り分けが困難になります。この場合には、一定額を手当として会社負担とする例が多く見られます。

④水道光熱費 

在宅勤務の電気、水道などの光熱費も実際には負担が生じます。こちらも業務使用分との切り分けが困難なため、一律の手当に含めて支払う例が見受けられます。

労働時間や制度を柔軟に運用するためには、規定が必要です。自社でのテレワーク運用のあるべき姿を描きながら、どのように規定を変える必要があるかを考えましょう。なお、費用負担にあたって経費周りの規定を作成する必要がある場合は、弊社の資料「はじめての旅費・交際費・経費精算規程作成マニュアル」も参考にしてみてください。

 

参考:「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」( 厚生労働省)

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