限度額を超えた領収書は複数枚に分けて経費精算してもいいですか?- 経費に関する意外と知らないFAQ

経費精算に関してよく聞かれる質問とその回答をまとめたブログシリーズ、今回は限度額を超えた領収書の取り扱いがテーマです。

経費精算の際には、通常領収書が必要になりますね。会社の規定で決まっている接待交際費の限度額を超えるため、飲食代の領収書を複数枚に分ける、あるいは、一定額を超えると稟議が必要になるので備品購入時の領収書を稟議がいらない額になるよう2枚に分ける。このような領収書を2枚に分ける行為は、税法上問題となる場合があります。

 

質問:

限度額を超えた領収書を複数枚に分けてもいいのでしょうか?

回答:

一つの商品に対する領収書を複数枚に分けたり、一回の会食経費の領収書を複数枚に分けたりすることは、税法上問題となります。ただし、割り勘のために領収書を複数枚に分ける場合は特に問題になりません。

解説:

会社でパソコンや机などの備品を購入する場合を考えてみます。例えば、15万円のパソコン1台を会社の備品として購入しました。このとき、稟議を通しやすくするためなどの理由で、領収書を8万円と7万円の2枚に分けてもらうとします。この場合、2枚の領収書で経費精算をすることになるので、会社側では8万円のパソコン1台と7万円のパソコン1台の合計2台のパソコンを購入したという処理になります。

税法上では、「取得価額が10万円未満のものは、全額をその年の経費とする」とされています。つまり、パソコンなど取得価額が「10万円」未満のものは固定資産とせず、購入時に全額をその年の経費にしてもよいことになっているのです。なお、その場合は「消耗品費」として一括で経費として計上するのが一般的です。(注:中小企業者等の場合、取得価額「30万円」未満である資産であっても、特例で経費となる場合があります。)

上記の例では、本来15万円の領収書1枚であればパソコンは固定資産となり、その年に一括で経費として処理されることはありません。しかし、8万円と7万円の領収書2枚に分けることで、10万円未満の消耗品が2つとなり、その年の経費として処理されてしまいます。この処理により、その年の会社の経費が増えてしまうことになります。これは、収める税金の額も本来の税額より少なくなるため、脱税とみなされる行為です。

 

飲食代の領収書を複数枚に分けることで、税法上問題になる場合も

別の例を考えてみましょう。会社の規定で、交際費の飲食代は1人当たり 5,000 円以下と決まっていることが多いです。1人当たりの金額が5,000円を超えてしまった場合、この規定内に収めるために領収書を分けることは可能でしょうか?

「交際費等」の範囲は法人税法において決まっています。「交際費」を会社の経費として税法上の損金とするには、一定の条件を満たす飲食費のうち一人当たりの飲食費の金額が 5,000円以下の場合であれば「交際費等」の範囲から除かれると規定されており、その場合「交際費等」以外の経費として、損金となるかどうかが検討されることになります。

参考記事:交際費精算とは?その対象や処理方法、電子帳簿保存法対応について

例えば、参加人数4人、飲食代の合計が2万円の場合、1人当たりの金額は 5,000 円になり、交際費等の範囲から除かれる飲食費とすることができます。しかし、参加人数が4人で合計22,000円の場合、1人5,000円を超えてしまいます。そこで、1人500円を個人負担とし(合計2,000円)、会社負担を2万円にするように領収書を2万円と2,000円に分けたとします。この2万円の領収書を経費精算した場合、会社側では1人当たりの飲食費が 5,000円以下とみなされ、交際費等の範囲から除かれる飲食費として処理されてしまうことになります。

しかし、税法上では「1人当たりの金額が 5,000 円を超える費用については、その費用のうち、その超える部分だけが交際費等に該当するものではなく、その費用のすべてが交際費等に該当することになる」とされています。そのため、2万円分を交際費等の範囲から除かれる飲食費として処理してしまった場合、本来であれば、交際費等に該当するはずだった経費を交際費等の範囲から除いてしまうことになってしまいます。そうなった場合、収める税金の額が本来の税額より少なくなってしまうことが考えられ、やはり脱税行為とみなされる可能性があることに注意が必要です。

 

割り勘であれば、領収書を複数に分けても問題ない

最後に、領収書を複数枚に分けても問題にならないケースをみていきましょう。取引先との会食経費の精算を実際に分割して支払った際、領収書を会社ごとに分ける行為では問題にならないでしょう。これは、各会社で割り勘をしたという扱いとなるためです。接待交際費の例においても、例えば自社2人、取引先2人の合計金額2万円で、それぞれの会社が1万円ずつ負担する場合は問題となりません。この場合は、領収書を1万円×2枚に分けることになり、それぞれの会社で1人当り5,000円となるため、交際費等の範囲から除かれる飲食費とすることができるのです。

稟議を通しやすくするためなどの理由により、一つの商品に対する領収書を複数枚に分けたり、会社規定の範囲を超えるため、一回の会食経費の領収書を会社負担分と個人負担分に分けたりすることは、税法上問題となる可能性があります。一方、会社規定の範囲内で、会食経費の領収書を割り勘のため複数枚に分けることは、特に問題にはなりません。領収書の分割は、場合によっては脱税などの問題にもつながることがあります。しっかりと従業員の倫理観を養うこと、あるいはSAP Concur のソリューションなどでデジタル化によって不正を検知できる仕組みを整えることが必要となってくるでしょう。

 

<著者プロフィール>

細田 聖子(ほそだ せいこ) 公認会計士・税理士
2012年、公認会計士登録。2016年、税理士登録。1999年から香港留学。2003年から2008年まで、上海でOL、日本語教師等の中国勤務。2010年、公認会計士試験論文式試験合格。2012年より、中国深センの会計事務所等を経て上海勤務となるも、2015年、乳がん告知により帰国。日本で治療をしながら大阪の税理士法人に所属。2018年5月に独立し、フリーランスのライターとして執筆活動など様々な業務に従事。

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