経理・総務の豆知識

交通費の不正受給を防ぐには? 会社側が考えるべき手段を解説

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交通費や通勤費の不正受給が起きた場合、1件あたりの金額は小さくても、何カ月、何年と積み重なれば相応の金額になります。不正受給は会社側に損失を与える行為であり、気づかずに放置していたり、対応が遅れたりすると、大きな問題につながりかねません。従業員による不正受を発見した場合、会社側にはどのような対応が求められるのでしょう。今回は、交通費や通勤費の不正受給でよく見られるパターンを紹介し、見つけた場合の対応、不正受給を起こさせないためのポイントをお伝えします。経営者はもちろん、経理担当者も、業務の負担軽減を実現するためにぜひ参考にしてください。

なお、経費全体の不正を防ぐために必要な点について詳しくは、「経費の不正を防ぐには(WP)」をダウンロードしてご一読ください。

関連記事:経費精算における不正リスク管理の実態調査と考察

 

交通費や通勤費の不正受給でよくあるパターン

交通費や通勤費をどのようにごまかして不正受給するのでしょう。よくあるパターンは次のとおりです。
※交通費と通勤費の違いについて詳しくは、「交通費精算のポイント、通勤費との違いや計算方法について解説」をご覧ください。

交通費の不正受給でよくあるパターン

  • 取引先までの往復電車代を請求したが実際には歩いて行った:例えば、電車で1~2駅の距離にある取引先まで歩いていき、その区間の電車代を交通費として請求します。
  • 出張先までの新幹線の切符を払い戻し格安の交通手段で移動した:いったん新幹線の切符を購入しながら、払い戻しをして深夜バスで移動し、差額を不正受給するパターンです。また、出張先で相手側の車で移動したにもかかわらず、電車移動したとして請求するパターンもよくあります。

ほかにも、出張の場合、申請したホテルよりも安いホテルに宿泊し、宿泊費の差額を不正受給するケースも該当します。
※旅費の精算について詳しくは、「旅費精算の煩雑さを軽減し、効率的な精算業務を行うためのポイントを解説」をご覧ください。

通勤費の不正受給でよくあるパターン

  • 会社に申請した経路とは異なる定期券を購入している:会社に申請した経路よりも安い経路で定期券を購入し、その差額を受け取る方法です。
  • 実際には住んでいない住所を会社に申請して定期券を購入している:例えば、会社には実家に住んでいると申請しながら、実際には会社に近い場所に住み、定期代の差額を受け取ります。本人名義で借りている住居で申請しているのに、実際には会社近くの友人宅に寝泊まりしていて、そこから通勤し、定期代の差額を受け取っているケースもあります。
  • 定期代を受給しながら実際には自動車やバイク、自転車で通勤している:会社には電車やバスで通勤していると申請して定期代を受給しつつ、実際には自動車やバイク、自転車などで通勤します。定期代をガソリン代として使っている場合も、不正受給に相当します。

交通費の不正受給を見つけた場合に会社がとるべき対応

交通費や通勤費の不正受給を見つけた際、会社はどのような対応をすべきなのでしょう。具体的には次のような対応が考えられます。

不正受給をした従業員に訓告もしくは戒告をする

不正受給をした従業員に対し、会社がまずとるべき対応は、不正受給が過失によるものか、故意に行われたものかを確認し、訓告もしくは戒告をすることです。
実家から会社に近い場所に引っ越して一人暮らしを始めた際、会社に申請するのを忘れ従前の定期をそのまま使っている場合は、過失の範囲といえるでしょう。しかし、実家と一人暮らしをしている場所で路線がまったく異なるにもかかわらず、従前の定期代を受給し続けていれば、故意の可能性が高いといえます。
どちらにしろ、まずは口頭もしくは文書で注意をする訓告、戒告処分が妥当です。

不正受給した金額の返還を求める

不正受給を行った従業員は、会社から不当に利益を受け取ったことになるため、民法703条、「不当利益の返還義務」により会社側から返還要求を行えます。
また、不正受給が故意で悪意があると判断される場合は、民法704条、「悪意の受益者の返還義務等」により、不正受給した金額に利息を付けたうえでの返還を求めることが可能です。

懲戒処分、告訴

何年にもわたって交通費や通勤費の不正受給をしていたり、不正受給額が高額だったりする場合は、訓告や戒告よりも重い懲戒処分の検討をします。処分内容は、会社の就業規則に沿った減給や停職などですが、懲戒解雇まで行う場合には注意が必要です。
不正受給の事実が確実であること、内容が非常に悪質であることを証明できないと、不当解雇として逆に提訴される場合もありえるからです。

不正受給が発覚した際に経理部門がやるべきことは?

不正受給を行った従業員に対する訓告や戒告、懲戒処分などは会社が行うべき対応であり、経理部門として何かをすることはありません。経理部門が対応するのは、不正受給分が返還された場合の経理処理です。
現金で返還された場合以外にも、賃金や退職金からの相殺といったケースもあるため、それぞれに対応した経理処理を行う必要があります。

交通費の不正受給を防ぐための方法とは?

交通費や通勤費の不正受給を防ぐために会社がやるべきことで重要な3点を紹介します。

1.就業規則の見直しと周知の徹底

明らかに故意で不正受給をしているケースだけでなく、知らないうちに不正受給をしていたケースもあります。就業規則に、どのような場合が不正受給にあたるかを明示し、不正受給した際の罰則についても明確に記載したうえで、従業員に向けて周知します。これを徹底するだけで、意図しないタイプの不正受給はほぼ防止できるでしょう。

2.領収書や定期券コピーの提出を求める

従業員が明らかに故意で不正受給をしていた場合であっても、会社側の管理が甘かったという理由で懲戒処分を免れてしまうケースも考えられます。会社側の管理の甘さにより処分が軽くなるのであれば、あとから同じ内容の不正受給をするケースが出ないとも限りません。

申請された経路が本当に合理的な経路であるかの確認、購入した定期券のコピーや出張で使った領収書の提出を求める、といった管理を徹底しましょう。

3.経費精算システムを導入する

経費精算システム導入が不正受給を防ぐ手段の1つとなります。というのも、経費精算システムの導入は、不正防止体制を整えることにつながるからです。デジタルデータが直接連携されるために日時や金額の改変ができないようになっており、万が一不正受給が頭をよぎったとしても、強固なシステムが実行を防止します。

不正受給を防ぎ経理業務の効率化を実現するポイント

経理部門としても、不正受給を防げれば、返還後の経理処理負担もなくなります。しかし、そのために領収書を1枚ずつ確認するのは手間もかかり、非効率でしょう。経費業務の負担が重すぎては対策の実行がおろそかになってしまう懸念があります。負担軽減のためにおすすめなのが、キャッシュレス決済とキャッシュレス決済に対応した経費精算システムの導入です。改変できない強固な経費精算システムは不正受給の芽を摘みますが、教務の効率化も実現します。
交通系ICカードや法人カードのデジタル明細を取り込める経費精算システムであれば、1枚ずつ領収書を確認する手間や定期券のコピーを求める手間がなくなります。また、交通費自動計算機能があれば、定期代の金額確認も不要です。
デジタル明細対応や交通費自動計算機能がある経費精算システムは、経理部門はもちろん、経路を確認する人事や総務部門の負担軽減も可能にします。

前章で挙げた、不正受給を防止するための3つの方法を実行していくことで、不正受給を防ぐだけではなく、経理業務も効率化できることでしょう。

交通費の不正受給防止は、就業規則の周知徹底とシステム活用がポイント

金額の大小にかかわらず、交通費や通勤費の不正受給はどこの会社であっても発生するリスクがあります。従業員にとっては悪気がなかったとしても、常態化してしまえば、会社にとっては大きな損失になりえるため、しっかりと防止策を講じなくてはなりません。
会社側としては、不正受給が起こりやすいパターンを把握し、それをもとに就業規則を見直します。そして、従業員に対し周知を徹底し、不正受給に対する罰則を理解させましょう。
経理部門としても、経費精算時の管理を徹底する必要があります。しかし、確認や見直しのフローが増えると経理部門の負担が重くなってしまうかもしれません。そのような場合は、デジタル明細対応や交通費自動計算機能がある経費精算システム導入を検討するとよいでしょう。不正受給の防止に効果があり、普段の経理業務にかかる負担も大幅に軽減します。

経理部門として不正受給対策や業務の効率化を検討している際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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