電子帳簿保存法・インボイス制度

証憑とは?その種類や保存期間、改正電子帳簿保存法での取り扱い方を解説

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財務・経理の現場ではよく使われる証憑(しょうひょう)とは、双方合意のもとに取引や契約が行われたことを証明するための書類です。社外との取引はもちろん、社内でやり取りした書類の多くも証憑となります。ただ、ひと口に証憑といってもその種類は多様で、保存期間も異なります。そのため、経理担当者であってもすべてを把握するのは困難です。また、改正電子帳簿保存法により、証憑管理の方法が変わったことも理解しておかなくてはなりません。そこで本記事では、改めて証憑について確認したうえで、改正電子帳簿保存法での管理方法についてお伝えします。 

【改正電子帳簿保存法についてもっと詳しく知りたい方はこちら】改正電子帳簿保存法 活用事例集

証憑とは? 

証憑とは、社内外での取引や契約が行われたことを証明する書類です。 

証憑の具体例 

例えば、商品を仕入れる際に作成する発注書、商品を販売した際に作成する請求書などが該当します。また、社内で消耗品や備品を購入した際に受け取る領収書、従業員に支払った給与明細なども証憑です。 

そのほか、直接的には金銭の授受に関わらない人事異動通知、タイムカード、雇用契約書など人事や労務に関する書類も証憑に含まれます。 

証憑の意義 

法律上、口約束だけでも契約は成立するため、必ずしも契約書作成の義務はありません。しかし、契約書がないと後になってからトラブルに発展した場合、契約を証明するものが何もないため、裁判に委ねなくてはならなくなってしまいます。 

そうした意味で、証憑は契約や取引が確かにあったことを証明するものであり、ビジネスを円滑に進めるために欠かせない書類といえるでしょう。 

また、請求書や領収書などの証憑を基に総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳などの帳簿類が作成されます。財務情報の大基となることからも、企業にとって重要な書類であるといえます。 

証憑、4つの種類 

ビジネスにおける証憑の種類は、「売上・仕入・雇用・その他」の4つです。それぞれについて簡単に解説します。 

売上に関する証憑 

売買契約を結んだ際の契約書、実際に売買を行った際の納品書、請求書など、売上に関する契約、取引を行ったことを証明するための書類です。また、商品を発送した際の発送伝票も売上に関する証憑に含まれます。 

売上は収益に直結します。また入金漏れはないか、売買を行った際に契約内容と異なる点はなかったかなどを確認するためにも欠かせない書類であり、しっかりとした管理が必要です。 

仕入に関する証憑 

見積りを依頼した際の見積書、商品や資材を購入する際の発注書、仕入伝票、金銭を支払った際に受け取る領収書などが仕入に関する証憑です。領収書は手書きのもの以外にレシートやATMの利用明細なども含まれます。 

仕入に関する証憑は、在庫チェックや、現金決済をした際のキャッシュフロー確認に欠かせません。また、支払い漏れの防止、無駄な経費の出費がないかどうかの確認も行えます。正確な情報でないとキャッシュフローの把握ができなかったり、支払い漏れが生じたりするリスクが高まるため、作成ミスや紛失がないように注意する必要があります。 

雇用に関する証憑 

会社と従業員間で交わされる契約、取引に関する書類も証憑です。給与明細のほか、雇用契約書、人事異動通知、タイムカード、履歴書、賃金台帳、退職届などが含まれます。 

雇用に関する証憑は、給与明細や賃金台帳など金銭の授受を証明するものもありますが、多くは契約に関する書類です。住所や電話番号、学歴、職歴など多くの個人情報を含むため、厳重な管理が求められます。 

その他の証憑 

売上、仕入、雇用関連以外の書類で証憑に含まれるのは、オフィスの賃貸契約書、会社名義の通帳、金融機関からの借用証書や返済予定表、購入した設備や商品の保証書などです。 

これらの証憑は、頻繁に確認するものもあれば普段は使わないものの、急に提示を求められる可能性があるものもあります。それぞれをひとまとめにするのではなく、利用頻度や用途に応じてわかりやすく保管・管理するようにしましょう。 

証憑の保存期間 

証憑の保存期間は法律によって定められていますが、証憑の種類によって適用される法律が異なります。主に法人税法、会社法が適用されますが、それぞれ保存期間が異なります。主な証憑の保存期間は次のとおりです。 

  • 法人税法 

法人税法による保存期間は7年間で、主な証憑は、「契約書・注文書・注文請書・領収書・見積書・預金通帳・納品書・送り状」などです。ただし、個人事業主の場合、これら証憑の保存期間は5年間とされています。 

  • 会社法 

会社法では、保存期間が5年のものと10年のものがあります。5年間の保存が必要な証憑は、「計算書類・事業報告・監査報告・会計監査報告」などです。一方、10年間の保存が必要な証憑は、「会計帳簿及び事業に関する重要な資料、計算書類」などです。 

なお5年間と定められている証憑は、厳密には保存ではなく、備置き(閲覧を前提に、要求があればすぐに提出できる状態にしておくこと)とされています。 

 

証憑の種類/主な書類ごとの適用法律と保存期間 

証憑の種類と主な書類

改正電子帳簿保存法での証憑の取り扱い 

2022年1月、電子帳簿保存法が改正されました。これにより証憑の保存方法についても取り扱いが一部変更されました。改正電子帳簿保存法のなかでも、証憑の保存・管理に関連する変更点は次の4点です。 

  1. 電子帳簿保存法承認制度の廃止 

紙の書類を電子化して保存する際、これまでは3ヶ月前までに事前申請することが必要でしたが、廃止されました。 

  1. タイムスタンプの要件の緩和 

電子データの存在証明、非改ざん証明をするために必要であったタイムスタンプですが、付与までの期間が緩和されました。また、紙で受領した領収書をスキャナ保存する場合、これまで必須であった署名も不要になりました。 

  1. スキャナ保存における適正事務処理要件の廃止 

スキャナ保存をする際には社内規程の整備や相互けん制、定期的な検査などの適正事務処理要件が必要でしたが、廃止されました。さらに、電子データ化した書類の原本は保存の必要がなくなり、すぐに廃棄することが可能になりました。 

  1. 電子取引データの電子化義務化 

電子メール等を利用しての電子取引データのやり取り。インターネットでの消耗品、備品購入などで、Webシステム上からダウンロードした請求書、見積書、領収書などの電子取引データ。これらは紙に印刷しての保存ではなく、電子データのまま保存することが義務化されました。ただし、電子化に対応しきれていない企業がまだ多いことから、宥恕(ゆうじょ)措置として、やむを得ない事情がある場合に限り2023年末までは紙に印刷しての保存も認められています。 

改正電子帳簿保存法に対応するためのポイント 

2022年1月の改正電子帳簿保存法は、紙書類の電子化を推進することを目的として、多くの規定が廃止・緩和されました。電子化が進めば保管や書類管理の業務が低減するほか、テレワークも行いやすくなるでしょう。働き方も多様化し、経理担当者の負担は大幅に軽減されると考えられます。 

ただし、電子取引データの電子化に宥恕措置が設けられたように、企業によっては電子化が進んでおらず、改正電子帳簿保存法への対応ができていないケースも少なくありません。2023年末までに改正電子帳簿保存法への対応を完了するためのカギは、経理業務のシステム化です。 

経費精算や請求書管理など煩雑な業務を、システムを活用することで効率化しつつ電子化を進めていきます。ここで注意すべきなのは、改正電子帳簿保存法に対応したシステムを導入することです。 

改正電子帳簿保存法に対応していないシステムを導入すると、カスタマイズに多額のコストを要してしまうリスクも考えられます。システム化検討の際は、必ず改正電子帳簿保存法に対応しているかどうかの確認を忘れずに行ってください。 

電子帳簿保存法に対応したシステム活用で証憑管理の効率化を 

社内外での取引や契約が行われたことを証明する書類である証憑は、種類も多く、それぞれに保存期間も異なるため、管理には多くの手間を要します。さらに改正電子帳簿保存法により、2024年からは電子取引を行ったデータはすべて紙保存ができなくなるため、改めて保存管理方法についての見直しが欠かせません。 

改正電子帳簿保存法に対応したシステムを導入することでスムーズな電子データの管理が行えるだけではなく、証憑の保存管理にも大きな効果を発揮します。残りわずかとなった宥恕措置期間の間に証憑の電子化を行いたい場合は、弊社の経費精算システム・請求書管理システムのご利用をご検討ください。 

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