わたしたちについて

SAP Concurが描くAIの未来:経費管理の革新とJouleの可能性

SAP Concur Japan |

コンカーの年次イベントである「SAP Concur Fusion Echange」、今年のテーマは「比類なきAI」。比類なき、とはどういう意味?と思われた方も多いかもしれません。Fusionの開催に合わせ、SAP ConcurのSAP Concurのグローバルプロダクトマーケティング責任者のクリス・ジュノーが来日しましたので、その意味合い、今後の展望、AIの可能性を深掘りしました!
(インタビュアー:株式会社コンカー 井坂 香生里 プロダクトマーケティング部 プロダクトマーケティングマネージャー)

ーー

インタビュイープロフィール

クリス・ジュノー(Chris Juneau)

SAP Concurのシニアバイスプレジデント兼グローバルプロダクトマーケティング責任者。SAP Concurに25年間在籍し、その多くを国際市場での業務に従事。約15年前にConcur Japanの共同設立に携わった経験を持つ。AIを活用した経費管理ソリューションの開発と展開において豊富な知見を有している。

舟本憲政(Funamoto Norimasa)

SAP Concur Japanのプロダクトマーケティング部門責任者。6年前にSAP Concur Japanに入社し、プリセールスとして提案活動に従事した後、2023年より現職。クリス・ジュノーの下で商品戦略立案、マーケティング活動、政策提言活動などを担当している。日本市場におけるAI活用の経費管理ソリューションの普及に尽力している。

ーー

このインタビューは2025年9月に行ったものです。

Q: SAP ConcurのAIビジョンについて教えていただけますか?特にSAP Concur Fusion Exchange 2025で話された「So you can focus on what really matters, freedom to reach your potential」(真に価値あることに集中できるようになる――あなたの可能性を最大限に引き出す自由を)というフレーズに感銘を受けました。 ‎

A: クリス・ジュノー: 私たちの全体的なビジョンは、「経費精算のない世界」、つまり、出張経費精算が最低限の操作で管理できるようにすることです。AIがこのビジョンにどう貢献するかというと、エンドユーザー、出張者、マネージャー、あるいは企業のリーダーシップなど、顧客が望むビジネス成果を実現することです。SAP ConcurとSAPが持つ比類のないグローバルデータを活用し、過去数年間のAI経験を生かして、エンドユーザー、マネージャー、組織のリーダーにより良い体験を提供し、企業の効率性とコスト削減を促進できると考えています。 ‎

 

Q: 「比類のないデータ」とは具体的にどういう意味ですか?

A: クリス・ジュノー: 「比類のない」とは、非常に多くのデータを持っているという意味です。ビッグデータを超えた、他の誰も持ち得ないデータです。他の誰も私たちのようなデータは持っていないし、私たちのようにデータを活用することはできません。AIの力は、それを動かす独自のデータによって決まります。だからこその「比類なきデータ」「比類なきAI」です。2006年以来、iPhoneが登場した頃から、私たちは写真を撮って領収書を取り込む機能を最初に実現しました。世界中の領収書のデジタルデータを2006年から持っており、それをAIモデルに活用できるのです。 ‎

 

Q: このAIビジョンは日本の顧客にも魅力的だと思いますが、舟本さんはどのようにお考えですか?

A: 舟本憲政: 日本には本当にフィットすると思っております。むしろアメリカ以上にフィットすると考えています。その理由は、日本は現在、生産人口がどんどん減少していく実態があり、生産性も非常に低い状況にあります。人が足りない中で業務変革を行っていかなければならないという強いプレッシャーがある中で、AIを使ってそれを実現していくことを、すぐに取り組まなければならない状況です。SAP Concurは単にAIを使っているだけではなく、過去30年以上経費精算のビジネスを行い、大量のビッグデータを蓄積してきました。そのため、精度が高く信頼性のあるデータを活用したAIを使うことで、実際にビジネスで使える成果を得られ、真の業務効率化、抜本的な改革に貢献できると考えています。

 

Q:ビジネス変革を推進するためにAIがどのように活用されているのか、また運用効率、コンプライアンス、競争優位性を高めるためにAIがどのように活用されているのか教えてください。また、これらの技術を採用する際に直面した課題は何ですか? ‎

A: クリス・ジュノー: AIはSAP Concurにとって新しいものではありません。10年以上前から私たちのサービスにAIを組み込んできました。それは、Concur Intelligent Audit (インテリジェントオーディット)を開始したときに始まりました。これは企業が経費申請の監査をSAP Concurにアウトソーシングするサービスです。当時、ビジネスが急速に成長していたため、SLAを一貫して満たすのに十分な監査人を雇うことができませんでした。そこで、このプロセスの一部に機械学習とAIを適用し始めました。これは10年以上前のことです。

この技術を適用する上での最大の課題はデータです。最終的に、AIとそのモデルを動かすのはデータであり、信頼性があり、責任を持って関連性のあるものでなければなりません。AIはまだ新しいため、人々はAIから価値を得ていますが、AIを信頼することを学ぶ必要があります。その信頼は、私たちが持つ膨大なデータによってもたらされます。

これまでに、AI駆動型のExpenseIt(エクスペンスイット)、38以上のチェック項目を持つConcur Verify(ベリファイ)(生成AI作成領収書の検知含む)、先ほど言及したIntelligent Audit、そして最近発表したSAP Concur内のJoule(ジュール)など、多くのソリューションを導入してきました。 ‎

 

Q: 今お話に出た「Joule」は、以前のAI技術とどう違うのでしょうか? ‎

A: クリス・ジュノー: SAP AIアシスタントであるJouleは、Concur Expense、Concur Travelを含むすべてのSAPアプリケーションにまたがります。Jouleは、承認や旅費・経費ポリシーの潜在的な修正方法の評価など、一般的なタスクでエンドユーザー、マネージャー、財務意思決定者をサポートする機能を持っています。Jouleは、経費精算や旅行予約プロセスに関わるすべての人をサポートするために常に存在し、Concur内にいるかどうかに関わらず、Jouleにアクセスして恩恵を受けることができます。 ‎

Q: 舟本さんもJouleについてのお考えをお聞かせください。 ‎

A: 舟本憲政: 通常AIというと業務を自動化したり便利に実施するというふうに発想される方も多いと思うのですが、今回のJouleに関しては、今までの経費精算とは異なるアプローチを取ります。従来の経費精算は画面を操作しながら人が指示や判断をして作業を進めていくものでしたが、Jouleはその発想を完全に変え、対話をしながら必要な情報を伝えたり、逆にJouleがこちらに提案をしてきたりして、対話しながら経費精算が完了する世界を築きます。

まさにタッチレスで経費精算が完了する世界観になります。単純にAIを使って便利にするということを超えた、新しいタッチレスな世界を提供できると考えています。 ‎

 

Q: SAP Concur Fusion Exchage 2025 のキーノートセッションで舟本さんが様々なユースケースを発表されましたが、それぞれのユースケースとそれらがもたらす利点について詳しく説明していただけますか? ‎

A: 舟本憲政: ここではJouleとAIエージェントを使ったユースケースについて補足させていただきます。
まず、Fusionでも紹介したBooking Agent(ブッキングエージェント):嗜好に合わせた出張手配についてです。これは、フライトの手配をするときに、通常は画面を操作しながら予約をするところを、対話をしながら行うものです。例えば、自分が行きたい場所や日付を伝えると、その人の好みや会社の規定を考慮したフライトをJouleが自動的に提案してくれて、あとは選ぶだけという世界を築くことができます。これにより、時間の大幅な削減が可能になり、人は判断するだけで済むようになります。

2つ目はExpense Report Validation Agent(バリデーションエージェント):経費精算内容の検証です。従来は画面を見ながら経費の内容をチェックし、問題や抜け漏れがないかを人が勘や経験を使って確認していましたが、AIが経費精算の問題点や漏れを指摘してくれるようになります。その提案を受けながら、人は判断するだけで経費レポートのチェックが完了できるようになります。これにより、今まで人力に頼っていた部分を大幅に改善し、コンプライアンスに則った経費精算の支援ができるようになります。

3つ目はAdministrator Consultation with Joule(アドミニストレーションコンサルテーション):管理者向け設定サポートです。Fusionのキーノートで代表の橋本が今後進めるべき方向として「経費精算のない世界」「自立運用」「データの民主化」という話をしました。その中の「自立運用」というテーマにまさに合致する機能です。今までの設定や導入運用は人の手で手間暇かけて、経験ある方が頑張って行っていましたが、Jouleが会社の設定を分析し、問題点や変更が必要な点を提案してくれます。その提案に基づいて最適なベストプラクティスの設定に近づけていくことができる予定です。。自立運用を実現することで、人手をかけずにベストプラクティスの運用支援ができるようになり、単に便利になるだけでなく、管理面もしっかりとサポートできるのがSAP Concurの大きな強みだと思います。

 

Q: Fusionでは触れられなかったJouleについての洞察も聞くことができて非常に価値がありました。最後に、Jouleのリリースを心待ちにしているお客様へのメッセージをお願いします。まずはクリスさんから。 

A: クリス・ジュノー: AIについて考えるとき、私にとってそれは「加速するイノベーション」を意味します。舟本が先ほど説明したFusionで紹介したユースケースは、ほんの始まりに過ぎません。今後、30〜60日ごとに新たなユースケースがリリースされ、世界中の顧客に提供される予定です。

Q: 舟本さんからもメッセージをお願いします。

A: 舟本憲政: クリスが伝えたように、今回発表したものはあくまでもスタートで、これからどんどんリリースされていくと思います。正直、立ち上げ準備する立場からすると非常に大変なのですが、AIエージェントとJouleという強力なプラットフォームを持っているため、あとはユースケースを追加していくだけです。機能はますます進化していきますし、皆様の業務、管理、さらには戦略的な経営の支援がどんどんできるようになってくると思いますので、ぜひご期待いただき、引き続きご支援いただけると大変ありがたく思います。

クリス&舟本

ーーー

まとめ

SAP ConcurのAIビジョンは、「経費精算のない世界」、つまり、出張経費精算が最低限の操作で管理できるようにすることを目指しています。30年近くにわたって蓄積された膨大なデータと10年以上のAI活用経験を基盤に、新しいAIアシスタント「Joule」は単なる業務効率化ツールを超えた変革をもたらそうとしています。特に人口減少と生産性向上が課題となっている日本市場において、対話型インターフェースによるブッキングエージェント、バリデーションエージェント、アドミニストレーションコンサルテーションといった具体的なユースケースは、今後も30〜60日ごとに拡充されていく予定であり、SAP Concurは「加速するイノベーション」を通じて、企業の業務効率化と戦略的経営を支援し続けるでしょう。

コンカーのAI戦略についてはこちらをご確認ください。
また、AIを活用した、出張・経費精算についてはこちらをどうぞ!

今回のインタビュー内容も含んだ、コンカーの戦略などについては、10月15日〜31日のSAP Concur Fusion Exchange 2025 Virtualでもご紹介します。この機会にぜひご登録の上ご視聴ください。

わたしたちについて
コンカーは「経費精算のない世界を創る」というビジョンを掲げ、日本企業に対しては「日本企業の競争力強化に貢献する」、社員に対しては「働きがいと成長にコミットする」ということをミッションにしている企業です。 「コンカーアカデミー」は、そのミッション達成のために2020年6月から始めた取り組みで、社会人や学生を対象に現在は主に以下3つのコンテンツを無料提供しています。
もっと見る
わたしたちについて
コンカーでは、ユーザー企業様同士がつながり、日々の運用に活かせる知見を持ち帰っていただけるよう、定期的に「ゼネラルビジネス SAP Concur ユーザーコミュニティ」を開催しています。2023年の発足から数えて今回で第七回目、今回は「設定・運用・サポート」の観点から、より効果的な利活用のあり方について意見交換を行いました。
もっと見る
わたしたちについて
今回の社員インタビューは、インターン生として働く木田 萌永(きだ もえ)さんです。2024年11月に入社し、コンカーのインサイドセールスチームで活躍しています。地方の大学に通いながらインターン活動を通して自身の可能性を広げる姿を取材しました。
もっと見る