経理・総務の豆知識

2026年度に創設される大規模投資減税とは?7%税額控除・即時償却の要件と手続き、活用ポイントを解説

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はじめに 

国内の設備投資を加速させるため、2026年度の税制改正で大規模投資減税が創設されました。大企業は35億円以上、中小企業は5億円以上の投資を行い、投資利益率(ROI)15%以上などの要件を満たせば、取得価額の7%を法人税額から差し引く税額控除か、初年度に全額を経費計上する即時償却を選べます。 

この制度は投資の規模や資産の種類によって適用条件が細かく定められており、他の優遇税制との併用制限も設けられています。本記事では、創設の背景から具体的な要件、手続きの流れ、実務上の判断基準まで順を追って説明します。 

大規模投資減税の背景と目的 

国内投資不足と「強い経済」の課題 

大規模投資減税が創設された背景には、国内における設備投資の停滞と産業競争力の低下という課題があります。企業が海外に生産拠点を移す流れが続くなか、国内の生産基盤を強化し、付加価値の高い産業構造へ転換することが求められてきました。 

こうした課題に対し財務省は、令和8年度税制改正で「強い経済」の実現を大きな柱の一つに据えました。大胆な設備投資の促進に向けた税制措置の創設に加え、賃上げ促進税制の見直しや研究開発税制の強化等を行っています(参照*1)。設備投資の後押しだけでなく、賃金の引き上げや技術革新を税制全体で支える方針が示された形です。 

税制改正大綱における位置づけ 

大規模投資減税の創設は、与党が取りまとめた令和8年度税制改正大綱に明記されました(参照*2)。 

大綱全体を見ると、物価上昇への対応として基礎控除額の引き上げや所得税の課税最低限の特例的な引き上げも盛り込まれています。大規模投資減税はこれらと並ぶ主要項目の一つであり、単なる企業優遇ではなく、賃上げや物価対策と一体で「強い経済」を目指す構造改革パッケージの中核として位置づけられています(参照*1)。 

制度の全体像と仕組み 

正式名称と法的根拠 

この大規模投資減税の正式名称は「特定生産性向上設備等投資促進税制」です。産業競争力強化法の改正を前提とした制度であり、同法にもとづく経済産業大臣の確認を受けた設備投資計画が適用の出発点となります。 

大綱によると、青色申告書を提出する法人が、生産等設備を構成する特定生産性向上設備等(仮称)に該当する資産の取得等をし、国内にあるその法人の事業の用に供した場合に本税制を適用することができます。なお、貸付けの用に供する場合は対象外です(参照*3)。法人税の青色申告を行っていることが前提となるため、申告区分を事前に確認しておく必要があります。 

対象業種・対象資産の範囲 

大規模投資減税は、全ての業種を対象としている点が大きな特徴です。製造業だけでなく、サービス業や小売業など、業種を問わず要件を満たせば適用を受けられます。 

対象となる資産は、生産等に必要な設備等として以下の5種類が定められています(参照*4)。 

  • 機械装置 
  • 工具及び器具備品 
  • 建物 
  • 建物附属設備及び構築物 
  • ソフトウエア 

産業競争力強化法の確認手続きを経た設備投資計画にもとづいて取得した設備等が対象となるため、計画の策定と行政手続きがセットで求められます。投資の内容と計画の整合性が適用の可否を左右する仕組みです。 

措置期間と適用スケジュール 

本税制には明確な期限が設けられています。産業競争力強化法の改正法の施行の日から2029年3月31日までの間に、設備投資計画について経済産業大臣の確認を受ける必要があります。さらに、確認を受けた日から5年を経過する日までの間に設備等を取得し、事業の必要に応じた場合で対象になります(参照*4)。 

つまり、計画の確認取得と設備の取得・稼働開始という2つの期限を意識する必要があります。確認の期限は2029年3月31日ですが、その後も最大5年間は設備の取得と事業供用が認められるため、大型設備の導入に伴う工期の長さにも一定の配慮がなされた設計といえます。投資の規模が大きくなるほどスケジュール管理の重要性が増すため、早い段階で計画全体の工程を組み立てることが欠かせません。 

適用要件の詳細 

投資下限額と企業規模別の基準 

大規模投資減税の名称が示すとおり、一定規模以上の投資でなければ適用を受けられません。投資計画に記載された生産性向上設備等の取得価額の合計額が、大企業の場合は35億円以上、中小企業者又は農業協同組合等の場合は5億円以上必要です(参照*2)。 

この下限額は個々の資産単位ではなく、投資計画全体での合計額で判定されます。大企業にとっての35億円は大胆な設備投資を真に行う企業に対象を絞る水準であり、中小企業にとっても5億円は相応の規模です。投資計画を立てる際には、対象資産の取得価額を積み上げて下限額に達するかどうかを最初に確認することが実務上の出発点となります。 

ROI15%以上の投資利益率要件 

投資額の大きさだけでなく、その投資がもたらす収益性も問われます。投資計画における年平均の投資利益率(ROI)が15%以上となることが見込まれるものであることが要件です(参照*2)。 

ROIとは、投じた資金に対してどれだけの利益を生み出すかを示す指標です。15%という水準は、大規模かつ高付加価値の投資を促進する観点から設定されたものであり、単に設備を増やすだけの投資ではなく、生産性の向上に真に結びつく投資を選別する役割を担います(参照*5)。投資計画の策定段階で、収益の見通しを具体的な数値にまで落とし込む作業が不可欠です。 

資産ごとの取得価額要件 

投資計画全体の下限額とは別に、資産の種類ごとに1台あたり・1件あたりの取得価額にも最低基準が設けられています。税制改正大綱では、以下のとおり定めました(参照*3)。 

対象資産には取得価額の要件があり、機械装置は1台または1基160万円以上、工具・器具備品は120万円以上、建物は1,000万円以上、建物附属設備・構築物は120万円以上、ソフトウエアは70万円以上です。なお、工具・器具備品や建物附属設備は、一定額以上のものを事業年度内に合算して要件を満たす場合も対象に含まれます。 

資産の種類によって金額基準が異なるため、投資計画に含める設備を選定する段階で資産区分ごとに取得価額を精査する必要があります。 

7%税額控除と即時償却の選択 

税額控除の控除率と上限 

大規模投資減税では、対象設備を事業の用に供した事業年度において、取得価額の7%を法人税額から差し引く税額控除を選ぶことができます。ただし、建物・建物附属設備・構築物については控除率が4%に設定されています(参照*6)。 

控除できる金額には上限があり、当期の法人税額の20%が限度です。この限度を超えた部分については、控除限度超過額を3年間繰り越すことが可能です(参照*3)。また、輸出入取引にかかる条件の著しい変化など事業環境の急激な変化への対応を行うための計画について認定を受けた場合は、最大3年間の繰越ができます(参照*6)。投資額が大きいほど控除額も大きくなるため、法人税額の20%上限に抵触するかどうかを事前に試算しておくことが実務上の鍵を握ります。 

即時償却の仕組みと効果 

税額控除の代わりに即時償却を選ぶこともできます。即時償却とは、対象設備を事業の用に供した事業年度に、普通償却限度額との合計で取得価額の全額を償却する仕組みです(参照*3)。 

通常の減価償却では取得価額を耐用年数にわたって分割して経費に計上しますが、即時償却を選べば初年度に全額を費用化できます。これにより、設備導入年度の課税所得が大きく圧縮され、資金を早期に回収する効果が期待できます。一方、翌年度以降は償却費が発生しないため、課税所得はその分だけ増える点にも留意が必要です。税額控除と即時償却のどちらが有利かは、法人税額の水準や将来の利益計画によって異なるため、複数年にわたるシミュレーションで判断することが望ましいでしょう。 

適用停止措置と注意点 

賃上げ要件・設備投資要件 

大企業には、大規模投資減税の適用が停止される場合があります。当期の所得が前期を超えているにもかかわらず、賃上げ要件又は国内設備投資要件のいずれかを満たさない場合は、繰越税額控除を除き本制度の適用を受けられません(参照*4)。 

賃上げ要件は、賃上げ率が1%以上であることです。ただし超大企業については2%以上が求められます。国内設備投資要件は、国内設備投資額が当期の減価償却費の30%超であることで、超大企業は40%超です。これらの要件は、投資減税の恩恵を受ける企業に対し、従業員の処遇改善と国内への継続的な設備投資を求める趣旨で設けられています。大企業が本税制を活用する際は、投資計画の策定と同時に、賃上げ計画との整合性も確かめておく必要があります。 

他の優遇税制との併用制限 

大規模投資減税の投資計画について経済産業大臣の確認を受けた法人は、その計画の期間中、一部の優遇税制の適用が制限されます。税制改正大綱では、地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度、中小企業経営強化税制(繰越税額控除制度を除く)、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の3制度が適用対象外となることを定めました(参照*3)。 

また、本税制の適用を受けた設備の取得価額は、半導体税額控除限度額の計算基礎となる投資金額にも含めないこととされています(参照*2)。複数の優遇税制を同時に利用できないため、中長期の投資計画を踏まえて、どの税制を適用するのが最も効果的かを事前に比較検討することが欠かせません。 

申請手続きの流れ 

経済産業大臣の確認手続き 

大規模投資減税の適用を受けるには、産業競争力強化法にもとづく経済産業大臣の確認が必須です。確認の申請期限は、産業競争力強化法の改正法の施行の日から2029年3月31日までとなります。確認を受けた日から5年以内に対象設備を取得し、事業の用に供することが適用の条件です(参照*4)。 

大規模な投資を検討している場合は早期に準備を始めることが必要です。設備の選定から計画の策定、行政への申請、取得・稼働まで一連の工程には相応の期間がかかるため、確認の申請時期から逆算して社内のスケジュールを組み立てることが実務上のポイントです。 

投資計画に必要な記載事項 

経済産業大臣の確認を受ける投資計画には、いくつかの必須記載事項があります。税制改正大綱では、生産性向上設備等の導入に係る投資計画にその実現に必要な資金調達手段が記載されていること、投資計画が取締役会等の適切な機関の意思決定にもとづくものであること、そして設備導入がその法人の設備投資を増加させるものであること等の要件を満たすことを求めています(参照*2)。 

つまり、資金面の裏付けと経営層の意思決定、そして既存の設備投資の単なる置き換えではないことを書面で示す必要があります。取締役会決議の議事録や資金調達の計画書など、社内で用意すべき書類は複数にわたるため、関連部署との連携を早い段階で始めておくことが手続きを円滑に進める上でポイントです。 

活用時の判断基準と実務ポイント 

税額控除と即時償却 

大規模投資減税を活用する際は、税額控除と即時償却のどちらを選ぶかが最初の判断事項となります。税額控除は法人税額そのものを直接減らす効果がある一方、当期の法人税額の20%が上限となるため、投資額に対して法人税額が小さい場合は控除しきれない可能性があります(参照*7)。 

一方の即時償却は初年度の課税所得を大幅に圧縮できるものの、翌年度以降の償却費がなくなる点に注意が必要です。そのため、単年度の節税額だけでなく、複数年の損益や税負担を見通したうえで選択することが重要です。 

併用制限と繰越制度の確認 

加えて、他の優遇税制との併用制限を見落とさないことも大切です。中小企業経営強化税制やカーボンニュートラルに向けた投資促進税制は、本税制の投資計画期間中は利用できなくなります。さらに、大企業は賃上げ率や国内設備投資額の水準も適用停止の判定に影響するため、投資減税だけを切り出して検討するのではなく、人事施策や他の設備投資計画と合わせて全体最適を図る視点が求められます。 

事業環境の急激な変化による影響への対応を行うための計画について認定を受けた場合は、控除限度超過額を最大3年間繰り越せるため、繰越制度の活用も選択肢に入ります(参照*6)。投資額・収益見通し・適用制限を総合的に勘案し、自社にとって最も有利な組み合わせを見極めることが、本税制を最大限に活かす鍵となります。 

おわりに 

大規模投資減税は、全業種を対象に7%の税額控除または即時償却を選べる制度として創設されました。投資下限額やROI15%以上の要件に加え、資産ごとの取得価額基準、賃上げ要件、他税制との併用制限など、適用に向けて確認すべき条件は多岐にわたります。 

経済産業大臣の確認申請から設備の取得・事業供用まで時間を要するため、制度の活用を検討する場合は、投資計画と社内の意思決定プロセスを早めに整えておくことが可能になります。 

参照 

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