経理・総務の豆知識

クレジットカード利用明細を活用して、紙の領収書の廃棄を簡略化しよう!

SAP Concur Japan |

2016年9月30日の申請分から、電子帳簿保存法の規制緩和に基づき、スマートフォンで撮影した領収書画像も、証憑として認められることになりました。これを機に、領収書の電子化を推進し、コスト削減を検討される企業も増えていることと思います。

私自身、2014年の秋より、領収書を含む「国税関係書類」(他には、請求書や契約書など)の電子化において、スマートフォンでの撮影を認めてもらうよう、関係省庁に働きかけてきました。その結果が今回の規制緩和ですが、実は陰で、もう一つの規制緩和について、働きかけを行ってきました。

領収書を電子化し、紙の領収書を廃棄することで、企業における領収書の保管コストを削減することが可能になりますが、その「紙の領収書の廃棄」のためには、定期的に検査を行わなければなりません。その定期検査のための労力を削減することができるのが、今回のテーマである、「クレジットカード利用明細の活用」になります。

定期検査とは?

前述のとおり、電子帳簿保存法に基づいて紙の領収書を廃棄するためには、定期検査を行わなければなりません。同法の規定では、最低年に1回以上定期検査を行い、そののち、紙の領収書を廃棄することができます。
では、その定期検査では、何を行わなければならないか、というと、以下の2つになります。

  1. 領収書電子化のための社内規則に則り、各従業員が、適切に領収書の電子化や承認・確認行為を行っているかどうかをチェックする。
  2. 廃棄対象の紙の領収書から、ランダムに一定数を抽出し、第三者(領収書を受領した本人、その本人の経費を承認する上長以外の者)当該領収書の画像(写真)と突き合わせ、正しく電子化が行われていることを確認する。(第三者によるランダムチェック)

1については、いわゆる業務監査に近いものであり、今回の場合は、領収書電子化のために策定した社内規則通りに、正しく経費精算が行われていることをチェックすることを指します。
一方で、領収書電子化を行おうとする各企業の頭を悩ませているのが、2の「第三者によるランダムチェック」です。

なぜ悩まされるのか?

ではなぜ、この「第三者によるランダムチェック」が悩みの種になっているのでしょうか。

それは、このチェックを、どのように行えばよいのかの明確な指針が無く、参考になる事例がほとんど見当たらないためです。
特に一番悩ましいのは、チェックすべき紙の領収書の「一定数」とはどのくらいの量なのか?ということです。

一般的な監査基準として、企業会計審議会が公開している内部監査実施基準を見ると、「日常反復継続する取引対象の場合は、(中略)90%の信頼性を得るため、25件を無作為に抽出してチェックを行うことを推奨する」と書かれています。つまり、領収書が何枚あろうとも、25枚を無作為に抽出し、領収書画像と突き合わせて、問題が無ければ、90%の信頼性のもとに、すべての紙の領収書を廃棄できる、という考え方です。

ですが各企業においては、「本当に25枚でいいのか?」「不安だから、3,4割くらいは確認しておかなければならないのではないか?」「誰がそのチェックを行うのか?」「そのくらいのスパンで行うのか?1か月毎?四半期ごと?」「だとすると、チェックするまで紙の領収書はどうやって保管しておくのだ?」「当社が契約する監査法人の見解はどうなのだ?」と、考えれば考えるほど、迷宮に陥ります。

では、対象となる領収書を減らせないか?

そこで考えたのが、「だったら、定期検査時にランダムチェックの対象にしなければならない紙の領収書を、減らすことはできないか?」ということです。

そもそもこのランダムチェックの目的は、「撮影された領収書の画像が、改ざんされていなく、金額や日付、支払先が、紙の領収書と同一の内容であること」を確認することにあります。
であれば、その証明ができる他のものを活用して、人の手でランダムチェックをしなければならない領収書の数を減らすことはできないか?と考えてみました。

そこで思いついたのが、Concur Expense上でも利用できる「法人カード利用時の利用明細」でした。

法人カードの利用明細が持つ特徴

Concur Expenseにおいて、対応するクレジットカードベンダーの法人カードを導入することで、個々の取引の利用明細が、データとして自分の経費精算に対して送られてきます。

例えば、私が東京駅において、法人カードで新幹線の切符を買ったとすると、その取引の利用明細(日付、金額、利用したクレジットカード番号、取引店名)が、データとして、私のIDでログインしたConcur Expense上に表示されます。

このデータに限らず、クレジットカード会社からの利用明細は、改ざんすることができない情報になります。この情報を活用することで、人の手でチェックすることと同様の効果をもたらすことを、関連省庁とともに検討しました。

法人カードの利用明細とひもづけて保存

経済産業省を通して依頼し、財務省、国税庁にご検討いただいた結果、この「定期検査」の指針として追加されたのが、下記のWebサイト(国税庁による電子帳簿保存法Q&A)の、問67-2にある、法人カードの利用明細を活用した、第三者によるランダムチェックの簡略化です。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/ans3/03.htm#a67-2

要点としては、

  1. 法人カードで行った取引の利用明細(個人が所有するクレジットカードは対象外)と、
  2. その際受領した領収書の画像(所定のタイムスタンプを付したもの)を、
  3. ひもづけて保管することで、
  4. 当該の紙の領収書は、第三者による定期検査を経ることなく、上長承認後に廃棄してもよい

ということになります。

つまり、第三者によるランダムチェックの対象となる領収書を減らすことが可能です。

法人カードの利用を促進することで得られる効果

Concur Expenseをご導入いただく企業のうち、約7割は、法人カードの利用も推進されていらっしゃいます。各従業員に法人カードを配布し、カード決済が可能な店舗では、法人カードを利用すること、としていらっしゃいます。

法人カードの利用を推進することで得られる効果としては、今回ご説明した第三者によるランダムチェックの簡略化だけではなく、カード決済による取引内容の可視化、つまり改ざんやちょろまかしができない取引を増やすことができることも挙げられます。

現金で決済し、手書きの領収書をもらうような取引では、経費精算の不正が横行する温床になりかねません。レジによる機械打ちのレシートを受領し、法人カードによる取引内容の可視化を推進することで、経費精算のガバナンスも向上すると言えます。

まとめ

今回弊社より関連省庁のご検討いただき実現した、本追加規制緩和は、これまでたんに保管しておくしかなかった、クレジットカードの利用明細が、領収書の電子化のための強力な材料としてスポットライトを浴びたことになります。

ぜひこのチャンスを生かし、貴社における領収書電子化によるコスト削減、並びに、経費精算のガバナンスの向上にお役立てください。

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