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【イベントレポート】教育機関における研究費管理・経費精算業務のデジタル化事例から学ぶ導入のポイント

SAP Concur Japan |

2023年6月21日から22日の2日間にわたり「SAP Concur Fusion Exchange 2023 ― Public Deep Drive」(主催:学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学、株式会社先端教育事業)が開催されました。2日目のテーマは「研究費管理と経費精算業務のデジタル化構想」。教育機関業務DX化の取り組みにスポットを当て、さまざまな事例やソリューションの紹介が行われました。今回の記事では、文部科学省 科学技術・学術政策局 研究環境課 競争的研究費調整室 室長 中田 欣成 氏、学校法人文京学院 法人事務局 総務部 部長 品田 容子 氏、学校法人 筑波学園アール医療専門職大学 学長補佐室 坂本 晴美 氏、国立大学法人 広島大学 上席特任学術研究員 特命教授 相原 玲二 氏によるご講演の内容を紹介します。

大学のデジタル化が求められるバックオフィス業務とその理由

会の冒頭、コンカー シニアバイスプレジデント 常務執行役員 下野より、教育機関関係者400人に対して実施したアンケートの結果を紹介しました。財務会計分野は不正リスクからデジタル化の必要性が認められているにもかかわらずそれが進んでいないことや、現状の目視確認等の手間が発生し、バックオフィス業務を圧迫している現状が浮かび上がったことを共有しました。そのなかでコンカーが提供するサービスが評価され、多くの教育機関で採用、予算化が進んでいることに対するお礼を申し上げました。
(コンカーの大学向けご紹介ページはこちら

コンカーVP 下野

研究機関における研究費の管理・監査の現状と課題―デジタル化に期待すること―

文部科学省 科学技術・学術政策局 研究環境課 競争的研究費調整室 室長 中田 欣成 氏にご登壇いただき、「高等教育機関等の研究機関における公的研究費の管理・監査の現状と課題」というテーマで、研究費不正の現状と文部科学省の取り組み、そして不正防止に向けてデジタル化が果たせる可能性のある役割についてご講演をいただきました。

文部科学省の取り組み紹介

研究費不正の多くは大学関係機関が多い

日本の競争的研究費の採択先は大学機関が多くを占めており、日本の研究費予算の活用における大学機関の役割は非常に大きいとの説明がありました。また優秀な研究者、優良な研究活動と国際的な競争力を維持するうえで、適切に研究費を利用する体制整備が重要であることが強調されました。

実際に発生した研究費不正の事例紹介も行われ、平成27年から令和4年までに発生した研究費不正は68件でした。内訳を見ると、契約業者が絡むものが4割、旅費謝金が3割程度だったそうです。いまだに不正は発生しており、継続的な対策が求められているといえます。

令和3年度に不正防止ガイドラインを改正

文部科学省の「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」について、中田氏から紹介していただきました。平成26年の改正に続き、令和3年に次の3点を柱として再度改正が行われています。

① ガバナンス強化:大学全体での監視・防止体制の構築

② 意識改革:各種啓発活動の推進、研究者が相談できる体制整備など

③ 不正防止システムの強化:法人クレジットカードの導入、手続きのアウトソーシング化による支払いに研究者が関与しない仕組みづくり、Web調達システム、予算残高把握による早期執行の促進などデジタルツールを活用した仕組みづくり

研究費不正防止のためのDX化

研究費不正防止のためにDX化が有効な理由として、プロセスの見える化、人を介さない業務フローの設定、DX化による管理監査機能の均一化の3点が重要であることが紹介されました。とくに3点目は重要で、大学内の部局単位で事務処理能力に違いが出やすいことが不正防止の妨げになっていることから、属人化しない監査体制が構築できれば、とくに大きな効果を期待できることが強調されました。

予算の見える化と発生源入力の効果―文京学院を事例に―

学校法人文京学院  法人事務局 総務部 部長 品田 容子 氏にご登壇をいただきました。「予算の見える化と発生源入力の効果」と題して、コンカー導入の経緯と導入までの流れ、教員側からの反応などについてご紹介していただきました。

文京学院との対談

導入に至った経緯

きっかけは、新型コロナ感染症の蔓延だったそうです。紙や押印を前提としないデジタルツールを活用した業務設計が急ぎ必要となりました。デジタルツールの導入に先立ち、文京学院様にて学内の24部署をヒアリングしていただき、品田氏からヒアリング結果を共有していただきました。

収納支払や予算管理に対する改善要望が圧倒的に多い結果だったそうです。具体的には、収納業務が24%、支払業務が28%、予算管理業務が20%となり、これらを合わせると72%を占めました。ヒアリングで挙がった要望のうち、抜本的なシステム導入でなければ対応できないものを整理していき、製品選定を経てコンカーの導入に至ったそうです。

大学機関ならではの特徴的な運用

文京学院様でコンカーを導入するにあたって、大学機関ならではの3つの特徴的な運用を考慮する必要がありました。

1つ目が予算管理です。大学機関は期初の段階で授業料という形で収入が確定します。一般的な民間企業では期中に売り上げを増やせますが、大学機関は期中に収入が増えることはありません。つまり、期中の予算管理には厳密さが求められます。

2つ目は予算の単位です。教員組織では教員個人に予算がつくことが多くあります。また複数の教員による共同研究の場合はテーマごとに予算がつくため、さまざまな単位での管理に対応する必要があります。

3つ目は精算の申請者です。会社の場合は立て替えた社員が申請するのが一般的ですが、学校の場合は立て替えた教員ではなく、補助要員による代理申請も多い点に配慮する必要があります。

導入までの流れ

品田氏から、文京学院様にてコンカーを導入したときの実際の流れを共有していただきました。

運用の安定性を優先するために、職員組織で試験運用を行ってから教員組織へ導入していきました。試験運用期間中は、教員が立て替えた領収書等を事務職員が代理入力する運用を1年間行いました。教員も自分の精算がどうなっているのか確認できる仕組みを整え、法人カードをコンカーに連携して支払いを自動入力させることで、職員の入力負荷を軽減しています。2023年4月からは教員自らが入力し、事務担当部門に回付された申請をチェック・承認する体制にシフトしています。

これらの運用を始める前の上流段階では、最初にどの運用を教員にしてもらうかを整理し、次に研究費支出に関する大量の規定や様式をコンカーの事前申請機能に移管していく方法を採りました。

コンカーに期待すること

チェック負荷の軽減の支援を求める旨をご要望いただき、最終的には承認というものをなくしていくためにコンカーを採用いただいています。コンカーは、ご要望をいただいた監査ルールの設定、グラフやリスト化による見える化を行う機能であるBIツールの活用支援などを通して継続的に文京学院様の業務改善をサポートしてまいります。

経費精算におけるペーパーレスを目指して―アール医療専門職大学を事例に―

学校法人 筑波学園アール医療専門職大学 学長補佐室 坂本 晴美 氏から「経費精算におけるペーパーレスを目指して」と題して、コンカーを導入した経緯と採用のポイント、導入する過程で注力が必要だったことについて紹介していただきました。

筑波学園アール医療専門職大学との対談

コンカーを採用した理由

筑波学園アール医療専門職大学様は、設立後間もない教育機関だったため、人員が少ないなかで、紙での運用ではなく民間企業のようにデジタル活用による業務効率化が必要で、経費利用者と経理部門の両者の運用が楽になる業務システムの構築を必要とされていたそうです。コンカーを採用した理由は、文部科学省が推奨する法人カードとシステムの自動紐づけが行える機能や、利用者側に予算使用範囲を知らせてくれる機能を高く評価したからだったそうです。また規定との照合機能、予算の可視化機能などは業務負荷を軽減できるイメージがしやすかった点も大きかったといいます。

教員側の反応

坂本氏からは、導入に関して教員の方々の反応を紹介していただきました。おおむね良い反応をいただくことが多かったそうです。たとえば海外で活躍している教員の場合、なかなか大学に戻って事務処理ができず、事務処理の負荷が高かった実情がありました。コンカーは研究活動に取り組みやすくなるシステムだということで、導入には前向きなフィードバックをいただくことが多かったそうです。

導入時に苦労したこととサポート体制

最初に苦労したことは、決済権をもつ役員の方々の賛同を得ることだったそうです。これまでの管理方法が変わることに対する拒否感や、人的チェック機能が働かないのは大丈夫か、という意見も多かったといいます。次に、学内へ具体的にシステムの説明をするために、坂本氏ご自身が中身を熟知しなければならない課題がありました。

こういった課題に対して、コンカーとそのパートナー会社のサポート体制も紹介していただきました。役員への複数回にわたるプレゼンテーション、システムへの細かい質問に対する柔軟なサポート体制は、学内でコンカー導入の合意形成を得るうえで大きな助けになったそうです。

コンカーに期待すること

筑波学園アール医療専門職大学様としては、今後、経費データの可視化に取り組んでいく方針であることを説明いただきました。そのためにBIツールを活用していく必要があり、引き続きの支援が必要である旨のコメントを頂戴しました。また学内周知や、会計システムと連携に向けた経理部との調整についてもご要望をいただきました。コンカーは継続的に筑波学園アール医療専門職大学様が目指すDX化をサポートしてまいります。

広島大学に学ぶデジタルトランスフォーメーション~DX を支える事務情報システムとデジタル化のあゆみ~

国立大学法人 広島大学 上席特任学術研究員 特命教授 相原 玲二 氏から「広島大学から学ぶデジタルトランスフォーメーション」をテーマに、教育機関のなかでも早い段階からデジタル化に取り組んできた広島大学の取り組みや今後の方針、重視するべきポイントをご紹介いただきました。

広島大学によるご紹介

重要情報システムのクラウドサービス移行

広島大学が重点的に実施した取り組みの1つに、クラウド型デジタルツールへの移行が挙げられます。デジタルツールの導入を推進し始めた当初は、クラウド型サービスではなくオンプレミス型でしたが、順次クラウド型へ移行させていったそうです。これは、クラウド型が費用だけでなく、堅牢性、柔軟性、総合的な安全性に優れている点を評価しているためだといいます。

広島大学クラウドサービス利用ガイドライン

広島大学ではさまざまなクラウドサービスを各部署が独自に導入する運用が想定されたため、ガバナンス強化の必要性に迫られたそうです。こうした背景で広島大学が採用した方法は、システムに求めるガイドラインと46項目から成るチェックリストを作成して、導入する部署がシステムベンダーとともにチェックリストを埋めて提出する運用でした。ただし柔軟性を確保するため、必ずしもすべてのチェック項目を満たす必要はなく、欠ける項目については運用等を踏まえた検討を行うこととしています。

また2015年にISO27001、2017年にISO27017を取得しています。コストや事務負担は大きいものの、セキュリティの維持等を踏まえると必要な措置だと受け入れているそうです。相原氏からは、個人情報や高度な機密情報を扱う教育機関は、大前提となる基本計画の作成とともに、こうしたシステムのセキュリティなどを求める要件定義などもしっかり行う必要性を説明していただきました。

広島大学DX 推進基本計画

最後に、相原氏から広島大学が現在掲げているDX推進基本計画を説明していただきました。DX推進基本計画は5つの基本項目と、短期的に目指す具体的な目標およびアクションから構成されています。DX化を進めるにあたり、ここまで紹介したような継続的な情報基盤の整備が欠かせないこと、そして基本方針や基本計画の策定による中長期的視点に立った戦略的な整備も必要であるということでした。

「SAP Concur Fusion Exchange 2023」2日目を追えて

ここで紹介した内容以外に、教育機関の現場ならではのさまざまな課題や配慮するべきポイント、導入時に注意すべきことなどの情報共有が行われました。これからDX化に取り組んでいく多くの教育機関様にとって非常に参考になる内容となりました。一緒に開催された、自治体が対象の1日目のイベント内容についても別途レポートしています。あわせてご覧ください。

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