経理・総務の豆知識

【インボイス制度 早わかりブログ】第1回「インボイス制度とは」

Hiroaki Funakoshi |

弊社によるWebinarや電子帳簿保存法に関する各種資料、完全ガイド等でも、一昨年あたりから「消費税のインボイス制度」という言葉が出てくるようになりました。

すでに様々なメディアや媒体、国税庁のWebサイト等で説明がなされておりますが、改めて簡単に、この制度はどういうものなのかについて複数回に分けて振り返ってみます。

インボイス制度についてさらに詳しくはこちら:

【インボイス制度がすぐわかる!】対応チェックリストつき かんたんガイドブック

インボイス制度とは

インボイス制度は、正式には「適格請求書等保存方式」というもので、消費税の複数税率に対応した、新しい仕入税額控除の方式のことを指します。これは、売手が買手に対して、正確な消費税率や消費税額を伝えるために導入された方式であり、令和5(2023)年10月1日以降の課税仕入れに対して適用されます。

本ブログを公開した2021年9月時点では「区分記載請求書等保存方式」という方式及び「区分記載請求書」というもので仕入税額控除への対応が行われております。

まずは現行の区分記載請求書等保存方式と、適格請求書等保存方式を、簡単に比較してみます。

 

区分記載請求書等保存方式

適格請求書等保存方式
(インボイス制度)

期間

令和元(2019)年10月~令和5(2023)年9月

令和5(2023)年10月~

発行される
もの(※)

区分記載請求書

適格請求書

請求書の
記載事項

・発行事業者の氏名又は名称

・取引年月日

・取引の内容(軽減税率の対象である場合には、その旨)

・税率ごとに合計した取引金額(税込)

・請求書受領者の氏名又は名称

左記に加え

・発行事業者の登録番号

・税率ごとの消費税額等

請求書
交付義務

交付義務なし

交付義務あり

免税事業者からの仕入税額控除

可能

不可

インボイス
制度開始後の変更点

・適格請求書を発行するためには、適格請求書発行事業者として登録を行う必要がある。

・適格請求書発行事業者は、買手から適格請求書の発行を求められたら、発行する義務がある。

・買手側が仕入税額控除を行う場合は、適格請求書の保存が必要になる。

・適格請求書発行事業者の登録を受けていない事業者が発行した請求書等では、仕入税額控除はできない。ただし一定期間の経過措置がある。

※名称は「請求書」となっていますが、領収書やレシートも含まれます。


適格請求書とはどのようなものか

上記表の通り、区分記載請求書と適格請求書では記載が必要な項目が異なります。
では、適格請求書において、サンプルのレシートをもとに、どのような記載事項がなければならないのかを確認してみましょう。

invoice

上図の中で、まず目を引くのが「登録番号」です。これは適格請求書から記載が必要になるもので、この登録番号を取得するためには、令和3(2021)年10月より、請求書発行事業者が登録申請書を作成し、税務署長に申請をして登録を受ける必要があります。まだ先のような感じでしたが、気づいてみたらもう登録が開始する時期になりました。

この登録番号は、法人番号を持つ事業者の場合は、「T+法人番号」となります。

法人番号を持たない事業者の場合は、「T+13桁の数字」が登録番号になります。

インボイス制度が開始される令和5(2023)年10月までに登録を受けるためには、原則として、令和5(2023)年3月31日までに提出しなければなりませんので、ご注意ください。

もう一つ、区分記載請求書から大きく変わるものとしては、税率ごとの消費税額を記載する必要があることです。

例えば現在、取引金額については、下記の通り税率ごとの税込の合計額を記載すればよいことになっています。
line-item

これが適格請求書の場合は、
line-item

上記のように、税率ごとの消費税額も明記する必要があります。

これらが明記されたものでなければ、買手側は仕入税額控除ができなくなりますので、注意が必要です。

とはいえ、場合によっては令和5(2023)年10月までに登録が間に合わなかったりすることで、適格請求書発行事業者ではない事業者から、課税仕入れを行ってしまうこともあるかもしれません。

買手側も、レシートを受領したがよく見ると適格請求書ではない・・・ということも起きうるでしょう。

そのような場合に向けて認められた、インボイス制度開始後の経過措置について説明します。
 

インボイス制度における経過措置について

前述の通り、令和5(2023)年10月までに適格請求書発行事業者の登録を受けられなかった事業者からの課税仕入れに対しては、2段階に分けて、経過措置が認められています。
invoice-process-steps

インボイス制度開始後から3年間、令和8(2026)年9月30日までは、適格請求書発行事業者ではない事業者からの課税仕入れにおいても、仕入税額相当額の80%は仕入税額控除が可能です。
同様に、令和8(2026)年10月1日~令和11(2029)年9月30日の3年間は、50%の額が仕入税額控除可能となっています。

それ以降は、適格請求書でなければ、仕入税額控除ができなくなりますので、ご注意ください。

つまり、請求書発行事業者側は、この経過措置の期間が終わるまでに適格請求書発行事業者の登録を受ける必要があります。免税事業者の場合はこの間に、課税事業者に転換すべきかどうかの判断が迫られるということになります。

ただし、この経過措置の適用を受けるためには、必要事項が記載された帳簿と請求書等の保存が必要になります。ここでいう必要事項が記載された請求書等とは、最低でも現時点での区分記載請求書と同様のものである必要があります。

今回はインボイス制度の概要について、経過措置とともに説明をしました。

インボイス制度自体が開始されるのはまだ2年先の話ですが、登録番号の申請の受付は、本年10月より開始されます。貴社においても、まずは登録番号の取得からご検討を始めてください。

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