中堅・中小企業

中小企業庁が行う小規模事業者持続化補助金とは?対象者や申請方法、活用事例を解説

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帝国データバンクが2023年10月に発表した「全国企業倒産集計2023年度上半期報」によると、2023年4月~9月での倒産件数は4,208件です。前年同期比では34.7%増、件数では1,000件以上増加しています。そのなかでも、資本金1,000万円以下の企業(個人事業主含む)の倒産件数は2,868件(前年同期比38.0%増)で、全体の68.2%を占めています。このような統計から、中小規模事業者の事業継続が難しくなっていることがわかります。

今回は、中小企業庁が2013年から行っている、小規模事業者持続化補助金についてお伝えします。これは、インボイス制度の導入や、被用者保険適用拡大などの制度変更に対応し、事業の継続を目指すうえで大いに役立つ制度です。事業継続の資金調達にお悩みの企業担当者はぜひ、参考にしてください。

参照:全国企業倒産集計2023年度上半期報|帝国データバンク

小規模事業者対象の中小企業庁による持続化補助金とは

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が行う販路開拓や、業務の効率化を目的とした取り組みなどにかかる経費の一部を国が補助する制度です。具体的には、インターネット上の広告のほか、メディア広告の運用や展示会への出展、新商品開発、店舗改装などにかかる費用などが補助の対象事業・経費になります。

利益向上を目指し販路拡大を計画するも資金が足りないといった課題を抱える企業にとって、効果的な補助金だといえるでしょう。補助金を申請する際には、経営計画書の提出が必須とされています。そのため、自社の経営計画を見直すきっかけにもなります。また、申請手続きの窓口は地域の商工会議所や商工会のため、経営計画書について第三者からのアドバイスを受けられる機会があるのも大きなメリットです。

小規模事業者持続化補助金の対象者

持続化補助金の対象者は、常時使用する従業員数が商業・サービス業(宿泊業、娯楽業除く)の場合は5人以下、それ以外の業種は20名以下の事業者です。また、全国商工会連合会では上述の条件に加え、補助対象者を次のように定義しています。

  • 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)
  • 確定している(申告済みの)直近過去3年分の「各年」または「各事業年度」の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
  • 商工会の管轄地域内で事業を営んでいること
  • 小規模事業者持続化補助金<一般型>において、「卒業枠」で採択を受けて、補助事業を実施した事業者ではないこと
  • 下記3つの事業において、採択を受けて、補助事業を実施した場合、各事業の交付規程で定める様式第14「小規模事業者持続化補助金に係る事業効果及び賃金引上げ等状況報告書」を原則本補助金の申請までに受領された者であること (先行する受付締切回で採択された共同申請の参画事業者を含む)。

小規模事業者持続化補助金<一般型>

小規模事業者持続化補助金<コロナ特別対応型>

小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>

参照:小規模事業者持続化補助金|全国商工会連合会

小規模事業者持続化補助金の補助額

小規模事業者持続化補助金の補助額は次のとおりです(2023年9月時点)。
補助額

補助率は、申請した経費のうち、補助が受けられる割合のことです。また、特別枠の申請要件は次のようになっています

  • 賃金引上げ枠

事業場内最低賃金を地域別最低賃金より「+30円以上」とした小規模事業者

  • 卒業枠

小規模事業者として定義する従業員数を超えて規模を拡大する小規模事業者

  • 後継者支援枠

経済産業省が開催する「アトツギ甲子園」のファイナリストおよび準ファイナリストに選ばれた小規模事業者

  • 創業枠

過去3年以内に「特定創業支援事業」による支援を受け創業した小規模事業者

インボイス特例の補助額

インボイス特例の適用を受けた場合は通常枠・特別枠それぞれの補助上限に一律50万円が上乗せされます。インボイス特例の要件を満たす場合は、「通常枠」「特別枠」それぞれの補助上限額に50万円を上乗せられるからです。また、インボイス特例の申請要件は次のようになっています。

  • 免税事業者のうち適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者

ただし、過去の公募で「インボイス枠」で採択されて事業を実施した事業者は対象外です。

参照:「小規模事業者持続化補助金」が拡充されます|中小企業庁

補助対象となる経費

持続化補助金の対象となる経費は次のとおりです。

  • 機械装置等費(店舗であればショーケースや冷凍冷蔵庫など、一般企業であれば3Dプリンターや顧客管理ソフトなど)
  • 広報費(試供品や販促品の製造、郵送によるDMの発送など)
  • ウェブサイト関連費(インターネット広告やシステム開発・構築にかかる経費など)
  • 展示会等出展費(展示会・商談会の出展費、通訳料・翻訳料など)
  • 旅費(販路開拓を行うための交通費、宿泊費、航空保険料、出入国税など)
  • 開発費(原材料費、デザイン費など)
  • 資料購入費(新商品の開発にあたって必要な図書費、新聞雑誌費など)
  • 雑役務費(補助事業のために臨時的に雇用したアルバイト、派遣労働者の費用など)
  • 借料(補助事業遂行に必要な設備の利用料、機器リース代など)
  • 設備処分費(新サービスを行うための既存の建物の一部を解体する費用、既存設備の処分費など)
  • 委託・外注費(下請工賃、加工賃、社内業務のアウトソーシング費用など)

ただし、内容によっては対象外になる場合もあるため、事前に公募要領を確認する必要があります。

小規模事業者持続化補助金の申請方法

小規模事業者持続化補助金を申請する際の流れを簡単に解説します。なお、ここで解説しているのは2023年9月の公募要領を参考にしているため、新たな申請については必ず商工会議所や商工会に確認をしてください。

申請準備

申請の準備として、商工会議所や商工会のWebサイトで公募要領と参考資料、応募時提出資料・様式集などを確認します。特に提出資料は申請する枠によっても異なるため注意が必要です。

申請手続き

申請は電子申請もしくは郵送で行います。ひとつでも不備があると受理されないため、最終確認は必ず行いましょう。また、直接持参しての申請はできません。

申請内容の審査

補助金は給付金や支援金とは異なり、申請すれば必ず採択されるわけではありません。提出された申請内容について外部有識者が適切に審査を行い、採択・不採択を決定します。審査のポイントも公開されているので事前に確認して参考にしてください。

採択・交付決定

採択結果は補助金事務局のWebサイト上で公表したうえで通知されます。通常、受付締切から2~3カ月後に行われます。

補助事業の実施

補助金は実際に補助事業を行った後に入金されるため、まずは申請時に提出した補助事業計画に沿って事業を実施し、補助事業実施期限までに完了させます。

実績報告書の提出

補助事業終了日から起算して30日を経過した日もしくは最終提出期限のどちらか早い日までに、補助事業の実施内容と支出経費をまとめ、実績報告書として提出します。

確定検査・補助金額の確定

実績報告書や支出経費について事務局が審査・確認を行い、補助金額が確定します。

補助金の請求・入金

補助金額が確定すると「補助金確定通知書」が送付されます。金額を確認した後、精算払請求を補助金事務局に行えば、補助金が入金されます。

事業効果報告

補助事業完了から1年後に「「事業効果および賃金引上げ等状況報告」を文書で提出してすべてが完了です。

小規模事業者持続化補助金の活用事例

持続化補助金は、すでに多くの小規模事業者に給付されています。実際に補助金を受けた企業の活用事例を紹介します。

地もの屋 響(ゆら)

長野県の観光地で昼はカレー店、夜は居酒屋を運営する「地もの屋 響(ゆら)」(以下同店)。同店では、持続化補助金を使い、昼営業回転率アップを目的に厨房施設の購入・増設、居酒屋の宣伝目的でチラシを作成しました。その結果、昼は1.5倍の回転率向上、夜は客単価25%向上を実現しています。

袋谷タオル合資会社

大阪南部地域でタオルの製造販売を行う袋谷タオル合資会社(以下同社)。同社の事業は、JAPANブランドの育成(特別枠)に選ばれました。同じ地場産業の特産野菜、大阪ぶどうの赤ワイン・地ビール、堺の抹茶の「のこりもの」から染色した泉州タオルを製造する事業です。今後は国内外の販路拡大を展望しています。

水分観光有限会社

大分県でペットと泊まれる離れの宿として民宿を運営する水分観光有限会社(以下同社)。同社では、口コミだけの集客に限界を感じ、持続化補助金を使って看板の設置やパンフレットの作成、配布を行いました。また、ドローンを使った案内動画をYouTubeにアップロードし、事業開始5か月で新規顧客50名獲得を実現しています。

IT導入補助金との併用でさらなる販路拡大のチャンスも

販路拡大に必要なシステムや、効率化を進めるためのツールを導入すると、小規模事業者持続化給付金が適用できる可能性があります。ただし、補助上限がある点に注意しなければなりません。補助額を引き上げたい場合は、小規模事業者持続化補助金とIT導入補助金を併用する方法もあります。

IT導入補助金とは、中小企業や小規模企業向けの補助金で、業務効率化やDX推進に向けITツールを導入する際の支援を行う制度です。種類にもよりますが、最大で450万円の補助が受けられます。

例えば、販路拡大のための広告費やパンフレット作成などは小規模事業者持続化補助金を、販路拡大で増加する経費精算業務の効率化を実現するためのツール導入はIT導入補助金を使うといった方法が考えられます。

補助金の併用に関して、申請自体は可能ですが、ツール活用と販路拡大を明確に分ける必要があります。両者がともに採択されるとは限らないため、必ず事前にそれぞれの窓口で確認するとよいでしょう。

IT導入補助金について詳しくは、「IT導入補助金2023」をご確認ください。

補助金を活用して経理業務の効率化を実現しよう

市場や消費者の変化、制度変更への対応は、企業にとって事業継続をするうえで重要な課題です。特に小規模事業者は、人材や資金不足で販路拡大も困難なケースが多いです。今回紹介した小規模事業者持続化補助金は、変化に対応する際の大きな助けとなるでしょう。

ただし、補助金は申請すれば必ず採択されるわけではないため、制度の要件を確認することが重要です。また、補助には上限があり、販路拡大やシステム導入の費用すべてをまかなうのは難しいでしょう。

補助を多く受けたい場合は、小規模事業者持続化補助金とIT導入補助金を併用する方法が考えられます。営業や開発には小規模事業者持続化補助金、バックオフィスの負担を軽減するためのツール導入はIT導入補助金を使う、といったように、制度の主旨に応じた使い分けをするとよいでしょう。

経理部門の負担軽減のためにツールを導入する際は、「Concur Expense 経費精算システム」がおすすめです。ほとんどの精算業務を自動化するため、経理業務の効率化が実現します。交通費や宿泊費などの経費申請が自動化されることで、申請する側の効率化も促せます。

経費精算を効率化することで補助事業に集中できるようになり、大きな成果を上げられる可能性も高まるでしょう。補助金申請を検討している際はぜひ、お気軽にご相談ください。

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