通勤手当は課税の対象?所得税非課税の限度額などを解説

通勤手当とは通勤にかかる交通費を会社が支給する手当金です。全額支給、一部支給、支給がなく従業員の自己負担など、企業によってさまざまな形があります。これらはどのようにして決められ、支給することで企業側にはどういったメリットがあるのでしょうか。通勤手当の意味や課税・非課税の区分、社会保険料との関係などをご紹介します。

 

通勤手当とは?言葉の意味と分類

まず通勤手当とはどういった意味のあるものなのか、その言葉の意味を振り返りながら経理上の分類についても考えてみましょう。

通勤手当の意味と支給の決まり

通勤手当とは、従業員が通勤する際にかかる費用に対し、企業が全額または一部を負担して支給する手当金のことを言います。その支給額には法的な決まりや基準などはあるのでしょうか。

実は、通勤手当について労働基準法に規定はなく、支給の義務についての定めもありません。完全に会社ごとの裁量に任されています。そのため、支給しないケース、限度額や支給の対象範囲を制限しているケースなど、企業ごとに通勤手当の取り決めは異なります。

交通費と通勤手当はどう違う?

通勤手当とよく混同される言葉として、交通費があります。通勤手当のことを交通費と呼んでいる人もいるかもしれません。しかし、会社で使う言葉として、通勤手当と交通費には意味合いの違いがあります。

交通費とは、従業員の移動のためにかかった費用全般のことを表しています。一方で、通勤手当は従業員が通勤にかかった費用を会社が支給する手当金です。よって、交通費という表現には次の2つが含まれています。(参考:交通費精算とは?その対象や処理方法、電子帳簿保存法対応について)

  • 通勤手当(通勤にかかる費用を支給)
  • 旅費交通費(出張や移動にかかる経費)

この2つはどちらも会社にとっては経費となりますが、経理上の扱いは異なります。一般的に、通勤手当は給与の勘定科目として処理しますが、旅費交通費はそのまま旅費交通費という勘定科目で処理します。

また、通勤手当と旅費交通費については「誰が得るお金か」という大きな違いがあります。

たとえば、出張の際にかかった移動のための費用。これは従業員が立替払いし、後から精算します。このとき、会社から従業員に旅費交通費を渡すことになりますが、これは従業員が得たお金ではありません。本来であれば会社が払っているはずの経費を、従業員が一時的に会社の代わりに支払い、それを従業員に返しただけと考えます。

一方で、通勤手当についての支払い義務はないため、従業員が自己負担するのが原則となっています。ここから考えると、通勤手当は従業員が得る賃金、すなわち所得とみなされます。所得ということは所得税の対象となるのが基本です。

しかし、通勤手当は一定の額までを対象として非課税となるルールがあります。このルールと限度額について見てみましょう。

 

限度額はいくらまで?課税のルールとは

通勤手当はなぜ所得税非課税となるのでしょうか?

通勤手当は、従業員が通勤するためにかかる費用を会社が負担するものです。移動に費用がかかっていることがすでにわかっていて、それを補填していると考えることができます。このような実費の補填という意味合いから、従業員の純粋な所得ではないとみなされ、「最も合理的かつ経済的な経路を利用すること」を前提に一定額までの通勤手当は所得とみなさず所得税は非課税となります。

ここで注意が必要なのは、「最も合理的かつ経済的な経路を利用すること」というルールです。このルールに則り、非課税となる条件が細かく設定されています。所得税が非課税となる条件は、どのような手段を用いて通勤しているかによって次の4つのパターンに分けられ、それぞれ限度額が定められています。

交通機関で通勤する人

非課税の上限額は以前は10万円でしたが、税制改正により平成28年から15万円に引き上げられました。

電車やバスなど、有料の交通機関を使って通勤している人については、「1ヶ月当たりの合理的な運賃等の額」の一部が非課税の対象となり上限は15万円と定められています。合理的であることが条件ですから、時間または距離、運賃いずれかについて有利なルートを選択していなければなりません。

たとえば、新幹線で通勤している場合でも、それが合理的であれば非課税対象となります。ただし、グリーン車を利用した場合はそれが必要であった合理的な理由がないと考えられるため、課税対象となります。

車や自転車などの交通用具で通勤する人

車や自転車を使って通勤している人についての条件は、最も細かく分かれています。

非課税対象となるのは、あくまで通勤のためにかかった費用または労力となります。そのため、車がマイカーであるか、会社が貸与している社用車であるかといった点では区別されません。そのため、車の購入にかかった費用は通勤手当とみなされません。

車や自転車などで通勤する場合の1ヶ月当たり非課税限度額は、通勤に要する距離によって次のように分けられています。

  • 55km以上:3万1,600円
  • 45km以上55km未満:2万8,000円
  • 35km以上45km未満:2万4,400円
  • 25km以上35km未満:1万8,700円
  • 15km以上25km未満:1万2,900円
  • 10km以上15km未満:7,100円
  • 2km以上10km未満:4,200円
  • 2km未満:全額課税

この距離と限度額については、通勤手段が車でも自転車でも同じ基準となります。

また、車での通勤に際して駐車場が必要となる場合に、会社が駐車場料金を通勤手当の一部として負担しているケースもありますが、この分は課税対象となります。こちらも税制改正により、平成26年に限度額の引き上げが行われています。

定期乗車券で通勤する人

通勤用定期乗車券を利用して通勤している人は、基本的に「交通機関で通勤している人」と同じ基準となります。「1ヶ月当たりの合理的な運賃等の額」の範囲内で上限15万円が非課税対象です。同様に平成28年に限度額の引き上げが行われています。

交通機関+交通用具を利用する人

駅まで車で行き電車に乗り換え通勤するような場合が対象です。この場合は、車での通勤距離に応じた費用と電車の運賃の合計で計算し、月15万円が上限となります。ただし、車や自転車などの交通用具を使用する区分については、交通用具の規定と同様に2km以上が対象となります。2km未満の場合は交通機関の利用料だけで計算します。

 

社会保険料の計算は?算定に通勤手当は含める?

このように、通勤手当は限度額の範囲内であれば所得税の課税対象にはなりません。このことから、社会保険料の算定基礎となる標準月額報酬に含めるか迷う場合がありますが、通勤手当は標準月額報酬の範囲内で含めて計算します。

所得税が非課税対象になるのと、標準月額報酬に含めて計算することは何が違うのでしょうか。

通勤手当が所得税非課税となるのは、課税が従業員の所得に対して行われるもので、先の説明の通り通勤にかかる費用の補てんは「純粋な所得ではない」という判断があるためです。しかし、社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額は会社が支払った額を基準としています。総支払額をもとに算定するため通勤手当も含まれるのです。

このことから、通勤手当の額が大きければ従業員にとって毎月の社会保険料の負担も大きくなります。ただし、年金や傷病手当といった将来を含めた保障の観点からは厚遇されることになります。

 

通勤手当は限度額を把握して課税・非課税の計算を

通勤手当の意味と所得税非課税となる基準、社会保険料との関係についてご紹介しました。

通勤手当は、従業員の通勤にかかる費用を会社が負担するもので、会社にとっての経費になります。通勤手当の支給額は会社ごとに定めるもので、額についての決まりはありません。しかし、経費として計上する際には非課税対象となるかどうかの限度額と対象のルールが決まっています。また、在宅勤務・リモートワークの増加に伴って、通勤手当を実費精算にする企業が増えています。この対応については 通勤交通費、手当を廃止して実費精算はできる? で解説しておりますのでご覧ください。


参照:通勤手当の非課税限度額の引上げについて|国税庁 

 

 

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