サイボウズとメルカリの財務・経理のリアル。話題の企業は バックオフィスも超クリエイティブだった【イベントリポート】

Yosuke Noda |

去る2018年5月23日、サイボウズ株式会社のオフィス(東京都中央区日本橋)にて、ミートアップイベント『【サイボウズ×メルカリ】財務・経理meet up』が開催されました。

その名の通り、サイボウズ株式会社と株式会社メルカリが共同で開催した、事業会社や監査法人などで財務・経理業務に携わる方々との交流を目的としたイベントです。

両社の財務・経理担当から
「普段なかなか社外に出ることがなく、他社の方との交流機会が少ない」
「他社での働き方や取り組みなどの情報交換をしてみたい」
「他社ではどんな人が財務・経理として活躍しているのか気になる」
などの声があがっていたことからイベントが実現し、50人を超える参加者が集まりました。

サイボウズから新井広大さん、田中那奈さん、メルカリから田村瞳さん、深貝晋平さんが参加したパネルディスカッション「語り合いたい! 財務・経理tips」の様子を抜粋してお届けします。

 

【パネリスト】

サイボウズ株式会社 新井広大氏
2013年4月、新卒入社。財務経理部に配属され、現在に至る。配属後は、費用/売上集計、原価計算、決算作業、子会社経理業務等を担当。

サイボウズ株式会社 田中那奈氏
新卒で三井ホーム株式会社に入社し住宅営業に従事。その後、経理へ異動し、単体・連結決算など一通り経験。2016年4月、サイボウズに入社。入社後は通常業務に加え、会計/開示システム入れ替え、株主総会イベントプロジェクトへの参加などを担当。

株式会社メルカリ 田村瞳氏
KLab株式会社で営業事務として3年半、その後サザビーリーグ株式会社にてジュエリー販売事業を手がける関連会社エーアンドエスの経理として債権管理業務をメインに担当。2017年1月、メルカリに入社。国内事業の経理処理を担当しながら経理周りのシステム改善等に従事。

株式会社メルカリ 深貝晋平氏
2011年12月にPwC税理士法人、金融部に入所。国内外の大手金融機関に対して、国際税務アドバイザリー業務を提供。同部およびM&A Taxチームのマネージャーとして、数多くのクロスボーダーM&A案件に従事。2017年、メルカリに入社。税務全般を担当。公認会計士・税理士。

【モデレーター】

株式会社メルカリ 久米聡氏
新卒でKDDIに入社し3年弱勤務。経理として固定資産管理や新規ビジネス(決済・EC・デジタルコンテンツ等)、国内モバイル事業(au)の会計処理を担当。2018年2月、メルカリに入社。国内事業の会計処理を担当。

 

プロダクトチームと一緒にものづくりをする経理

久米:最初に、自社の財務経理部の特徴について聞かせてください。

深貝:メルカリの経理は現在12人いて、全員がさまざまなバッググラウンドを持っています。若手もいればベテランもいて、ベンチャーや大企業、コンサルティングファームなど、働いてきた業界・業種が違うので、多様なナレッジを持っていて、得意分野もいろいろです。プロダクトチームのメンバーと一緒にプロダクトを作る感覚を持っているのも特徴ですね。


メルカリ深貝氏

久米:プロダクトを作る過程で、プロダクトチームと経理チームが、密にコミュニケーションをとるということでしょうか。

深貝:その通りです。たとえば、プロダクトのローンチ寸前、経理処理や税務周りの詰めが甘いことが発覚すると、後処理に余計なコストがかかってしまいます。そういうことにならないよう、プロダクトを立ち上げる際、経理から立ち上げのチームに1~2人入って、リアルタイムに議論に参加できるようにしています。

久米:エンジニアだけがプロダクトを作るのではなく、コーポレートのメンバーも最前線で並走しているわけですね。

深貝:そうですね、エンジニアが目指したい世界観を壊さないように気をつけながら、経理として考えた案を伝えるようにしています。基本的にコーポレートメンバーも事業の最前線(フロント)で走っているという意識ですね。そのため、メルカリではバックオフィスという言葉を使わず、いわゆる管理系の部門のことをコーポレート部門と呼んでます。


メルカリ 田村氏

田村:社内で密にコミュニケーションをはかって、スピード感を意識しているのも特徴かと思います。同じ場所でチームメンバーと意思疎通をしながら働くことを重視し、リモートワークをあまり推奨していない、という点はサイボウズさんと違うところですね。

田中:確かに。私は週1回在宅勤務をしています。子どものいる女性が多いサイボウズの経理では、週1で在宅だったり、時差出勤したりといろいろな働き方をする人がいます。でも、入社前は経理が在宅でできるイメージは正直なかったです。

久米:やってみていかがですか?

田中:エクセルとひたすら格闘するような業務だと、自宅でするほうが集中できるように感じています。
 

業務効率化に必要なアウトソース

久米:続いて、業務効率化に向けて、新たに取り組んでいることについてうかがいます。サイボウズさんは某世界的経費精算システムを導入されたそうですね。

新井:以前は自社製品のグループウェア「Garoon」上で経費精算をしてもらっていました。それをあえて他社製品に入れ替えるわけですから、社内に対し説明をするのが難しかったです。さらに、今は経費精算システムと会計システムをつなごうとしていて、それに奮闘中です(笑)。


サイボウズ 新井氏

田村:メルカリでは2017年8月から、経費精算周りの承認作業の一部を外注しています。具体的に言うと、ダブルチェックをする際の1回目のチェック作業を外部にお願いしているんです。業務委託先がイレギュラーな申請を発見したら、Slack(メルカリ社内で利用しているチャットツール)上で私たちに都度通知していただき、その場で解決して処理していくようにしています。

久米:社員数がすごい勢いで増えていますし、アウトソースは必要不可欠ですね。

田村:私自身、ちょうど1年半前に入社して、そこから現在まで社員が約2倍に増えており、ワークフロー申請件数の増加は顕著です。以前はそこを人海戦術でやってきましたが、外注することで、今後も社員数増加に耐えられるような効率化を進められていると思います。
 

システム導入で監査時間を400時間削減

田中:サイボウズも業務効率化する目的で、開示書類作成システム「X-Smart.」を導入しました。決算作業で作成したデータをそのまま取り込むだけで、四半期決算だと決算短信や四半期報告書が1日かからないくらいで作れるんです。以前はふたりがかりで対応していましたが、今はほぼひとりでできています。システム上のチェック機能がかなり充実しているため、人力のチェックはほぼ必要なく、ミスも減りかなり効率化されましたよ。

久米:監査法人とのやりとりはどうしていますか?

田中:自社製品「kintone」を使っています。すべての決算資料は「kintone」にアップロードし、監査法人と共有しています。同じところでサイボウズ側のタスク管理も行っているため、資料の提出漏れや遅れが減り、監査法人側も作業の進捗状況がリアルタイムで把握できるようになりました。この方式にしてから監査時間が年間400時間減りました。

久米:それはすごい!

田中:サイボウズに来ていただかなくても、先方の社内でいつでも確認できるので、場所と時間の制約がなくなったのは大きいですよね。


サイボウズ 田中氏(左)

久米:深貝さんには税務周りの効率化について、どんな取り組みをしているかうかがいたいです。

深貝:今意識しているのは、ある程度調査をし、方向性が見えてきた上で、顧問の税務アドバイザーにより精緻な分析や対応をお願いすること。効率も意識しながら、取り組んでいます。
 

共感を重視した採用なら、中途メンバーも一枚岩になれる

久米:最後は人事や評価についてのお話を。新井さんは新卒で経理に配属されて良かったなと思うことはありますか?

新井:例年20~30人新卒が入るので、私の同期も約20人いるんですね。営業やマーケティングなど各部に散っていきます。同期ネットワークを活かして、気になることがあれば、どの部署にも気軽に聞ける人がいるのはメリットかなと思います。

久米:一方で、他の皆さんは中途入社ですよね。

深貝:メルカリは今、急拡大・急成長フェーズです。そのぶん即戦力を重視しているため、中途入社の数が多いという面はありますね。中途で入る人が多いと、一般的には一体感が出ないのではないかと考える人もいるかと思いますが、ミッションやバリューへの共感を重視して採用されたメンバーなので、各自の背景が違ってもひとつになれている感覚はありますね。
 

「自分たちらしい経理」を考えて挑戦できる人

久米:会場から「経理は定量評価しづらい職種だが、適切な評価制度をどう考えているか」と質問をいただいています。これについては?


活発な質疑応答タイム

深貝:原則、OKR(Objectives and Key Results)という評価指標を元にしています。目標を立てて、その達成に必要な要素を3~4つの成果指標に分解し、進捗を見ていくというものです。四半期に一度、上長と話し合って立てた目標の到達度合いが、ひとつの評価指標になっています。

また、各自の行動がメルカリが掲げる3つのバリュー(Go Bold 大胆にやろう、All for One 全ては成功のために、 Be Professional プロフェッショナルであれ)に即しているかも同じくらい重要です。定量的なゴールに向かう過程で、バリューに沿って行動できていたか、例えば「大胆にやれていたか」といったことも見られるわけですね。

久米:最後に、会社が求める人材について教えてください。

田村:一言で言うと、「メルカリらしい経理ってなんだろう?」と考えながら仕事できる方。事業のスピード感が速い分、新規事業や社員向けの施策がどんどん生まれていきます。そういった情報を自ら見つけてすくいあげながら、実践をもってマニュアルを作るところまで落とし込める力は必要ですね。逆に既存のマニュアルに沿って動きたい、という方は難しいかもしれません。

田中:サイボウズもメルカリさんと近いところがあると思います。経理にもクリエイティブな業務にチャレンジする姿勢は求められます。新しいものを生み出したり、周りを巻き込んで進めていったりするのが得意な人がぴったりです。

 

執筆:池田園子 / 撮影・企画編集:野田洋輔