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単身赴任者の帰省旅費は課税対象? - 経費に関する意外と知らないFAQ

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経費精算に関してよく聞かれる質問とその回答をまとめたブログシリーズ、今回は単身赴任者の帰省旅費が給与課税の対象になるのかどうかがテーマです。

単身赴任者の帰省旅費は、通常、単身赴任手当や帰省手当などとして毎月一定額を支払ったり、年に何回などの上限を設け実費で社員に支払ったりする場合が多いと思います。これらの場合、帰省旅費は社員の給与に該当するのでしょうか。給与に該当する場合は所得税が課税されることになりますが、帰省手当が非課税になる場合はないのでしょうか。以下で詳しくみていきましょう。

 

質問:

単身赴任者の帰省旅費は給与に該当するのでしょうか。給与に該当する場合、所得税が課税されることになりますが、帰省手当が非課税になる場合はないのでしょうか?

 

回答:

会社が支払う単身赴任者の帰省旅費は、定額支給の場合であっても実費精算の場合であっても、原則給与等に該当し、所得税が課税されることになります。しかし、例外として、会議など職務遂行上の理由から旅行する場合に支給される旅費については、これに付随して帰省した場合であっても、主として職務遂行上必要な旅行と認められるなどの条件を満たせば、所得税非課税としてもよいとされています。

 

解説:

帰省旅費は手当であっても実費精算であっても、給与となり所得税課税される

会社が支払う単身赴任者の帰省旅費は、単身赴任手当・帰省手当などとして毎月一定額を支給する場合が多いと思います。手当は、家族と離れて生活することに伴い、そうでない勤務者と比べて生活費等の負担が大きくなることに配慮し、単身赴任者に対する給与等の補填として支給されるものです。そのため、この手当は給与等に該当し、所得税が課税されることになります。

また、単身赴任者の帰省旅費を年に何回などの上限を設け、実費精算する場合もあると思います。この場合においても、帰省旅費は職務の遂行に必要な旅行の費用として支給されるものではなく、手当と同様の性質のものと考えられるため、給与等に該当し所得税が課税されることになります。

このように、単身赴任者の帰省旅費はそれが手当であっても実費精算であっても、原則給与等に該当し、所得税が課税されることになります。

 

会議等にあわせて帰宅した場合の帰省旅費は、 所得税非課税となる

では、所得税が非課税となる場合はないのでしょうか。会議など職務遂行上の理由から旅行する場合に支給される旅費については、これに付随して帰省した場合であっても、その旅行の目的、行路等からみて、これらの旅行が主として職務遂行上必要な旅行と認められ、かつ、その旅費の金額が通常必要とされる範囲の支出を越えない限り、所得税を非課税として取り扱っても差し支えないとされています。

その際は、以下の3点に注意が必要です。

  1. この取扱いの対象になるのは、単身赴任者が会議等のため職務遂行上の必要に基づく旅行を行い、これに付随して帰宅する場合に支払われる旅費に限られること。
  2. この取扱いは、その性質上、月1回などの定量的な基準で非課税の取扱いをするということにはなじまないものであること。
  3. 帰宅のための旅行は、職務出張に付随するものであることから、その期間や帰宅する地域等には、おのずから制約があること。

具体的なケースを見ていきましょう。通常の出張では1日目:旅行日、2日目:勤務日、3日目:勤務日、4日目:旅行日といった場合が考えられますが、単身赴任者の場合でも1日目:旅行日、2日目:帰宅日、3日目:勤務日、4日目:勤務日、5日目:帰宅日、6日目:旅行日というように、職務に付随して帰宅した場合には非課税が認められる出張のケースとなります。

(参考:単身赴任者が会議等に併せて帰宅する場合に支給される旅費|国税庁

 

まとめ:

単身赴任中の帰省旅費は、原則給与等に該当し、所得税が課税されることになります。しかし、会議など職務遂行上の理由から帰省する場合に支給される旅費については、条件を満たせば、所得税非課税とすることができます。帰省旅費の会計処理の際には、所得税が給与になるかならないか、所得税課税・非課税の違いに注意して処理するようにしましょう。

経費に関して詳しくは:経費精算とは?今更聞けない経費の定義や経費精算の方法テレワークのレンタルオフィス代やワークスペース利用の費用はどう経費精算する?- 経費に関する意外と知らないFAQもぜひご参照ください!

<著者プロフィール>
細田 聖子 プロフィール 写真
細田 聖子(ほそだ せいこ) 公認会計士・税理士
2012年、公認会計士登録。2016年、税理士登録。1999年から香港留学。2003年から2008年まで、上海でOL、日本語教師等の中国勤務。2010年、公認会計士試験論文式試験合格。2012年より、中国深センの会計事務所等を経て上海勤務となるも、2015年、乳がん告知により帰国。日本で治療をしながら大阪の税理士法人に所属。2018年5月に独立し、フリーランスのライターとして執筆活動など様々な業務に従事。

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