経理・総務の豆知識
源泉徴収が必要な請求書とは?経理が5ステップで判定する方法
個人に対して一定の報酬・料金を支払う際に受け取る請求書には、源泉徴収が必要になります。経理担当者は請求書を受け取った段階から支払先の区分や業務内容を確認し、支払時までに要否を判断します。判定のポイントは次の4点です。
- 内国法人への通常の報酬・料金の支払いなら原則として源泉徴収は不要で、個人への一定の報酬・料金が対象になります。
- 原稿料や講演料、弁護士や税理士などの資格者への報酬、通訳料や外交員の報酬などが代表的な対象です。
- 請求書に源泉徴収税額の記載がなくても、支払う側が計算して差し引きます。原稿料・講演料など一定の報酬では、100万円以下は10.21%、100万円超は(支払金額-100万円)×20.42%+102,100円で計算します。
- 納付は原則として支払った月の翌月10日までで、納期の特例を受けていても特例対象の士業報酬等以外は毎月の納付になります。
Q&A
Q. 源泉徴収が必要な請求書とは、どのような請求書ですか?
A. 個人に一定の報酬・料金を支払う際に受け取る請求書です。支払先の区分と業務内容を確認し、源泉徴収の要否を判断します。
源泉徴収が必要な請求書とは
源泉徴収と請求書の関係
源泉徴収が必要な請求書とは、会社が個人に対して一定の報酬・料金を支払う場面で受け取る請求書のことです。
会社が個人に一定の報酬や料金を支払う場合、支払う側が所得税および復興特別所得税を差し引いて国へ納付しなければならないことがあり、これを「報酬・料金等の源泉徴収」と呼びます。実務では、どの支払いが対象なのか分からない、あるいは請求書を受け取っても源泉徴収が必要か判断できないと悩む場面も少なくありません(参照*1)。
源泉所得税は、給与や報酬などを支払う事業者が本人に代わって納める所得税です。このように支払者が納税者本人に代わって所得税を納付する仕組みを源泉徴収制度といい、対象となる給与や報酬を支払う事業主は「源泉徴収義務者」に該当します。対象となる所得の範囲は、支払いを受ける人の居住地や、個人・法人の区分によって異なります(参照*2)。
対象となる報酬・料金の範囲
源泉徴収の対象となる報酬・料金には、原稿料や講演料、特定の資格を持つ人への報酬などがあります。
源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲は、支払いを受ける側が居住者か内国法人かによって異なります。居住者への支払いで対象となる代表例は、原稿料や講演料などです。
ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等は、1人に対して1回に支払う金額が50,000円以下であれば源泉徴収を行う必要はありません。また、弁護士、公認会計士、司法書士といった特定の資格を持つ人へ支払う報酬・料金も対象です(参照*3)。
請求書で確認すべき記載項目
請求書をチェックする際は、支払先の区分と業務内容に加え、報酬額と消費税等の区分表示、源泉徴収税額の記載の有無を確認します。
請求書に源泉徴収税額の記載がある場合でも、支払う側が対象範囲と正しい税額を確認・計算します。その税額を差し引いて支払先に送金し、差し引いた税額は別途税務署へ納付します。
原稿料・講演料など一定の報酬・料金に対する源泉所得税は、1回の支払金額が100万円以下であれば支払金額に10.21%を乗じて算出します。受け取った請求書で報酬・料金の本体額と消費税等の額が明確に区分されていれば、その報酬・料金の本体額のみを源泉徴収の対象とすることが可能です(参照*4)。
経理が5ステップで判定する方法
支払先が個人か法人かの確認
最初のステップは、請求書を発行した相手が個人か法人かを確認することです。
実務上の判定手順における第1段階として、まず取引先が個人であるかを確かめます。内国法人への通常の報酬・料金の支払いであれば原則として源泉徴収は不要なため、請求金額をそのまま全額支払います。個人宛てである場合は、第2段階となる業務内容の確認へ進みます(参照*1)。
ただし、支払いを受ける側が内国法人であっても対象となるケースが存在します。例えば、馬主である法人に対して支払う競馬の賞金などが挙げられます(参照*3)。そのため、法人への支払いが無条件で一律に対象外となるわけではない点に注意が必要です。
業務内容が対象報酬かの確認
第2段階では、請求書に記載された業務内容が源泉徴収の対象となる報酬に該当するかどうかを確かめます。
- 原稿料、雑誌・広告等に掲載する写真の撮影料、Webやパンフレットなどのデザイン料、イラスト代、翻訳料といったクリエイティブ関連
- 税理士、公認会計士、社会保険労務士、弁護士、弁理士、司法書士など専門家への報酬
- セミナー・研修の講師謝礼、通訳料などの教育・社内イベント関連
- 芸能人やモデルの出演料、プロスポーツ選手の契約金、外交員の報酬など
請求書の名目だけで機械的に判断しないことも重要です。謝礼、研究費、取材費、車代などの名目で支払われていても、実態が報酬・料金等と同じであれば源泉徴収の対象となります。一方で、支払者が交通機関やホテル、旅館などへ直接、通常必要な範囲の交通費や宿泊費を支払った場合には、報酬・料金等に含めなくてもよい取り扱いとなっています(参照*3)。
請求書の源泉徴収税額の記載確認
第3段階は、請求書に源泉徴収税額があらかじめ記載されているかどうかの確認です。
記載がある場合もない場合も、支払者側で対象範囲と税額を確認・計算し、正しい税額を差し引いて支払い、源泉税を別途税務署へ納付します。請求書に税額が記載されていることを理由に、計算の確認を省略しないようにします(参照*5)。
源泉徴収税額の計算
第4段階では報酬の種類に応じて計算します。原稿料・講演料など一定の報酬では、支払金額が100万円以下か100万円超かによって計算式が分かれます。
原稿料・講演料などの源泉徴収税額は、支払金額を基準として算出します。対象となる支払金額をAと置いた場合、100万円以下の金額に対しては「A×10.21%」を用います。100万円を超える場合は「(A-100万円)×20.42%+102,100円」で計算し、算出した税額に1円未満の端数が生じたときは切り捨てます(参照*6)。
100万円を超える支払いの具体例として、弁護士報酬150万円を支払うケースが挙げられます。この場合、「(150万円-100万円)×20.42%+102,100円=204,200円」となり、源泉徴収すべき税額は204,200円となります(参照*7)。
納期限の確認
最後のステップは、差し引いた源泉所得税をいつまでに納めるかの確認です。
弁護士や税理士などに支払った報酬・料金から源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。納付手続きは、所得税徴収高計算書のデータをe-Taxで送信してキャッシュレス納付を行うか、納付書を添えて金融機関や所轄税務署の窓口で納付します。なお、支払者が「納期の特例」の適用を受けている場合、1月から6月までに支払った分は7月10日、7月から12月までに支払った分は翌年1月20日が納付期限となります(参照*7)。
ただし、納期の特例には対象外となる報酬もあります。特例の承認を受けている事業所であっても、税理士や弁護士等以外の報酬・料金は原則どおり毎月納付しなければなりません。納付漏れや遅延があると不納付加算税や延滞税が課されるリスクがあります(参照*1)。
例えば、外交員等へ支払う報酬・料金も納期の特例の対象外となっています(参照*8)。
計算時に間違えやすい論点
消費税等の区分表示と対象額の違い
源泉徴収の対象額は、請求書上で報酬額と消費税等が明確に区分されているかどうかで異なります。
対象となる金額は、原則として報酬・料金として支払った全額、つまり消費税および地方消費税(消費税等)を含んだ税込金額です。ただし、弁護士や税理士などからの請求書で報酬本体の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、消費税等を除いた税抜金額のみを源泉徴収の対象としても差し支えありません(参照*9)。
具体例を挙げると違いがよく分かります。令和8年1月に税理士からの請求書に「税理士報酬110,000円」とだけ記載されていた場合、源泉徴収税額は110,000円の10.21%にあたる11,231円(1円未満切り捨て)です。これに対して、「税理士報酬100,000円、消費税等10,000円」と内訳が区分して記載されていれば、源泉徴収税額は100,000円の10.21%である10,210円となります(参照*9)。
なお、消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式(インボイス制度)の導入後も、この計算の取り扱いに変更はありません(参照*7)。
司法書士等・外交員等の計算の違い
司法書士や外交員等への支払いでは、規定の控除額を差し引いてから税率を乗じて算出します。
司法書士等への報酬については、同一人に対して1回に支払う金額から10,000円を差し引いた残額に10.21%の税率を乗じます。算出された税額に1円未満の端数があれば切り捨てます。例えば、1件の委託契約で50,000円を支払う場合の税額は、「(5万円-1万円)×10.21%=4,084円」となります(参照*10)。
外交員等の場合は控除額の算出基準が異なります。報酬・料金の額から1か月あたり12万円(同一月内に給与等を支給する場合は、12万円からその給与支給額を控除した残額)を差し引いた額に10.21%を乗じ、1円未満の端数を切り捨てます。月々の報酬・料金として20万円を支払う場合、計算式は「(20万円-12万円)×10.21%=8,168円」となります(参照*8)。
非居住者等への支払いの注意点
支払先が非居住者や外国法人の場合は、国内源泉所得として通常とは異なる税率が適用されることがあります。
非居住者や外国法人(非居住者等)に対し、国内で源泉徴収対象となる国内源泉所得を支払う事業者は、支払いの際に原則として所得税および復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税)を徴収しなければなりません。適用される税率は、人的役務提供事業の対価や不動産の賃貸料等で20.42%となっています。ただし、不動産の賃貸料であっても、個人が自分や親族の居住用として借りている物件の賃料を支払う場合は、源泉徴収は不要とされています(参照*11)。
実務上の見落とし例として、不動産管理会社を通じてオフィスの賃料を支払っていたところ、実際の貸主が非居住者等であったため源泉徴収が漏れていた、というケースが税務調査などで指摘されることがあります。賃貸借契約書(貸主の変更があった場合は覚書や通知書等)の貸主欄を確認し、非居住者等に該当する可能性がある場合は、あらかじめ管理会社に源泉徴収の要否を問い合わせるなどの対応が必要です(参照*12)。
おわりに
源泉徴収が必要かどうかは、請求書を受け取った段階で確認を始め、支払時までに判断します。支払先の区分や業務内容、支払者自身の源泉徴収義務を確かめ、対象となる場合は請求書への税額記載の有無にかかわらず自社で税額を確認・計算し、納期限を管理します。
原稿料・講演料など一定の報酬・料金の計算では、100万円以下なら10.21%、100万円超なら「(支払金額-100万円)×20.42%+102,100円」を適用します。
請求書の確認時に読み取る例外規定は、次の3点です。
- 請求書内で報酬額と消費税等が明確に区分されていれば、税抜本体額のみを計算対象にできます。
- 司法書士・外交員等には固有の控除額が設けられています。
- 非居住者等への支払いでは、国内源泉所得の種類に応じた税率が適用されます。
参照
- (*1) 報酬・料金等の源泉徴収の実務
- (*2) 千代田税理士法人 – 源泉所得税と所得税の違いとは?計算方法や手続きの流れについて解説
- (*3) No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは
- (*4) 税理士法人コンタックス – 源泉所得税チェックポイント
- (*5) No.2793 報酬・料金等の源泉徴収義務者
- (*6) No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき
- (*7) No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金
- (*8) No.2804 外交員等に支払う報酬・料金
- (*9) No.6929 消費税等と源泉所得税および復興特別所得税
- (*10) No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金
- (*11) No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率
- (*12) 税理士法人FP総合研究所 – 【No536】非居住者等に対する源泉徴収について