出張・経費管理トレンド
AI活用で経理はどう変わる?導入事例から学ぶ選び方
経理でのAI活用は、検討段階から日常的に利用する段階へ移りつつあります。本記事では、導入事例をもとにAIの効果と選定時の判断基準を解説します。
- 経理AIは導入済みと3年以内導入予定を合わせて57.8%に達しています。
- AI-OCRや承認フローの見直しにより、処理時間を短縮した事例があります。
- 選定では対応業務範囲、ルール設定の柔軟性、既存システム連携がポイントになります。
- スモールスタートと社内ルール整備を並行して進めることが、定着への近道です。
経理AI活用の現在地
標準ツール化するAIと導入率
経理分野のAIは、すでに導入検討の段階から日々使う道具へと役割を変えつつあります。
経理白書2026では、経理分野へのAI導入について「すでに導入済み」が38.0%、「1年以内に導入予定」が12.5%、「3年以内に導入予定」が7.3%となりました。導入済みまたは3年以内の導入計画がある企業の合計は57.8%に達しています(参照*1)。
経理AIは、多くの現場で前提となりつつあります。導入予定を含めて過半数を超えたことで、経費精算や入力業務の自動化を織り込んだ体制設計が現実的な選択肢に上がってきました。自社の位置を確かめるうえで、まず参照したい基準値と言えます。
利用頻度と効果実感
導入後の使い方と満足度を見ると、AIが単なる試験導入で終わっていない様子が浮かびます。
AIを導入している企業の担当者の利用頻度は「毎日」が28.3%、「毎週」が25.7%で、週1回以上使う人は54.0%と過半数を超えました。効果満足度は「期待を超える効果があった」が25.4%、「期待通りの効果があった」が51.6%で、合わせて77.0%の担当者が満足と回答しています(参照*1)。
業務全般では、生成AIの高頻度利用領域として「情報収集・要約」46.1%、「文書作成」43.1%、「翻訳」38.2%が挙げられています。分類AIでは「業務処理自動化」が30.9%となりました(参照*2)。
経理を取り巻く構造的課題
AI活用が広がる背景には、経理部門を取り巻く負荷の高まりがあります。
近年の経理部門では、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応に加え、人手不足や月次決算の早期化も重なり、担当者の負荷が高まっています。制度対応と早期化を同時に進める必要があり、既存の人員配置だけでは吸収しづらい状況です。
こうした環境では、証憑の読み取りや仕訳作成といった反復作業をAIに任せ、人は判断や確認に集中する分業が現実的です。導入率の高まりは、負荷対策として合理的な選択が広がっている表れと読み取れます。
自社の課題を制度対応・早期化・人手不足の3軸で棚卸しすると、AI活用の優先度を判断しやすくなります。
経理AIエージェントの全体像
従来型AIとAIエージェントの違い
経理AIの議論では、従来型AIとAIエージェントの違いを押さえることが理解の土台になります。
従来型のAIは、証憑の読み取りや分類など、特定タスクの補助を中心に担います。一方、AIエージェントは、目的に応じて複数の処理を組み合わせ、一定の業務範囲を進める仕組みです。担当者には、処理結果を確認し、例外に対応する役割が残ります。
担える業務範囲と主な機能
経理AIエージェントが担う機能は、経費精算から経営管理まで幅広く整理されています。
経理分野で想定される主な機能は、証憑の自動取得・読み取り、申請内容の確認、仕訳候補の作成、請求書の照合、承認・監査の支援、支出分析などです。日々の入力から分析までを一連の流れとして扱える点が特徴です。
数字の把握と原因の当たり付けを、担当者が個別に集計せずに進められる形が現れています。全機能を1つのサービスがそろえるとは限らないため、自社に必要な範囲を切り分けて選定することが重要になります。
まず自動化したい業務を書き出し、対応可否を照らし合わせるとかみ合わせを確かめやすくなります。
導入事例に学ぶAI活用効果
AI-OCRと承認フローの見直し
エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社は、Concur ExpenseとConcur Invoiceを段階的に導入しました。請求書処理では、AI-OCR連携や承認フローの変更により、1伝票当たりの処理時間を27分から12.5分に短縮しています。経費精算も1件当たり38.5分から14.5分となり、年間1万4,400時間の業務削減を実現しました(参照*3)。
この事例から、AI機能の導入だけでなく、承認フローや運用ルールを同時に見直すことが効果につながると分かります。
AI活用を継続的な業務改善につなげる
コンカーの2026年版事例集では、AI-OCRや不正検知システムを活用し、経費精算・請求書処理の効率化やガバナンス強化を進めた事例を紹介しています(参照*4)。
導入効果を判断する際は、処理時間、差し戻し件数、承認工数、監査で検知した件数など、導入前後で比較できる指標を設定します。
導入時の判断基準と注意点
選定時のチェックポイント
経理AIエージェントの選定では、比較の軸をあらかじめ決めておくことが失敗を避ける近道です。
比較検討では、「対応する業務範囲」「ルール設定の柔軟性」「既存システムとの連携性」を確認します。この3点を基準にすると、必要な機能を整理しやすくなります。
自社の業務量と体制に即して優先順位を決めます。
信頼性・不正リスクへの対応
AI活用の広がりに伴い、不正リスクと透明性への不安への備えが欠かせません。
経理白書2026の調査では、「実際にAIを悪用した不正被害を経験した」と回答した担当者は7.3%にとどまるものの、「現時点では被害・兆候はないが、リスクを認識している」という回答は32.8%に上り、3人に1人が問題意識を持っていることが示されました(参照*1)。
AI利用に対する不安としては、情報処理推進機構では「不安がやや大きい」までを含めると「情報漏えい」が48.1%(770/1600)、「判定した理由がわからない」が53.6%(858/1600)で突出しました(参照*2)。
判定理由の可視化と権限設計をセットで整えることが、対応策の起点になります。
スモールスタートの進め方
定着に向けては、いきなり全社展開せず段階を踏むアプローチが有効です。
まず1業務で試行し、効果を測定してから対象を広げます。経理規程や承認ルールの整備も並行して進める必要があります。
業務標準化とAI設定を同時に進めると、展開の速度が上がります。
コンカーが支援する経理AI活用
コンカーは、経費精算・出張・請求書管理の領域でAIを活用するSAP Concurを提供しています。Concur Expenseは、領収書の取り込み、申請内容の確認、処理、監査、支払いを効率化し、既存の会計システムとも連携できます(参照*5)。
Expenseltは、OCR、機械学習、生成AI、ユーザー履歴を使って領収書の金額・日付・場所などを識別し、経費を自動で分類・明細化します(参照*6)。
経費精算レポートでは、OCRによる領収書情報の抽出に加え、AIとビッグデータを活用した不正検知によって、経費チェックを効率化できます(参照*7)。
Concur Travel & Expenseとして出張・経費管理をひとまとまりで扱えます。AIによる判定と人の監査を組み合わせる設計は、確認の担い手を明確にする方法の一つです。
AI利用では、機能だけでなくガバナンスも確認が必要です。経済産業省と総務省の「AI事業者ガイドライン第1.2版」は、AI利用者を含む関係者に対し、リスクを把握して対策を継続的に実施する枠組みを示しています(参照*8)。
導入検討では、自社の申請件数や監査体制と機能を突き合わせ、優先度を決めます。
おわりに
経理AI活用は、導入済みまたは3年以内の導入計画がある企業が57.8%に達しており、日常的な業務ツールとして定着し始めています(参照*1)。導入事例からは、AI機能と業務プロセスの見直しを組み合わせることが成果につながると分かります。
選定では対応業務範囲、ルール設定の柔軟性、既存システム連携の3点を軸に、まずは1業務からの試行で効果を確かめることがポイントです。信頼性や不正リスクへの備えを運用設計に組み込みながら、社内ルールの整備と並行して段階的に広げる進め方が、無理のない一歩になります。
参照
