一般的な請求書電子化の事務処理フロー(後編)~電子帳簿保存法はこう活用する!請求書電子化ガイド解説 第3回~

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第2回では、想定される一般的な請求書電子化の事務処理フローについて、ステップ1~3まで説明いたしました。

 ステップ1 請求書を受領する
 ステップ2 請求書を電子化する
 ステップ3 請求書処理を上長に申請する
 ステップ4 上長・経理担当者等において承認する
 ステップ5 紙の請求書を回収する
 ステップ6 定期検査の後、紙の請求書を廃棄する

今回は、ステップ4~6について説明します。

ステップ4 上長・経理担当者等において承認する

請求書をスキャンし、関連する情報(支払先情報、請求書明細等)を入力した後、請求書が上長に申請されます。前回説明した通り、Concur Invoiceでは、請求書画像をアップロードし、関係する項目(請求年月日等)を入力し、「タイムスタンプ」ボタンをクリックしたらタイムスタンプが付与されるため、国税庁の言う「電子化」はこの時完了することになります。

申請を受理した上長や経理担当者等においては、領収書と同様、請求書に関する入力内容や、経費としての正当性を確認するとともに、請求書の画像に不備がないかどうかも併せてチェックするケースもあります。

請求書申請の承認時に手間取るのは、画像確認よりも請求書明細の確認の方かもしれません。
米国では「1つの発注で1通の請求書」が一般的ですが、日本では1通の請求書内に、複数の発注に関する明細がまとめて記載されているケース(例:当月発注分を1つの請求書にまとめる)もあります。そうなると、1回の請求書申請に対して、内容確認に時間を要することになります。

領収書で確認すべき項目は、「領収年月日」「領収金額」「取引先名称」「利用目的」くらいでした。
電子帳簿保存法の観点からいうと、請求書に関して必ず入力し、検索できるようにしておくべき項目は、「請求年月日」「請求金額」「取引先名称」になり、請求書明細の入力は必須ではありません。

請求書明細が必要になるのは、Concur Invoiceを帳簿代用書類とした際に、本来会計帳簿のほうに記載されるべき「請求書明細」を、代わりにConcur Invoiceに記録しておく、という場合です。
ただその場合でも、請求書画像が鮮明で明細内容が確認できれば、請求書明細をわざわざ入力する必要はありません。しかし、「発注品名」「単価」「数量」「小計」などの明細をテキストで入力しておくとデータとして活用できるため、後日経費分析を行う際に非常に有効であり、経費削減のヒントを得ることができるかもしれません。

この「請求書明細情報の利活用」と「承認者の確認の手間の削減」を両立する方法として、BPOサービスの活用があります。
一般的なのは、請求書内容の入力代行です。Concur Invoiceでも、請求書の画像をアップロードすることで、弊社のマニラオフィスにいるスタッフが、請求書内容の入力を代行いたします。この際、画像自体が鮮明であるかどうかも確認いたしますので、請求書明細情報の利活用だけではなく、電子帳簿保存法への対応においてもメリットがあります。
ぜひ、こういったBPOサービスの活用も検討してみてください。

ステップ5 紙の請求書を回収する

紙の請求書の回収についても、明確にフローを定めておく必要があります。紙を回収する必要があるのは、以下の場合です。

  •  定期検査を実施する時
  •  受領日翌日から37日が過ぎた後に電子化を行った時

後者の場合は、紙の原本を7年間(もしくは10年間)保管しなければいけません。

領収書の場合の多くは、店舗等で受領した本人が電子化を行った上で、まとめて、所定の相手ないしは場所に提出することになりますが、請求書の場合は先述の通り、初めから請求書処理の担当者に紙の請求書が渡った上で、その者が電子化を行うことが想定されます。

すでに領収書にて電子帳簿保存法の対応を始めている企業の方であれば、紙の領収書を従業員からもれなく回収する方法について、思案された方も多いと思います。請求書の場合は領収書と異なり、すべての従業員が請求書を受領し電子化を行うことにはならないため、領収書よりも悩むことがないかもしれません。請求書電子化のフローを整えれば、自動的に紙の請求書もついて回ってくる、ということも考えられるでしょう。

ステップ6 定期検査の後、紙の請求書を廃棄する

紙の請求書を回収した後は、定期検査を経て、廃棄をするステップに移ります。

定期検査及び廃棄に求められる要件は、領収書の場合と全く同じです。第5回「紙の領収書を廃棄するための定期検査はどうすればいい?」を参照してください。

改めて整理すると、以下の定期検査を行った上で、廃棄が可能になります。

  1.  適正事務処理要件に基づいて、社内の事務処理が正しく行われているかどうかの確認
  2.  紙の原本と電子化された画像・入力内容について、一定数を見比べ、問題がないことを確認

加えて、定期検査の実施については、記録簿に記録しておく必要があります。記録簿のフォーマットは自由です。Word形式、Excel形式など、貴社にとって記録しやすく、閲覧しやすいもので実施してください。

ところで、以前よりお問い合わせいただく内容として、「紙の原本は必ず廃棄しなければならないのか?」という質問がございます。
領収書について国税局の担当官からの回答は、
「紙の原本を残したままにしておくと、その原本で再度経費精算を行うという不正が発生する可能性があります。そのため、回収し、廃棄することで、不正防止の内部統制を徹底してください。」
というものでした。

加えて、電子化を行うためには、少なからずシステム投資や作業工数(事務処理フローの検討や社内での調整ごとなど)が発生します。さらに、電子化した領収書・請求書についても、従来通り紙の原本を保管し続ける・・・となると、単純に考えて、二重コストになってしまいます。SAP Concurご利用のお客様は、電子帳簿保存法に対応する目的として、真っ先に「紙の原本の廃棄による手間、コストの削減」を挙げる方が非常に多いです。コストがかかっても紙の原本を保管したほうがメリットがある・・・という場合でなければ、やはり廃棄を前提とした業務改善、いわゆる「ペーパーレスへの取り組み」を行うことが、望ましいと考えます。

第4回は、請求書を電子化するために利用するデバイスについて、領収書の電子化との違いや、想定される「電子化の作業シーン」についてのほかに、電子請求書に関して説明いたします。

電子帳簿保存法はこう活用する!請求書電子化ガイド(リンク集)

第1回「請求書と領収書の電子化の違い
第2回「一般的な請求書電子化の事務処理フロー(前編)
第3回「一般的な請求書電子化の事務処理フロー(後編)
第4回「請求書を電子化するためのデバイス・電子請求書について
第5回「Concur Invoiceでの請求書電子化フロー」(coming soon)

領収書・請求書を電子化するためには
・電子帳簿保存法 始め方