イベントレポート(前編)- SAP Concur Fusion Exchange 2018 Tokyo

Taku Kakino |

9月11日、経理財務部門向けクラウドイベント SAP Concur Fusion Exchange 2018 Tokyo が都内ホテルで開催された。出張・経費管理クラウドを展開する Concur が SAP Concur とブランド変更を行なって以来、初めての大型イベントとなる。


テーマは「間接業務のデジタルトランスフォーメーション」

低迷する出生率と減少し続ける労働人口を背景に、日本企業はワークスタイル変革の只中にいる。AI/RPAによる定型業務の自動化、クラウドを活用したデータとプロセスの集約化、BPOセンターを活用したアウトソース、モバイルを活用した現場従業員の機動性の確保など、これらはITをコスト削減ツールとして捉えていた時代から、人間がより人間らしいコア業務にシフトする文脈への移行を示している。ただ、依然、企業現場では稟議書、契約書、請求書、経費精算、、、紙処理を前提としたムダな仕事が蔓延している。今こそ、間接業務をデジタルトランスフォーメーションさせ、これらを省力化、いや、撲滅させなければならない


紙ゼロの国、エストニアの電子政府に私たちの改革のヒントがある

オープニングインタビューとして、元エストニア投資庁の山口 功作 氏とコンカーの柿野 拓が登壇し、紙ゼロを実現し、世界最高峰の電子政府を実現しているエストニアの歴史、政治、地理、文化などからその経緯を説明した。「各機関に分散している個人データをプライバシーに配慮しながら、紙を介さず、統合された行政サービスとして活用、効率良く全国民に提供するにはITの活用しかない」とエストニアで展開されている電子政府の意義を語り、日本でも進むマイナンバーの活用を含めた電子政府化の取り組みの加速を訴えた。また、同時に「サービスの利用側の国民自身も新しい価値観やツールや変革を柔軟に進んで受け入れる意識改革が重要」と結論づけた。


(コンカー マーケティング本部 本部長 柿野 拓 / 元エストニア投資庁 日本支局長 山口 功作 氏)


間接業務のデジタルトランスフォーメーションに必要な8つのポイント

そして、コンカーの代表取締役社長の三村 真宗が登壇、まず初めに今回のイベントのテーマである「間接業務のデジタルトランスフォーメーション」の海外動きと日本企業の意識と実態を比較することから始めた。あるアジアの銀行は徹底的なデジタル変革を通じて売上で43%増、利益で13億ドル増加させる一方、日本企業はデジタル化への関心や意識は高いものの、実際の実現にまではたどり着けない現状を日本CFO協会の調査を交え、解説した。さらにコア業務・直接業務に比べ、間接業務のデジタル化は意識改革が進んでいない現状を説明した。


(コンカー 代表取締役社長 三村 真宗)

三村は「企業がITを有効活用し、間接業務のデジタルトランスフォーメーションを進める上で重要なポイントが8つある」と語る。間接業務で発生する紙プロセスの撲滅し、アナログからデジタルデータへの転換を狙う「ペーパレス」。Suica や PASMO、あるいはクレジットカード等を活用し、直接現金に触れずにプロセスを進める「キャッシュレス」。データの発生源と SAP Concur を直接接続し、二重入力や無駄な仕事を発生させない「エフォートレス」。最新のIT技術を活用した業務の自動化と効率化、不正検知や将来予測までをも意識した「AI・RPAの活用」。出張手配から出張中、そして経費精算の一連の流れを出張関連事業者と統合された SAP Concur の活用による「パーフェクトトリップ」。発生コストを明細レベルにまで見える化、分析活動と集中購買などを通じた徹底的なコスト管理を行う「トータルスペンドマネジメント」。自社で全ての間接業務を内包するのではなく、一部、あるいは全ての定型業務、間接業務をアウトソースし、コア業務・直接業務に集中する「トータルアウトソーシング」。さらに部門、事業部で実現したムダやコストの削減モデルを全社、グループ会社、そしてグローバルレベルにまで拡大、改革の効果を広げる「グローバル・グループ展開」である。

 

最新技術の活用でしか、最高のワークスタイルは生み出せない

次にコンカーの柏原がデモンストレーションを交え、8つのポイントのいくつかへの対応方法を具体的に解説した。「ペーパーレス」の領域では電子帳簿保存法の求める要件に従って、PDFファイルなど電子化された請求書に「Concur Invoice」 でタイムスタンプを押印、紙の請求書を破棄する一連の流れを説明した。「トータルスペンドマネジメント」では「Concur Budget」で予め部門毎に設定した経費支出予算と実際の支出状況を確認しながら、機動的な支出マネジメントを実現できると語り、さらにConcur Business Intelligence」で、全社レベルでの間接費全体の見える化を支援、さらなるコスト削減と管理レベルの高度化の可能性を示した。さらに「エフォートレス」の領域では「Concur Mobile」と「SAP Leonardo」のAI機能を連携させた紙の領収書の自動読み取り機能をリアルデモで紹介した。また、サービス要員や営業員が利用する車両の走行距離に応じたガソリン代などの自動計算と自動入力を行う「Concur Drive」、そして、いわゆる”流し”タクシーの運賃の自動入力を JapanTaxi Wallet の QRコードと連携させる新機能を紹介した。「キャッシュレス」の領域では東日本旅客鉄道と進める Suica連携の実証実験の進捗報告とともに、西日本鉄道とnimoca連携の実証実験を開始する発表が行われた。交通系IC系カードは鉄道運賃の支払いだけではなく、タクシーや一般購買品で広く活用されているため SAP Concur と連携した経費入力の自動化はワークスタイル変革と生産性向上に大きな可能性を持つ。


(コンカー ソリューション本部 本部長 柏原 伸次郎)

後編 へ続く