幸せに働く人を増やすパーパス・マネジメントを考える【イベントレポート - 前編】

Taku Kakino |

去る2019年6月10日、株式会社コンカー(東京都中央区銀座)にて、「第5回 Back Office Heroes ミートアップ 自分とみんなの仕事と幸せを考える&タニモクをやってみよう!」が開催されました。

前半の「社員の幸せを大切にする経営-パーパス・マネジメントとは?」をテーマにした、Ideal Leaders株式会社 共同創業者/CHO(Chief Happiness Officer)丹羽真理さんのインタビューセッションをお届けします。

【パネラーのプロフィール】
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丹羽 真理 さん

国際基督教大学卒業、University of Sussex大学院にてMSc取得後、2007年に株式会社野村総合研究所に入社。民間企業及び公共セクター向けのコンサルタントとして活動後、エグゼクティブコーチングと戦略コンサルティングを融合した新規事業IDELEA(イデリア)に参画。2015年4月、Ideal Leaders株式会社を設立し、CHO (Chief Happiness Officer) に就任。社員のハピネス向上をミッションとするリーダー「CHO」を日本で広めることを目指している。特定非営利活動法人ACE理事。2018年8月31日に初の著書「パーパス・マネジメントー社員の幸せを大切にする経営」を出版。

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柿野 拓 さん

大学卒業後、外資系大手ERPベンダーに入社、マーケティングを中心に様々な業務を経験後、株式会社コンカーへ転職。現在、マーケティング、PR、インサイドセールスに従事。ヒト自体にとても興味があり、そのヒトの考え方と行動がいつも気になっています。座右の銘は「高下在心」、段ボール運びなども、結構楽しそうにやって生きています。あと、特定非営利活動法人「おいしい空気とおいしいごはん」の代表理事として飲食店の完全禁煙など社外活動も楽しくやっています。

 

自分と会社のパーパス(存在意義)を考えたことはありますか?

 

そもそもパーパスって何? パーパス・マネジメントって? パーパスという言葉を「聞き慣れない」と思う人も多いかもしれません。

社員のハピネス向上をミッションとするリーダー「CHO」を日本で広めることを目指し、著書『パーパス・マネジメント―社員の幸せを大切にする経営』(クロスメディア・パブリッシング)がある丹羽さんは、こう説明します。

丹羽パーパスとは、ミッション・ビジョン・バリューのうち、ミッションに近い概念です。「目的」と訳されることが多いですが、一番しっくりくる訳は「存在意義」かなと思います。この会社は何のために存在しているのか、私は何のために存在しているのか――組織と自分の存在意義に共通項を見出せると、幸せにかつ意義深く働けるという考え方です。

ミッションとパーパスの違いは似ていますが、たとえば「業界ナンバーワンになる」「◯兆円企業になる」といったミッションが掲げられている場合、それはパーパスとは異なります。

パーパスは会社や自分が存在することで、会社(内側)だけにとどまらず、世の中(外側)にどんなインパクトをもたらすのかといった、社会的意義を含んでいます。ミッション以上に、自分の中から湧き出る本当にやりたいこと、という意味を含めてパーパスと呼んでいます。

柿野 : たしかに会社と自身の存在意義に共通項があると、働くモチベーションが上がり、仕事も含め人生が楽しくなりますよね。でも、共通項を見出すのがなかなか難しい……という人にはどんなアドバイスをしますか?

丹羽 : 自分の◯と組織の◯があると、そのふたつの◯が重なり合う部分が共通項ですよね。共通項を見出すには、まず自分の◯の大きさを広げてみることが大事です。抽象度を上げると言ってもいいかもしれません。

 

パーパスを探ると、自分の強みが見えてくる

 

柿野 : お聞きして思うのが、個人のパーパスの見つけ方って、一般化されていない、と。はるか昔、就活中にした自己分析がそれに近いかもしれませんが、自分自身についてしっかり考える機会が就活以来なかった、という人も少なくないと思います。社会人になって10年、20年経つうちに、自分も変化してますしね。

丹羽 : 考える機会を作れるといいですよね。自分は何のために存在しているのか、今改めてじっくり考えてみると、自分が大切にする価値観に沿った内容が出てくるはずです。

柿野 : ところで、丹羽さんご自身のパーパスをお聞きしてもよいですか?

丹羽 : 自分の活動を通じて、幸せに働く人を増やすことですね。比較のために言うと、自分がお金持ちになるとか、有名人になるというのはパーパスではないです(笑)。社会的意義を含まない、個人的な願望なので。

柿野 : なるほど。パーパスは“信念”みたいなものですね。

丹羽 : 自分のパーパスがわからない、という人には「自分の強みをわかっていますか?」と問いかけるようにしています。

柿野 : 自分の強みを知る手段として、私の部門ではメンバー全員に「ストレングスファインダー®(※)」を受けてもらっています。現在の自分の特性を理解しておくのはとても大切だと思っています。

※米国ギャラップ社が開発したオンライン「才能診断」ツール。Webサイト上で177個の質問に答えることで、自分の才能(=強みの元)が導き出されます

丹羽 : 診断モノはいいですよね。身近な人に聞いてみるのもおすすめです。自分では当たり前だと思っていることが、他人から見るとそうではなかったり、質問を受けることで掘り下げるネタができたりします。その上で、自分の役割や肩書からは一歩離れて、「自分ってどんな人間だっけ?」と自分に対して好奇心を持って眺めてみてはいかがでしょうか?

柿野 : 自分の場合、「私ってどんな人に見える?」と聞くようにしていて、自分が思っている自分像と他人が思っているそれとが、違う時に、その差の面白さを楽しむことがあります。

丹羽 : 客観的な視点が入りますからね。

個人と組織のパーパスをバランス良くすり合わせる方法

 

柿野 : 個人のパーパスを組織のパーパスに寄せようとする過程の中で、他人から得た情報はかなり有用ですよね。一方で、個人の思いややりたい仕事と組織の求めるそれがマッチしないケースも出ますよね?

丹羽 : 大前提として、現時点での組織や部のミッション(※)について、共感を作っておくことが大事です。そうすれば、一人ひとりが「今会社から求められているこの業務は、◯◯のミッションにつながっている」と納得した上で仕事に取り組めるようになります。一つひとつのプロジェクトで実践することをお勧めします。

柿野 : チームと部署、会社それぞれパーパスには違いが出てくると思います。チームで掲げているパーパスと、会社から来る命題をマッチさせるというか、バランスを取るのはけっこう難しい。何かコツはあるのでしょうか?

丹羽会社のパーパスも皆が楽しみながら取り組めるものにすることですね。そうすればチームのパーパスとも紐付いて、矛盾が起きにくくなると思います。

柿野 : なるほど。

丹羽 : 一番いいのは皆で会社のパーパスを作り、四半期に一度でもいいので、定期的に振り返る機会を設けることです。会社のパーパスに沿ってやった仕事は何か、皆で出し合ってみるんです。そうすれば自分がしていた小さなタスクも、よくよく考えると会社のパーパスにつながっていたと気づけるはずです。

皆が一体感を感じられるパーパスがあることで、パーパスに共感した社員は高いモチベーションを持って、それぞれが責任感を持って仕事に取り組むようになります。

さらに、一人ひとりが能力と創造性を発揮できる組織となり、そこから生み出された商品やサービスは顧客から支持され、企業活動を持続させることにつながると思います。

会社で、チームで、個人で、パーパスと向き合ってみてはいかがでしょうか。後編 では 他人に目標を立ててもらうワークショップ「タニモク」実践編 をお届けします。

今回のイベントの様子は Ideal leaders 様の Web ページでも紹介されています。こちらも併せてご覧ください。

執筆:池田園子 / 撮影:溝渕暉 / 企画編集:柿野拓