出張・経費管理トレンド

経理・財務の仕事にAIが与える影響とは?現場で使える活用例とリスクを整理

SAP Concur Japan |

デジタル化の加速にともない、経理分野でもAI活用への関心が急速に高まっています。請求書処理や仕訳入力などの定型業務を効率化できる一方で、導入にあたってはリスクや限界も理解しておく必要があります。
この記事では、経理・財務分野におけるAIの現状と将来性、具体的な活用例、導入メリットと注意点までを体系的に解説します。現場で本当に使える知識を、わかりやすく整理しました。

経理業務におけるAIの現状と将来性

2024年に実施された経理部門のAI活用実態調査調査によると、AIを経理業務に導入している企業は約24%にとどまっています。一方で、今後AIを積極的に導入していく必要があると回答した経理担当者は約58%にのぼり、多くの現場がAI活用の重要性を強く認識していることがわかります。

つまり、現時点では導入はまだ発展途上でありながらも、今後は確実に広がっていく分野だといえるでしょう。

経理・財務におけるAIの可能性は非常に大きく、「自分の仕事がなくなるのではないか」と不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、マッキンゼー・アンド・カンパニーの分析では、AIや機械学習の影響を受ける業務は多いものの、完全に消滅する職業は5%未満とされています。AIが人間のような高度な論理的思考や総合的判断力を持つまでには、まだ時間がかかると考えられています。

まずは領収書のデータ入力、請求書の処理、経費精算のチェック、取引内容の照合といった、大量かつ単調な作業からAIに任せることが現実的な第一歩です。これにより、経理・財務担当者は面倒で時間を取られる業務から解放され、より付加価値の高い業務へとシフトできます。

AIによって仕事が奪われるのではなく、AIを活用することで経理の役割そのものを高度化し、「戦略的な経理・財務」として経営を支える存在へ進化できる可能性が広がっているのです。

経理業務における具体的なAI活用の例と注意すべきポイント

AIは経理業務のさまざまな領域で活用が進んでいますが、強みとリスクを理解したうえで導入することが重要です。ここでは代表的な活用例と、押さえておきたい注意点を整理します。

具体的なAI活用例としては、次のようなものが挙げられます。

・定型業務の自動化
仕訳入力や請求書処理、経費精算のチェックなど、ルール化された反復業務を自動化できます。作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、入力ミスの削減にもつながります。

・異常検知と不正防止
過去データのパターンを学習し、通常とは異なる取引や不自然な数値の動きを検知します。不正の早期発見や内部統制の強化に役立ちます。

・高度な財務予測
売上推移やキャッシュフローのデータをもとに将来予測モデルを構築し、資金繰りの見通しや予算管理をサポートします。経営判断の精度向上に貢献します。

・非構造化データの活用
経理業務での画像・PDFデータ処理AI-OCRや画像認識技術により、紙の領収書やPDF請求書から必要情報を自動抽出できます。電子帳簿保存法対応やデータ管理の効率化にも有効です。

一方で、AI活用には注意すべきリスクもあります。

生成AIは一見もっともらしい回答を出力することがありますが、必ずしも正確とは限りません。誤った仕訳提案や誤解を招く分析結果をそのまま採用しないよう、人による検証が不可欠です。また、AIの判断プロセスが見えにくい場合、なぜその結果になったのかを説明できないケースがあります。特に監査や社内説明が必要な場面では、根拠を明確にできる運用体制が求められます。

ここまでの内容を総括して、AI活用のポイントとしては次の4点を押さえておくとよいでしょう。

ポイント

具体的なアクション

人間による最終確認

AIは下書き作成や一次チェックを担い、最終判断は必ず人間がおこないましょう。

プロンプトスキルの向上

AIから制度の高い回答を引き出すための「指示の出し方」をチームで共有しましょう。

法改正への適応

電子帳簿保存法やインボイス制度など、最新の法令にAI設定が対応しているか定期的に見直しましょう。

役割のシフト

作業(入力・集計)から、AIの結果を解釈し経営に助言する「アドバイザー」への転換を図りましょう。

 

AIは過去データをもとに判断する仕組みであるため、最終的な意思決定や責任は人が担う必要があります。活用と統制のバランスを保つことが、経理におけるAI導入成功のポイントです。

AIが経理業務でできること・できないこと

AIが経理業務でできることとできないことを理解しておくことで、導入効果を最大化できます。万能ではないという点を押さえておきましょう。

 

【できること】

パターン化された業務 仕訳入力の自動化、請求書処理、経費精算チェック
データ処理 大量取引データの集計、売上データ分析、資金繰りシミュレーション
画像の読み取り 領収書や請求書PDFのOCR処理、帳票データの自動抽出
レポートの作成 月次試算表の自動作成、経営レポートのドラフト生成
文章の翻訳・要約 英文決算資料の翻訳、会計レポートの要約作成

 

【できないこと】

学習させていないケースへの判断や実行 前例のない特殊取引の処理、新規ビジネスモデルへの会計判断
社内外での意思疎通が必要な業務 監査法人との折衝、経営会議での説明、部門間調整
責任を伴う意思決定が必要な業務 投資判断、税務方針の決定、重要な会計処理の最終承認

 

上記のように、AIは「ルール化・パターン化できる業務」を得意としていますが、判断責任や高度な対人コミュニケーションが求められる業務は依然として人の役割です。適切に役割分担をおこなうことが、経理AI活用の成功につながります。

経理業務にAIを導入する4つのメリット

経理AIの導入は業務効率化だけでなく、組織体制の強化やコスト最適化にもつながります。具体的なメリットは次の4つです。

業務を効率化できる

AIを経理業務に導入することで、仕訳入力や書類処理、データ転記といった、経理業務の中でも特に時間を要しやすい作業を効率化できます。これまで手作業で確認や入力に多くの時間を割いていた業務も、AIの活用により短時間で処理できるようになります。その結果、担当者は単なる作業に追われるのではなく、数値分析や課題抽出、業務改善提案といった、より高度な業務に集中できる環境を整えられます。

ヒューマンエラーを削減できる

入力ミスや計算ミス、確認漏れといった経理業務特有のヒューマンエラーは、AI導入によって大幅に減少させることが可能です。特に仕訳処理や大量データの照合作業など、繰り返しおこなう業務では効果が顕著に表れます。人間は疲労や集中力の低下、思い込みなどによってミスを起こすことがありますが、AIはあらかじめ設定されたルールや学習データに基づき、一定の精度で処理を継続します。

さらに、異常値検知や自動照合機能を組み合わせることで、確認漏れの防止や二重チェックの強化にもつながり、結果として内部統制の質を高めることができます。

属人化を防げる

特定の担当者の経験や勘に依存しがちな経理業務も、AIを活用することで標準化しやすくなります。業務フローや判断基準をデータとして整理・蓄積できるため、属人的な運用から脱却できます。仕訳ルールや処理手順、チェックポイントなどをAIやシステム上に組み込むことで、誰が担当しても一定の品質で業務を遂行できる体制を構築できます。その結果、引き継ぎがスムーズになり、担当者の異動や退職時のリスク軽減にもつながります。

長期的なコストを削減できる

AI導入により業務工数や人的負担を削減できるため、人件費や外注費の最適化につながります。特に定型業務にかかる時間が短縮されることで、少人数でも安定した運用が可能になります。導入時には初期費用やシステム利用料が発生しますが、作業時間の削減やミス防止による再処理コストの回避、残業時間の抑制などを総合的に考慮すると、中長期的にはコスト削減につながるでしょう。

経理業務におけるAIの具体的な活用例

実際の現場で活用されている代表的なAI活用例を紹介します。導入イメージを具体化する参考にしてください。

請求書・領収書のデータ化

紙やPDF形式の請求書・領収書をAIでデータ化することで、これまで手入力していた情報の登録作業を大幅に省力化できます。AI-OCRを活用すれば、書類に記載された日付・金額・取引先名などを自動で読み取り、システムへ連携することが可能です。単なる文字認識にとどまらず、抽出したデータをもとに勘定科目の候補を提示したり、既存データと照合したりする機能も活用できます。これにより、入力作業の負担軽減だけでなく、確認作業の効率化や処理スピードの向上にもつながります。

帳簿やレポートの作成

試算表や総勘定元帳、月次・四半期レポートなどの帳簿・各種資料を効率的に作成できます。仕訳データをもとに自動で集計・整理できるため、これまで時間を要していた集計作業や転記作業の負担を大きく軽減できます。

クラウド会計システムやBIツールと連携することで、リアルタイムに数値を反映したレポートを自動生成することも可能です。経営層への報告資料作成にかかる時間を短縮でき、迅速かつタイムリーな意思決定を支援します。

データ分析サポート

売上やコスト、利益率などの経理データをAIが横断的に分析することで、数値の傾向や変動要因を可視化できます。これにより、どの部門でコストが増加しているのか、どの商品が利益に貢献しているのかといったポイントを迅速に把握できます。

さらに、AIは過去の実績データからパターンを抽出し、将来の売上予測やコスト推移のシミュレーションをおこないます。こうした分析結果は、予算策定や投資判断の材料となり、経営層の意思決定を補助する役割を果たします。

資料や決算書の翻訳

海外取引や外資系企業との取引がある場合、AIによる翻訳機能を活用することで、英文契約書や財務資料、決算書の作成・確認業務を効率化できます。専門部署に依頼していた翻訳作業の一部を内製化できるため、対応スピードの向上にもつながります。

また、生成AIを活用すれば、会計用語や財務表現を踏まえた翻訳を短時間でおこなうことが可能です。これにより、海外本社へのレポーティングや外資監査対応にかかる負担を軽減できます。

ただし、最終的な表現の正確性や数値の整合性については、人による確認をおこなうことが重要です。

問い合わせ対応の自動化

経理部門に寄せられる経費精算の方法や支払期限の確認、勘定科目の取り扱いなど、定型的な問い合わせをAIで自動対応することが可能です。よくある質問を学習させたチャットボットを活用することで、担当者が個別対応に追われる時間を削減できます。チャットボットと連携すれば、時間や場所を問わず問い合わせに対応できる体制を構築できます。これにより、経理担当者はイレギュラー案件や専門的な対応に集中でき、部門全体の生産性向上にもつながります。

経理業務にAIを導入する際の注意点

導入効果を最大化するためには、リスク管理も重要です。事前に確認すべき4つの注意点を整理します。

初期費用や運用コストがかかる

AIツールの導入には、システム導入費や初期設定費用、月額利用料などの初期コストが発生します。さらに、運用後も保守費用やアップデート対応費、追加開発費などの継続的なコストがかかる場合があります。あらかじめ投資額や運用コストを整理し、費用対効果や投資回収期間を試算しておくことで、想定外のコスト増加による運用破綻リスクを避けやすくなります。

また、責任者や経営層に対して導入の妥当性を説明する際にも、具体的な数値をもとにした説得力のある提案が可能になります。

最新の法令や会計基準への対応が必要

税法や会計基準は頻繁に改正が行われるため、経理業務では常に最新の法令に対応することが不可欠です。消費税率の変更やインボイス制度への対応など、制度改正は実務に直結します。

AIを活用する場合も、参照しているデータやルールが最新の法令に基づいているかを継続的に確認する必要があります。古い情報のまま運用してしまうと、誤った処理や申告ミスにつながるおそれがあるため、定期的なアップデートと人によるチェック体制を整えることが重要です。

個人情報や機密情報は学習させない

経理業務では従業員の個人情報や取引先情報、未公表の財務データなど機密性の高い情報を扱うため、AIに入力・学習させることで情報漏えいや不正アクセスのリスクが生じる可能性があります。特にクラウド型AIを利用する場合は、データの保存先や管理体制、利用規約の内容を十分に確認することが重要です。

必要に応じてデータの匿名化やマスキングをおこない、アクセス権限を厳格に設定するなど、情報セキュリティ対策を徹底しましょう。

あくまでも”補助ツール”として導入する

AIはあくまでも経理業務を支援する補助ツールとして位置付けるべきです。最終的な内容の精査や会計処理の妥当性判断、税務判断などについては、経理担当者が責任を持っておこなう体制を維持することが重要です。AIに依存しすぎると、誤情報や不適切な提案をそのまま採用してしまうリスクがあります。必ず人による確認・承認プロセスを組み込み、専門的な判断は経理担当者が担うという原則を徹底しましょう。

まとめ

「経理 AI」は業務効率化やコスト削減に有効ですが、ハルシネーションや情報漏えい、法令改正対応といったリスクもあります。できることとできないことを理解したうえで活用する姿勢が重要です。AIはあくまで補助ツールであり、最終的な会計判断や責任は経理担当者が担うべきです。人とAIの役割を適切に分けることで、内部統制を保ちながら業務の高度化を図れます。適切に導入すれば、経理はデータ分析や財務予測を通じて経営を支える戦略部門へと進化できます。自社に合った形で段階的に活用を進めることが成功のポイントです。

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