出張・経費管理トレンド

円の為替変動が経費精算・経費管理に与える影響と対策

SAP Concur Japan |

はじめに

円の為替変動、特に円安の進行は、海外出張費や外貨建てサービスの円換算額を押し上げるだけでなく、経費精算や経費管理も複雑にします。本記事では、為替変動が経費管理に与える影響と、企業が取るべき対策を解説します。

  • 円安が進むと同じ外貨支出でも円換算コストが増加します。
  • 予算超過や追加承認など、精算業務そのものの負担も増えます。
  • 海外出張費に加え、海外SaaSやクラウド費用にも影響が及びます。
  • 要因分解分析と経費管理システムの活用が対応の鍵になります。

円の為替変動の現状と企業への波及

想定為替レートと実勢レートの乖離

企業が事業計画で用いる想定為替レートは、近年の円安を受けて上方修正が進んでいます。

帝国データバンクによると、2026年度の企業の想定為替レートは平均1ドル147円87銭となり、前年5月時点の139円64銭から8円23銭の円安水準へと切り上がりました。分布では156〜160円を想定する企業が33.6%で最も多く、146〜150円が18.8%、151〜155円が16.5%と続き、約7割の企業が146〜160円の範囲で想定を置いています(参照*1)。

同調査では、2017年以降は実勢レートと想定レートに大きな差はなかったものの、2021年後半から2025年度にかけて実勢レートが想定レートより大幅な円安水準で推移し、2026年4月以降の実勢レートは160円前後で、依然として10円以上の乖離が生じていることも示されました(参照*1)。

この乖離は、期初に組んだ円建て予算のままでは外貨建て支出を吸収しきれない状況を意味します。企業は想定レートの前提を定期的に見直し、乖離幅を経費管理の指標として扱う必要があります。

円安が経費管理に及ぶ理由

円安局面では、外貨建ての支出を円換算した際の金額が膨らみ、経費管理業務の全域に影響が及びます。

経済産業省の海外事業活動基本調査では、対米レートが前回調査の140.49円から今回151.37円へと7.7%の円安、対ユーロも152.71円から164.53円へと7.7%の円安になったことが示されました(参照*2)。

帝国データバンクでは、2026年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料として物価上昇が45.8%で最多となり、人手不足44.5%、原油・素材価格35.9%に続き、為替(円安)が30.4%で上位に挙がりました(参照*3)。

円安への懸念が示されており、海外出張費や外貨建てサービスに加え、購買や請求書処理を含む経費管理全体で影響を捉える視点が必要になります。

海外出張費に与える影響

円安による円換算コストの増加

為替変動の影響が最も分かりやすく表れるのが海外出張費です。

例えば米国出張で社員が合計1,700ドルを使用した場合、1ドル140円では日本円換算で23万8,000円となる一方、1ドル160円では27万2,000円となり、同じ1,700ドルでも3万4,000円、約14.3%の増加となります。年間100人が同様の条件で出張すれば、単純計算で340万円の追加負担が生じ、出張件数の多い企業ほど累積の影響が大きくなります。

GBTAでは、1出張あたりの平均支出は834ドルから1,128ドルへと上昇したことが報告されました(参照*4)。ドル建ての単価上昇と円安が重なると、円換算の負担はさらに膨らみます。企業は外貨建ての単価上昇と為替影響を分けて把握することが求められます。

出張規定と実態の乖離

円安と物価上昇が続く中で、出張規定と現場の実態との差が拡大しています。

コンカーは、円安やインバウンド需要の拡大により、宿泊費や移動費を中心に出張コストが大きく上昇したと発表しました。出張管理者と出張者の双方から「出張規定の金額では出張が成立しない」との声が寄せられています。具体的には、宿泊費の上限が実態に合わず規定内価格に収まる遠方に泊まらざるを得ない、外食費が高く日当ではランチ一食しか賄えないといった状況です。

同調査では、国内外の出張の約半数が会社の推奨外の手段で手配されており、出張管理の形骸化が示されました。管理者に自社の出張管理の改善余地を尋ねた設問では、国内出張で81.0%、海外出張で85.3%が改善の余地があると回答しています。

規定の金額水準と実勢コストの差は、社員の自己手配や規定違反を招く要因になります。企業は規定金額と実費のギャップを継続的に見直す運用が必要です。

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日当・宿泊費への波及

日当や宿泊費の上限を円建てで固定している場合、円安局面では現地での購買力が低下します。

一日15,000円のように円建てで固定している日当は、円安が進むほど現地通貨に換算した際の使える金額が目減りし、食事や交通費の実態を賄いにくくなります。実費精算に切り替えると、現地通貨での支出を一件ずつ確認・換算する必要があり、精算業務の負荷が増します。

コンカーは、出張者が負担に感じる項目として、経費処理の手間が国内出張で31.0%、海外出張で33.3%、交通手段・ホテルの手配が国内29.7%、海外34.0%だったと発表しました。

固定額の簡便さと実費精算の正確さのバランスをどう取るかが、日当・宿泊費運用の焦点となります。

経費精算処理の複雑化と予算乖離

為替レート選択の課題

外貨経費を円換算する際、どのレートを採用するかが精算処理を複雑にします。

実務では、クレジットカードの実際の決済レート、領収書の日付のレート、経費利用日のレート、月次平均レート、会社が定めた固定換算レートといった複数の選択肢があります。これらのレートが異なると、社員が申請した金額、カードの請求額、経理上の計上額の間に差額が発生します。海外利用手数料が加わると、実際の決済額と社内換算額の差はさらに広がります。

経済産業省の海外事業活動基本調査では、現地法人集計項目の通貨単位を原則百万円としつつ、現地通貨から日本円への換算はIMF公表の期中平均レートを用い、国別通貨換算表に記載がない国は各社の社内レートを使用する取り扱いが示されました(参照*2)。どのレートが唯一の正解というわけではなく、企業ごとの会計方針としての選択が求められます。

予算超過と追加承認業務

為替変動は仮払いや予算管理にも影響し、追加承認などの業務量を押し上げます。

1回の海外出張に30万円の予算を設定していた場合、1ドル140円なら約2,143ドル分を使えますが、1ドル160円になると約1,875ドル分に減ります。円建て予算が同額でも現地で使える金額が縮み、予算超過、追加申請、上長承認、経理処理の一連の業務が増える可能性があります。

帝国データバンクの意識調査では、景気の悪化局面と見る割合が大企業12.8%、中小企業18.2%に対し、小規模企業は21.8%と、規模が小さいほど厳しく捉える結果が示されました(参照*3)。予算余力の小さい企業ほど、追加対応の負荷が経営に響きやすい構図です。

海外SaaS・サブスクリプションへの影響

為替変動の影響は海外出張だけでなく、外貨建てで契約する各種サービスにも及びます。

対象となる支出は幅広く、代表的なものは次のとおりです。

  • SaaS・クラウドサービス・ソフトウェアライセンス
  • オンライン広告や海外メディア掲載費
  • 海外コンサルティングや海外イベント参加費
  • その他の海外サブスクリプション

例えば年間10万ドルのサービスを利用している場合、1ドル140円なら1,400万円、1ドル160円なら1,600万円となり、為替だけで年間200万円の差が生じます。帝国データバンクでは、輸入を行う企業の想定レートは151円89銭で、輸出企業を1円35銭上回る円安水準となり、直接輸入のみを行う企業は152円38銭と、直接輸出のみの企業の144円24銭より8円14銭の円安を織り込んでいることが示されました(参照*1)。

経済産業省でも、対米レートは前回140.49円から151.37円へ7.7%、対ユーロも152.71円から164.53円へ7.7%の円安となりました(参照*2)。

外貨建てコストはT&E以外の購買や請求書管理にも及ぶため、部門横断で契約金額と円換算額の推移を可視化する運用が欠かせません。

経費データ分析への影響

為替変動が大きい環境では、経費の前年比較や増減要因の把握が難しくなります。

例えば海外出張費が前年比20%増となっても、その内訳は出張件数の増加、現地物価の上昇、為替レートの変化などが混在しています。GBTAの調査では、1出張あたりの平均支出が834ドルから1,128ドルへ上昇したことが示されており、ドル建ての単価そのものが上昇していることが分かります(参照*4)。

帝国データバンクでも、2026年の懸念材料として物価上昇が45.8%で最多となり、為替(円安)が30.4%で上位に並ぶ結果となりました(参照*3)。

さらに経済産業省では、対米レートも対ユーロレートも同じ7.7%の円安ながら、水準そのものは通貨ごとに大きく異なることが確認されました(参照*2)。

企業は総額の増減を追うだけでなく、利用量・現地単価・為替の3要因に分解し、通貨別・地域別・部門別に把握する分析設計が必要です。

為替変動に備える経費管理の対策

経費管理システムに求める機能

為替変動が大きい環境では、経費管理システムに求められる機能もより高度なものへ広がります。

具体的には、次の機能が挙げられます。

  • 外貨経費の自動換算と適切な為替レートの自動取得
  • クレジットカードの実決済額との照合と為替差額の管理
  • 海外出張の予算と実績の比較
  • 国・部門・社員別の経費分析
  • 為替要因と利用量の増加を分けた分析

GBTAでは、経費システムの利用は67%、コーポレートカードの利用可能率は69%で、北米では73%に達するとされ、モバイル決済やカード連携の利用状況が示されました(参照*4)。

これらの機能を組み合わせることで、経費精算を事後処理にとどめず、予算管理や経営分析へ活用できるデータ基盤へと位置づけ直せます。

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SAP Concurによる支援

コンカーは、外貨換算や為替を含む経費管理の課題解決も支援しています。出張管理の実務に関する知見を生かし、コスト管理、社員の出張体験の向上、安全配慮を両立することが可能です。

事例;三桜工業株式会社
1939年創業で、自動車の各種配管や熱交換製品など重要安全保安部品を中心に製造する独立系サプライヤーです。2018年よりConcur ExpenseやConcur Travelを利用し、経理業務の効率化に加え、コロナ禍後の事業環境変化への対応、税務や経理ガバナンスの向上を果たしました。同社では法人カードとの連携やAI-OCR機能により出張者の精算負荷が軽減され、定性的な情報と定量的な情報を統合した分析によって税務ガバナンスの改善にもつなげています(参照*6)。

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このように、Concur TravelとConcur Expenseを組み合わせると、出張予約を経費レポートへ反映し、出張・経費データを一元的に把握できます(参照*8)。外貨換算やカード連携、分析機能を統合した基盤は、為替変動下でも経費管理の精度と業務効率を両立させる有力な選択肢になるのです。

また、日本銀行は、2026年7月の展望レポートで、為替相場の変動が経済・物価に及ぼす影響に注意が必要だとしています。経費管理でも、為替を一時的な差額ではなく、継続して確認する変動要因として扱う必要があります(参照*7)。

おわりに

円の為替変動は、海外出張費や外貨建てサービスの円換算額を押し上げるだけでなく、レート選択、予算乖離、追加承認、要因分解分析といった経費管理業務の全域に影響を及ぼします。想定レートと実勢レートの乖離が続く環境では、単に領収書を正しく精算するだけでは不十分です。

経費精算・予算管理・データ分析を一つの流れとして統合し、外貨換算やカード決済との照合を自動化する仕組みの重要性が高まっています。自社の運用と利用できるデータを見直し、為替変動に対応できる経費管理を検討する必要があります。

参照

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