出張・経費管理トレンド
【イベントレポート】企業成長を支えるAI時代のコストマネジメント~間接材管理の高度化の秘訣~
2025年3月11日にイベント「企業成長を支えるAI時代のコストマネジメント~間接材管理の高度化の秘訣~」(主催:株式会社コンカー)を開催し、18社26名様にご参加いただきました。
当日はデロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ディレクター 富田 吉隆氏とシニアマネジャー 堀内 肇氏より、経営を強くするためのコスト構造改革についてご講演をいただいた後、SAPジャパン株式会社 ファイナンス&スペンドマネジメント事業本部 営業部長 巌 直樹氏、Fieldglass Advisory 日本担当ディレクター 藤本 晋太郎氏より、支出管理の高度化に向けた最新SAPソリューションについてのご講演、最後に中外製薬株式会社 購買部 シニアマネジャー 福岡 耕太氏より、企業戦略として考える出張コスト最適化についてご講演いただきました。
本ブログ記事では当日の様子をご紹介します。
【冒頭挨拶】本日のテーマについて
冒頭、株式会社コンカー 営業統括本部 クライアントエンタープライズ営業部 部長 柳 宗行より開会挨拶を述べました。
最近、多くのCFOの方や経営層の方とお話しさせていただくと、新規事業や中期予測などで1年先のことが本当にわからないというお話をうかがいます。ただし、間接業務に関しては別で、確実に効果が見込めるため、優先してこの業務の整流化や構造改革を押し進めていくことがトレンドになっています。
そこで今回は、間接材のコストにとくにフォーカスを当てて、企業の成長を加速するために必要なコスト構造改革についてひもとき、AIを活用した間接コスト管理の最適化についてご紹介します。
また出張費、とくに海外出張をされる皆様はすでに運賃が高騰していると思いますが、この出張費用管理のベストプラクティスについて、事例と共に構造改革をひもときます。
【基調講演】経営を強くするためのコスト構造改革
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ディレクター 富田 吉隆 氏とシニアマネジャー 堀内 肇氏より、「間接材とは」「コストマネジメントが求められる背景」「統制の仕組み(予算統制×購買統制)」それぞれのテーマのご説明と、「テクノロジーの活用」にてAI活用の最新状況をご紹介いただきました。
間接材とは
間接材とは、パソコンなどのIT機器や事務用品など、いわゆる原価には属さない経費にあたります。売上の上下変動に関わらず、間接材は固定的にかかってくるものというのが一般的な概念です。そのため、間接材に対してしっかりコストマネジメントしていくと、その分が利益貢献する点で間接材が注目されている側面もあります。
間接材の特徴として、全社横断でコスト管理している部署は無く、いまだに管理方法がアナログであることが特徴にあげられます。更に、各部署の支出情報も個別に散在しており、どこのコストを下げるべきかの戦略がうまく立てられないのが比較的多い状況です。また、可視化できていないことでチェックの目が入りにくい分野で、不正リスクも高いといわれています。
こうした課題に対して、購買依頼から検収支払までを可視化した購買のシステムの導入が、間接材の管理における1つのソリューションとして活用されるのが、先進企業では主流になりつつあります。
コストマネジメントが求められる背景
コストマネジメントの置かれている状況として、多くの企業が急激な環境変化、資源高、人材不足によって利益喪失の鍵として、このコスト削減というところを重要テーマに取り組んでいます。しかしながら、削減に取り組んでも、時代背景からの価格上昇により限界が出ていると考えられます。
そのような背景から、コスト削減の1つ上のレイヤーとして、コストを削減する視点だけではなく、コスト情報の可視化や、投資すべきものには投資するという判断をできる環境の整備が、コストマネジメントに求められています。
統制の仕組み(予算統制×購買統制)
予算統制と購買統制という2つの考え方を掛け合わせて、コストマネジメントの統制を高度化する必要があります。
従来のトップダウン型の削減活動では、現場のモチベーションが下がり、成果が限定的で終わる可能性があります。そのため、経営の方がトップダウンできちんと指示を出したり、経営層もサプライヤーと対峙する場に出席するといったコミットを体現し、細かくレビューをしながら意見をすることも大切です。
ただし、ボトムアップとして中身を伴ったコストマネジメントを仕掛けていかないと、延々とゴールが見えない状態になります。むやみやたらにすべてのコストを下げるのではなく、客観的に見て適正な費用には手をつけない、もしくはコストが上がって投資すべきといったこともコストマネジメントの中には含まれてくると思います。
ボトムアップでコストマネジメントを高度化する仕組みの一つとして、ZBB(Zero Based Budget)という考え方があります。前年予算をベースに今期予算作りをスタートするのではなく、毎年ゼロベースで1から根拠を立てて予算を作り、会社として合意形成を図っていくという考え方であり、予算編成に課題がある会社では取り組んでいる事例も多く見受けられます。
テクノロジーの活用
調達やコスト削減の施策を打つ時に、大体可視化から施策を立案し、実行して定着化するステップで進んでいきますが、企業ごとに課題が出てきます。そこでテクノロジーである「デジタルアダプションプラットフォーム」「生成AIの活用」が大きく寄与することが期待できます。
「デジタルアダプションプラットフォーム」とは、新たなシステムを導入した際に各現場が混乱し、個別ルールを作って統一ルールが形骸化することで、本来意図したデータの均質化が損なわれることを防ぐツールです。システムのUIの画面上に入力用ガイダンスを表示し、ユーザーの入力負荷を軽減するだけでなく、標準ルールから逸脱するデータを除外してTips表示で自己学習させることにより、標準業務の定着化を促進することが可能です。
「AI活用による分析効率化」では、データ分析による管理の高度化や、低減すべきコストの絞り込み、外部データに基づく見込み予想、ルーチン化されていない契約書レビューやカテゴリー分類への対応などが期待できます。
【サービス紹介】支出管理の高度化に向けた最新SAPソリューション
SAPジャパン株式会社 ファイナンス&スペンドマネジメント事業本部 営業部長 巖 直樹氏、Fieldglass Advisory 日本担当ディレクター 藤本 晋太郎氏より、最新SAPソリューションである、「SAP Business Network」についてご紹介いただきました。
SAP Ariba
間接材の管理は、さまざまな部門で多岐にわたった方法で調達しており、請求書を起点としたデータ集計では調達活動に必要なデータを取るのが難しいというのが実態だと思います。一方で、直接材と違ってこの間接材の領域はノンコアと呼ばれるような業務なので、内製化で独自にシステムなどを作り込むのは無駄が多いと言わざるを得ません。
SAP Aribaのサービスをご利用いただくことで、多様な購買プロセスを標準プロセスに置き換えながら自動化・統合化することができます。
SAP Fieldglass
外部人材・サービス (役務) は物品の購買とは異なり、売買契約ではなく、派遣契約・請負契約、準委任契約といった形で締結される購買カテゴリーであり、発注方式が非常に多岐にわたります。
SAP Fieldglassのサービスの特徴は、主に3つあります。
1つ目は業務の標準化と自動化です。役務において活用される多様な発注方式に対し、単一のプラットフォームで対応可能となり、見積から請求承認に至るまでの業務プロセスを一気通貫で効率的に管理することが可能になります。
2つ目は「統制→管理→レビュー→改善」というプロセスの好循環を実現することです。調達戦略を反映した統制のもと、派遣法・下請法・建業法などの主要な法令に沿った運用設計や情報管理を可能とし、現場での法令対応を支援します。加えて、蓄積されたデータをKPIとして可視化・出力することで、継続的なレビューと改善を促進する基盤を提供します。
3つ目は可視化です。通常の購買システムでは、「どのような業務を、どのような外部人材に外注しているか」といった情報の把握には限界があります。SAP Fieldglassでは、業務内容や、職種、勤務地、スキル、資格といった人材情報など、役務に特有の詳細情報まで管理することができます。
SAP Spend Control Tower
既存システムサードパーティーのソフトウェアでは、支出の補足がしにくいことに対して、SAP Spend Control Towerでは支出データをすべてのシステムから抽出し、クレンジングを行ってアウトプットするという仕組みを提供しています。
AIを活用してアウトプットすると、サマリー、テールスペンド、支出コンプライアンス、ソーシングリスクといった情報の集計統合が効率的になり、本来の戦略的な業務にシフトできると考えています。
SAP Ariba Category Management
商材をどのように分類してカテゴリー化し、それぞれのカテゴリーに対してどういう戦略でコスト削減を行っていくのかといった戦略を立てた上で戦術に落とし、それを実行して本当の意味でのコスト削減を得る、このような一連の流れをカテゴリーマネジメントといいます。
主にSAP Spend Control Towerで集めたデータを分析して、カテゴリーマネジメントの流れを繰り返すことによって継続的なコスト削減を実現する、デロイト様の講演でもAIを使ってやるべき領域とあったのがカテゴリーマネジメントの領域です。
AIを活かすためにも、きちんとしたデータを補足していくことが重要になってきます。
【パネルディスカッション】企業戦略として考える出張コスト最適化
中外製薬株式会社 購買部 シニアマネジャー 福岡 耕太氏と株式会社コンカー 丸山による対談形式で、「企業戦略として考える出張コスト最適化:中外製薬様が語るConcur Travel導入背景と効果」と題してディスカッションを行いました。
【中外製薬でやられてきたことのポイントをうかがえますか?】
(福岡氏)カテゴリーマネジメントのうちのトラベルマネジメントをやっています。
旅費は間接材で手をつけやすい部分です。旅費を適正管理するため、人事部の旅費規程に対する出張費ガイドラインを作ること、そして、適正管理するための社内の仲間を作ることから手がけました。HRやファイナンスなどの部門からそれぞれキーになる人を集めて、一番敵になるであろう相手を味方につけることから着手したわけです。これが功を奏し、大幅な金額の削減が実現できたのです。
(丸山)作られたチームには人事部の方もメンバーに含まれますか?
(福岡氏)人事部はやはり一番グリップしておくべきです。人事部から組合に対して説明できるようにしてもらう必要があるからです。つまり、調達・購買にいる者は、他部門の仕事やキーマンを知ることが大事だということです。
(丸山)ガイドラインというのは、会社として、こういう場合はこれを買うべきといったような踏み込んだ指針ですか?
(福岡氏)旅費規定をそのままMax上限まで使うのではなく、コスト意識をもちましょうという意味のガイドラインになります。
【「Concur Travelを活用」のスライドでなにかお話ししたいことはありますか?】
(福岡氏)仕組みを入れる時には、ポリシーが仕組みに反映されていることが大事です。Concur Travelはグローバルクラウドの仕組みですから、その設定に合わせたポリシーを考えるというのは1つであると思っており、今取り組んでいます。
【合意形成を含めた旅費の最適化プロジェクトは、「調達」がやるべきなのか?という疑問にコメントをいただけますか?】
(福岡氏)旅費は支出であることから、調達・購買の責任においてやるものです。合意形成する場合も、決して領空侵犯とはなりません。ただし旅費規程と、その規程をどうやって使ってコストマネジメントをするかという旅費の使い方ガイドラインという理解で良いと思います。
【調達部が効果を出したことを、ちゃんと社内評価してもらう体制づくりが大事だという声を結構聞きます】
(福岡氏)とかく、本社組織(コーポレートという)の部門は、コストセンターという理解がなされていますが、僕ら購買部のミッションは費用の効率化であることから、会社への利益貢献視点でいえば、コストセンターではなくプロフィットセンターだと思っています。
また、例えば、HRと一緒に人事評価などで組織強化の課題としてあげてみてはいかがでしょうか。部門での削減を人事評価に組み込む発想ですが、組織としてのモチベーションとして効果的であると考えます。あくまでも、個人的な見解です。
さいごに
最後に、コンカーの柳 より、ご登壇いただいた皆様、ご参加いただいた皆様にお礼を申し上げ、閉会の挨拶とさせていただきました。イベント終了後、簡単な懇親会の場を設けて、ご参加者様同士の活発な情報交換が行われました。
ご講演いただいた皆様、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
コンカーではこのようなセミナー・交流会を積極的に開催しています。今回ご参加いただけなかった方も、次回はぜひご参加ください!
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