出張・経費管理トレンド
AI 時代の財務スキル:今、財務部門に求められるスキルとは?
成長の加速、変革の推進、戦略の立案など、現代の財務リーダーが担うべき責務は増え続けています。そして、これらは氷山の一角に過ぎません。リーダーがこうした責務を果たし、組織のニーズに応えるためには、あえて基本に立ち返り、ファイナンススキルの地力を鍛え直すことが求められています。
私たちは世界中の CFO に対し、時代の要請に応え、将来の変化に強いリーダーとして不可欠な企業財務スキルとは何かを尋ねました。彼らの知見と意見を集約した、ファイナンススキルのセットおよびキャリア開発プランの主な内容は以下のとおりです。
- 機敏性と成長マインドセットを醸成する
- 戦略的先見性を養い、データリーダーシップを確立する
- デジタルおよび人工知能 (AI) の活用能力を習得する
- チェンジマネジメント能力を強化する
- コミュニケーション能力とコラボレーション力を高める
どの財務リーダーも、ビジネスの成功に不可欠なチームの一員でもあります。チーム全体のスキルアップなくして、真の成功はあり得ません。そのため、将来に向けたチームの財務スキル開発に関する提言や、現在進行形の人材不足を解消するための戦略についても、併せてまとめています。
CFO インサイト:Building a Future-Ready Finance Skill Set(将来を見据えた財務スキルセットの構築)
世界中の CFO たちが経済の不透明感に立ち向かい、成長を牽引するために不可欠だと考える主要なスキルについて探ります。
財務リーダーはいかにして機敏性と成長マインドセットを醸成できるのか
財務リーダーが数字だけに専念し、後手に回った対応をしていればよかった時代は過去のものです。今や組織は、財務の枠を超えてビジネス全体を把握することを財務リーダーに期待しています。彼らは課題を未然に察知し、その問題がビジネスに与える影響を説明し、戦略や成長を導くとともに、他の経営幹部も同様の動きができるよう備えを固めなければなりません。SAP Concur の CFO であるビクター・ドミンゴス (Victor Domingos) は次のように述べています。「経営幹部を目指すのであれば、成長マインドセットを備えていることが必須です」
機敏性と成長マインドセットを身につけるためのステップ
- 過去の決断を振り返って教訓を導き出すとともに、他部署のリーダーや熟練者の業務に同行して現場を学んだり、ポッドキャストや書籍、ウェビナーを活用したりして、財務の枠を超えて視野を広げる時間を確保する。
- 部門横断的なプロジェクトにアドバイザーとして参画し、各事業チームがプロジェクトや新しい試みから得た教訓を共有できる場を設ける。これらはいずれも、財務リーダー自らが成長マインドセットを体現し、周囲に示す絶好の機会となる。
- 市場投入までの時間や製品のリードタイムなどの成功指標を用いて、機敏性とそれがビジネスに与える影響をあわせて可視化する。
財務リーダーはいかにして戦略的先見性とデータリーダーシップを養うべきか
近年の経済的な不安定さは常態化しており、財務リーダーにはリスクやビジネスチャンスの到来をいち早く察知し、迅速に行動することが期待されています。そのため、シナリオプランニングやシミュレーションなど、先見性とスピードを向上させる経営財務スキルを強化しなければなりません。また、財務リーダーは、刻々と変化するデータを組織全体の意思決定に役立つ実効的なインサイトへと変換するとともに、その使命を果たすための AI を含むツールやトレーニングをチームに提供する必要があります。
より戦略的でデータに基づいた、先見性のあるリーダーになるための方法
- 業界にとって極めて重要な数個のトレンド指標を追跡し、KPI やレポートツールを標準化するとともに、予算、キャッシュフロー、および経費を管理するための標準ダッシュボードを導入する。
- 毎年の計画を立てる際、複数の予測パターンをあらかじめ用意し、AI を使いこなして予測精度を高めるようチームを育成する。その上で、多角的なシミュレーションを通じて、大きな経営判断に間違いがないかテストする。
- 経営会議の議題に必ず「将来予測」の時間を設け、戦略先読みチームが描いた未来図を組織の戦略に反映させる。
財務リーダーはいかにしてデジタルに精通し、AI 活用に備えるべきか
財務リーダーは、AI が財務のあり方をいかに変えつつあるのか、そしてどのように導入すればいいのかについて把握していなければ、そのメリットを十分に引き出すことはできません。企業のため、そして自身のキャリアのためにも、財務リーダーはインテリジェントツールについて学び直し、自らがデジタルに精通した手本となり、そして CEO の 74% が懸念を抱いている、AI に対する知識ギャップを解消する必要があります。
AI と自動化を使いこなすための学習方法
- ビジネススクールや専門機関が提供する、財務担当者向けの自動化および AI スキル習得コースを受講する。
- IT 部門とともにアナログな業務プロセスを自動化し、予測や支出分析のための AI ツールをテストする。また、AI プロンプトの改善方法や、出力結果の解釈・検証方法についてチームをトレーニングする。
- 組織のデジタルロードマップに沿った財務部門全体の AI 戦略を構築し、倫理的かつコンプライアンスを遵守した AI 利用のためのガバナンスを確立する。
財務リーダーはいかにして変化を管理し、リードすべきか
先見性のあるリーダーには、変化を単に受け入れるのではなく、自ら変化を推進することが期待されています。そのため、変化を管理するスキルを磨き、従業員、システム、そして戦略が常に足並みを揃えている状態を維持しなければなりません。「状況は急速に変化しています」と、SAP Americas の CFO であるソーニャ・サイモン (Sonja Simon) は述べています。「財務リーダーとして、私たちはチームに対し、不確実な状況に慣れる必要があるということを絶えず説き、リスクを取った姿勢を評価し報いていく必要があるのです」
組織のチェンジマネジメントを強化するための方法
- 変化が必要な理由を明確に示し、新しい施策を企画・立案する段階から定期的にスタッフを関与させる。
- コミュニケーション計画を含む変更管理ガイドラインを作成し、人事部門や IT 部門と協力して、トレーニング、インセンティブ、およびシステムの整合性を図る。
- 財務部門主導の戦略推進グループを設置する。
コミュニケーション能力とその他の財務ソフトスキルを向上させるための方法
組織全体の変革と成長を推進するために、現代のリーダーは人間関係の構築や、他部門のリーダーやチームとの連携・対話といった財務ソフトスキルに精通している必要があります。実際、取締役会のメンバーに対して業績結果を分かりやすく説明する能力 (39%) は、財務の専門知識 (31%) よりも高く評価されていると財務リーダーたちは考えています。
コミュニケーションとコラボレーションを強化するための戦略
- 財務状況の報告は単なる数字の羅列に留めず、ビジネスへのインパクトという観点から説明する。
- ステークホルダーの優先事項を把握し、それぞれの相手に合わせたコミュニケーションを行う。
- 高い EQ を備え、影響力を発揮できる未来のリーダーを育成するためのメンターとなる。
- 部門横断的な取り組みを主導して施策と人材の整合性を図り、共通言語と共通目標を確立する。
財務チームのスキル向上なしに成功を築くことはできない
成長マインドセット、戦略的先見性、データリーダーシップ、デジタルおよび AI 活用能力、チェンジマネジメント、そしてコミュニケーション能力。これらはいずれも、財務リーダーが備えるべき価値ある財務スキルです。しかし、財務チーム全体の支えがなければ、それらがビジネスに与えるインパクトを最大限に引き出すことはできません。
したがって、リーダーは自身の財務スキルを向上させるだけでなく、将来に備え、かつ深刻化する財務人材不足に対処するために、未来志向の財務チームの構築に注力すべきです。最後に、専門スキルの開発を単なる個人の課題に留めず、チーム全体の取り組みとするための主要な方法に触れて締めくくります。
社内外の講座や専門家を活用したトレーニング
- 社内の学習モジュールと社外の講座を組み合わせたトレーニング計画を作成する。
- 高度な専門性が求められる財務スキルについては、外部の専門家の知見を取り入れる。
- 社内の専門家を、ワークショップやメンター制度の担当として活用する。
- 他のチームと協力し、部門を越えた共通スキルを強化する。
自動化、データ管理、および統合の重視
- 手動の反復作業を自動化し、従業員が戦略的な業務に専念できる環境を整える。
- 高度なデータ管理に関するトレーニングをチームに提供する。
- 他の財務システムやビジネスプロセスと統合できる、出張・経費管理の一元化されたプラットフォームの導入を検討する。
コスト削減や生産性向上以上の価値にフォーカスする
- 生産性の向上やコスト削減といった利点だけでなく、新しいアイデアやインサイトの創出という観点から、AI 活用能力の向上と AI 利用の定着を図る。
- AI 活用の目的は日常の定型業務を代替することであり、従業員の職を奪うことではないという意図をチームに伝える。
最新テクノロジーと成長機会で若手人材を惹きつける
- キャリア開発やメンター制度の機会を積極的にアピールする。
- 人事部門や IT 部門と連携し、柔軟な働き方やハイブリッドワークの選択肢を含め、より働きやすい職場環境を整える。
- 採用候補者の期待に応えられるよう、自社が導入している最先端のテクノロジーやツールを具体的に紹介する。
よくある質問 (FAQ):将来を見据えた財務リーダーシップとチームの構築
1. 財務リーダーは機敏性と成長マインドセットをどのように醸成できるのですか?
財務リーダーは、単に数字を追うだけでなく、課題を先読みし、戦略を導けるようになる必要があります。さらに、他メンバーも同様のことができるよう育成することが必要です。過去の意思決定を振り返り、部門横断的なプロジェクトに参画し、機敏性に関する指標を含むように評価基準を広げることで、先見性のある成長志向のマインドセットを育むことができます。
2. 戦略的先見性とデータリーダーシップを強化するためのステップは?
先見性を養うとは、シナリオプランニング、シミュレーション、トレンド追跡を活用して、リスクやビジネスチャンスを早期に特定することを意味します。リーダーは、 KPI を標準化してダッシュボードを導入し、データに基づいたインサイトを通じて組織戦略を導く「未来予測」会議や委員会を設置すべきです。
3. リーダーがデジタル活用能力を高め、 AI を使いこなせるようになるにはどうすればよいですか?
デジタル時代に効果的なリーダーシップを発揮するためには、財務リーダーも自動化と AI について深く理解する必要があります。具体的には、エグゼクティブ向けの講座を受講することや、予測・分析に AI ツールを導入して試行すること、そして倫理的な AI ガバナンスを確立することから始めましょう。こうした取り組みがリーダー層の知識不足を解消し、インテリジェントテクノロジーをスムーズに受け入れられるチーム作りにつながります。
4. リーダーはどのように変化を管理し、主導していくべきですか?
変化を推し進めるには、明確なコミュニケーション、包括的な計画、そして部門間での強固な連携が不可欠です。変化管理ガイドラインを作成し、人事部門や IT 部門と協力しながら、財務部門主導の変革推進グループを組織することが、変革を成功に導く支えとなります。
5. なぜコミュニケーション能力とコラボレーション力が重要な財務ソフトスキルなのですか?
優れたコミュニケーション能力があれば、財務の「数字」を経営への具体的な影響へと読み解き、周囲の意思決定を動かせるようになるからです。相手に合わせて伝え方を工夫し、次世代のリーダーを育成し、部門横断的な施策を主導することで、財務リーダーは部門間に信頼を築き、組織全体で足並みをそろえることができます。
6. リーダーはどのようにして未来を見据えた財務チームを構築できますか?
継続的なスキルアップ、財務分野での AI スキル、および自動化に投資することで、チームを定型業務から解放し、より戦略的な業務に集中させることができます。メンタリングや部門間連携、キャリア開発を促進することは、将来を見据えた優秀な財務人材を惹きつけ、定着させることにもつながります。