【イベントレポート】 セゾン情報システムズの見える化、データ活用を通じた働き方改革への挑戦

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2019年3月13日、コンカー本社のセミナールームにて『「見える化」で実現! 本当の働き方改革とは?』と題したイベントを開催しました。

2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行されています。多くの企業が残業時間の削減や有休消化の効率化に取り組んでいますが、ITツールを活用した業務の効率化や生産性の向上を図っている企業は多くありません。イベントでは、IT導入により社内の組織風土を変えて働き方改革を進めているセゾン情報システムズ様が自社での取り組みを紹介しました。今回は、そのレポートの前半として、「セゾン情報システムズの見える化、データ活用を通じた働き方改革への挑戦」をお届けします。

「風通しの悪い」体質で負のスパイラルを経験したセゾン情報システムズの挑戦

まず、セゾン情報システムズ 流通ITサービス事業部 蔵朋樹氏が登壇し、「働き方改革、本当にやれてますか? Concur、Tableauで見えてきた当社の働き方改革の事例をご紹介!」と題して自社での取り組みと導入したITツールの有効性などを紹介しました。

セゾン情報システムズは、Fintechプラットフォーム事業、流通ITサービス事業、ファイル連携ミドルウェア「HULFT」事業の3分野を事業の柱としています。同社では2年前から働き方改革を推進しています。

【写真1】セゾン情報システムズの蔵朋樹氏

蔵氏によると、2016年に起きた開発遅延による損害賠償事件を契機として、全社的な改革が始まったとのことです。「従業員のあるべき姿として、各々が自発的に考え、行動することが求められたが、目の前の仕事がいっぱいで先のことまで考える余裕がなかった」と当時を振り返ります。

その状況を生み出した背景として、経営層のメッセージが一般の従業員に伝わらなかったり、逆に従業員が思っていることが経営層に伝わらないという「風通しの悪い」体質や、自由な発想が生まれない、「やらされ感」という負のスパイラルに陥っていたと分析しました。「イノベーションを生む風土や文化に変えたい」という思いから、全社を挙げた変革を進めることになります。

中でも、「ビジネス変化に耐えうるIT基盤」「経営の見える化」「低生産性業務の改革」「組織風土の刷新」の4点が特に見直すべき課題として浮き彫りとなりました。セゾン情報システムズでは、それぞれの課題についてITツール活用による解決を進めています。

最新のクラウドサービスを活用するIT基盤と業務自動化の仕組みを構築

これまで同社のIT基盤は、既存ERPが乱立して維持コストが肥大化していました。また属人的な運用に加えて、システム改修に莫大な費用が掛かるためアップデートの実施が困難な状況でした。そこでセゾン情報システムズでは既存ERPはそのままにして、機能として足りない部分を「Concur」や「Tableau」、「Kintone」「Office365」など新しいクラウドサービスで補う方針を決めます。

【スライド画像1】社内ITの活性化(出典:講演資料)

既存ERPとの接続については、自社のデータ連携プラットフォーム「DataSpide Servista」(以下、DataSpider)を活用。ノンプログラミングで連携処理を開発できるDataSpiderによって、Java開発では1万4000ステップのコーディングが必要となる部分をわずか13個のアイコンで実装しました。その結果、データベースやクラウドサービスなど様々なデータリソースとの連携が容易となり、運用保守も簡素化されて属人化しにくくなりました。

セルフBIツール「Tableau」活用で、リスクの可視化と迅速な経営判断が可能に

セゾン情報システムズでは、月2回開催される経営会議での報告書について、3つの事業部が「Microsoft Excel」(以下、Excel)を用い、それぞれ独自のフォーマットで作成していました。しかし、Excelベースの数字を羅列した報告書ではビジネスの状況が即座に分からず、「受注計画が達成できるか」「受注活動の状況やプロジェクトの進捗などが把握しづらい」という状況になっていました。また、経営層の質問にその場で答えることができずに次回の経営会議に持ち越すことが続き、迅速な経営判断ができないというジレンマを抱えていました。

その改善策として、同社はセルフサービス型BIツールであるTableauを導入し、「受注活動の見える化」を目指すことになりました。受注前の工程においては、計画と現状のギャップを把握し、受注前の段階で「ギャップを可視化し、適切な活動につなげています。また、受注後の工程では、受注後のプロジェクト状況を把握し、リスクを早期発見する「原価管理の見える化」やプロジェクトに関わるメンバーの勤務時間を把握して適正化する「労務管理の見える化」を図っています。

また、経営会議中に出された質問に対しても、Tableauならではの操作性を生かし、その場でダッシュボードを操作し、求められた回答まで辿り着くことができるようになり、迅速な経営判断を実現しています。

【スライド画像2】Tableauの管理画面例(出典:講演資料)

「Concur」の活用で間接業務プロセスの生産性効率を高める

セゾン情報システムズでは、2005年から約8年の間、自社開発のオンプレミスシステム「立替精算・仕入請求処理システム」を運用していました。同システムで申請・承認を行っておりましたが、紙ベースでの申請書を受領後、紙とシステムの照合後に承認を行っておりました。そのため、経理部門ではその処理作業に忙殺されていました。

また、クライアント/サーバ型を採用していたため、社内でしか処理ができないという使いづらさもあり、「システム改修には莫大な費用が掛かるため、“使いづらいシステム”を使い続けていました」(蔵氏)。その解決策として、同社では「Concur」を採用、経費精算にはConcur Expense、請求書管理にはConcur Invoiceを導入することを決定しました。

クラウド型間接費管理サービスであるConcurによって、紙ベースでの確認・承認プロセスが削減され「業務プロセスの削減」ができ、場所を問わず申請・承認が可能になったことで「モバイルワーク/在宅勤務の環境」を構築することができました。

蔵氏は「例えば、交通費精算が大幅に効率化されました。これまでは通路検索サイトで毎回検索してその金額を転記していましたが、現在はConcur内で検索できることで手間や時間が削減されました」と語りました。

また、「毎月平均124時間かかっていた経理部門の請求書処理時間が、1年後には75時間となるなど約39.5%の作業量が減少しています。さらにその翌年には50%以下まで作業量を減少することができました」と具体的な導入効果を紹介しました。

さらに蔵氏は、Concurの導入は経理処理時間の削減だけにとどまっていないと説明します。「作業時間が大幅に減ったことで“結果処理業務”から、会社への売り上げ貢献にもつなげられる“戦略的業務”へのシフトが図られました」といいます。

具体的には、子会社経理業務のシェアードサービス化によるグループ内業務の効率化、メンバー教育(外部研修)への参加や改善活動などメンバースキルの向上につなげているとのことです。

【スライド画像3】Concur導入の効果(出典:講演資料)

風通しの良いコミュニケーション可能な環境構築にも注力

セゾン情報システムズは2017年11月にオフィスを移転しました。蔵氏は、これも働き方改革の一環だと説明します。以前のオフィスは、やはり2つのビル、さらにそれぞれ3フロアに分散していたため、旧オフィスでは社員間の交流や、部署間のコミュニケーションが閉塞気味だった。
新オフィスでは執務室がフリーアドレス制となり、開放的なミーティングスペースやカフェなどレイアウトに工夫を施しています。蔵氏は「閉鎖的な部門関係や序列化した上下関係がつくりだす声をかけづらい雰囲気を解消することで、役職や部門に関係なく自由闊達なコミュニケーションを可能にしています」と語ります。

加えて、「Office365」を軸として「Skype」や「Slack」を採用し、場所と時間を選ばないコミュニケーション環境を構築しています。また、「Amazon Alexa」を活用した音声認識による、クイックマッサージの自動受付対応などの施策は、障がいをもつ社員が自立的かつ主体的に働くことができる環境を提供しています。

ITツールの積極的活用が働き方改革を加速させる

セゾン情報システムズでは、これらの施策によって働き方改革を推進してきました。その結果、一人当たりの平均残業時間が10%減少し、有給取得日数が16%増加しています。また、業務削減数が78件となり、業務削減効果時間が月当たり416時間も減少させています。さらに、Concur導入により書類保管量が55%削減するなど多くの成果を上げています。

【スライド画像4】働き方改革の取り組みの効果(出典:講演資料)

蔵氏は「ITツールの積極的な活用は、働き方改革を加速させることができます。当社では、変化に適用する“バイモーダル”な組織風土への自己変革を実現しています」と語り、講演を締めくくりました。

イベントレポート後半:「見える化」で実現!働き方改革を支えるクラウドサービスとは?

統計データから見る日本のサラリーマンと「経費精算」の関係

生涯で経費精算業務に〇〇日を浪費?働き方改革を阻害する経費精算の実態にデータで迫ります