経理・総務の豆知識

通勤交通費、手当を廃止して実費精算はできる?

SAP Concur Japan |

経費精算に関してよく聞かれる質問とその回答をまとめたブログシリーズ、今回は通勤交通費の実費精算がテーマです。

コロナ禍の影響により、テレワークの普及が進み、オフィスワーカーの通勤が減っています。通勤定期券代などの「定額の」通勤手当の支給を廃止し、出勤時にかかった通勤交通費を実費精算することは可能なのでしょうか?また、実費精算にした場合に発生する影響には、どのようなものがあるのでしょうか?以下では、その回答について、みていきましょう。

 

質問:

定額の通勤手当を廃止し、通勤交通費を実費精算に変更することはできるのでしょうか?

 

回答:

テレワークなどの理由で、通勤定期代などの定額の通勤手当を廃止し、出勤時にかかった通勤代を実費精算することは可能です。

 

解説:

通勤交通費を実費精算する際に注意する点としては、自宅と会社の間の往復は、はあくまでも「通勤手当」となることです。また、そもそも通勤手当の支払い義務は会社にはありません。しかし、多くの会社が通勤手当として従業員に交通費を支給しています。また、定額の通勤手当を廃止したことなどにより、通勤手当の金額が減ると、支払う社会保険料の金額が変動する可能性があることにも注意が必要です。社会保険料の金額が減ると将来の年金の金額に影響があるかもしれないため、事前に人事などへの相談することが望ましいでしょう。

 

そもそも通勤手当とは?

多くの会社では、自宅から会社までの通勤のために必要な電車代やバス代、ガソリン代などを支給しています。しかし、会社が通勤にかかる交通費を支給しなければならないという法律はありません。そのため、通勤手当は会社が義務的に支給しているのではなく、福利厚生費や実費の補填と同じものであると考えることができます。

また、通勤手当のうち、一定金額以下のものは、社員の給与所得の際の課税対象にはならず、非課税となります。残業手当や休日出勤手当、職務手当、地域手当、住宅手当などが給与所得となるところ、例外として、通勤手当は給与所得にはならないとされています。通勤手当の非課税限度額は、交通機関の場合、1ヶ月当たり15万円となっています。

参考:通勤手当は課税の対象?所得税非課税の限度額などを解説

 

通勤手当の実費精算の方法は?

通勤手当の実費精算は、どのようにすればいいのでしょうか。基本的には会社の規定に従うことになりますが、毎月の通勤実績を報告するような方法であったり、出張などの際の経費精算と同じような方法になったりすることが考えられます。しかし、自宅と会社の間の往復は、あくまでも通勤にかかる費用となることから、出張などの場合における「旅費交通費」などではなく、「通勤にかかる費用」として申請することになる点に注意が必要になるでしょう。

 

通勤手当が減ると社会保険料が少なくなり、将来の年金に関わる可能性も

通勤手当は、所得税には非課税ですが、社会保険料の計算では対象になります。社会保険料の算定において基礎となる「標準報酬月額」は、通勤手当を含めて計算されます。社会保険料は、標準報酬月額に保険料率を乗じて計算します。そのため、通勤手当が減ると、社会保険料が減る可能性があります。もともとの通勤手当の金額が大きく、大幅に減った場合、社会保険料も減る可能性が高くなります。

このことにより、支払う社会保険料が減るのはありがたいことかもしれませんが、厚生年金保険料は将来の年金として戻ってきます。そのため、通勤手当が減れば、将来もらえる年金額にも影響を与えることに注意が必要でしょう。そのため、交通費の支給方法が変わる際には、人事などに相談し、事前に社会保険料への影響がどうなるのかを把握することが望ましいでしょう。

参考: 協会けんぽ 標準報酬月額の決め方

 

まとめ:通勤手当の実費精算は可能。代わりに経理負担の軽減策も考えよう。

このように、通勤交通費を実費精算することは可能となります。今後、テレワークの普及が進むことで、定額の通勤手当の支給を廃止し、通勤交通費を実費精算する会社が増えることが予想されます。経理部門の立場からすると、今まで定額支給だったものを実費精算することになるため、処理する伝票の量が増えることになるでしょう。また、通勤手当は通常の実費精算とは異なるので、通勤経路の確認等注意を払う必要があります。ここでも、経理部門の毎月の負担も大きくなることが考えられますので、負担に対する対応策を講じたほうがいいでしょう。SAP Concur なら、経路検索等経理部門の負担軽減が可能です。ぜひご検討ください。

 

<著者プロフィール>
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細田 聖子(ほそだ せいこ) 公認会計士・税理士
2012年、公認会計士登録。2016年、税理士登録。1999年から香港留学。2003年から2008年まで、上海でOL、日本語教師等の中国勤務。2010年、公認会計士試験論文式試験合格。2012年より、中国深センの会計事務所等を経て上海勤務となるも、2015年、乳がん告知により帰国。日本で治療をしながら大阪の税理士法人に所属。2018年5月に独立し、フリーランスのライターとして執筆活動など様々な業務に従事。

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