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経費精算クラウド比較ガイド|機能比較より重要になる「本質的な判断基準」とは

SAP Concur Japan |

はじめに

経費精算は、ほぼすべての従業員が関わる業務でありながら、コア業務とは直接関係のない作業です。領収書の転記や上長の承認待ちなど、非生産的な時間が今も多くの企業に残っています。

経理精算クラウドを選ぶときに押さえるべきポイントは、機能の数を比べることではありません。経費精算そのものをなくし、空いた時間で何ができるかという視点が最も重要です。

本稿では、経理精算クラウドの定義と主要機能を整理したうえで、単に「経費精算を楽にする・効率化する」従来型の発想と「経費精算そのものをなくす」次世代型の発想の違いを明らかにし、外部連携による入力ゼロ・AI監査による人的チェックの削減・グローバル対応の3軸を判断基準とした選定方法、および導入後の運用設計や法制度対応のポイントを解説します。

 

経理精算クラウドとは何か|定義と導入が求められる背景

経理精算クラウドの基本的な仕組み

経理精算クラウドとは、経費の申請・承認・精算といった一連のプロセスを、インターネット経由で処理できるサービスの総称です。従来は紙の領収書を台紙に貼り、Excelで計算し、上長に回覧するという手作業が一般的でした。経理精算クラウドでは、領収書の取り込みから承認、経理部門の処理までを1つの画面上で完結できます。

Concur Expenseは、領収書から経費精算書を作成し、上長の承認を受け、経理部門が処理するという一連の経費精算プロセスを支援します。外部サービスから交通費などの決済データを取り込む機能にも力を入れている点が特徴です(参照*1)。こうした仕組みにより、手入力の工程を省き、申請から支払いまでの時間を短縮できます。

 

非生産的な経費精算業務が残り続ける背景

経費精算は、金額を転記し、日付を照合し、承認者が1件ずつ目視で確認するという手順の連続です。この作業は売上を生まず、本来の業務時間を圧迫します。にもかかわらず、多くの企業で紙やExcelを使った運用が続いているのは、既存の社内ルールやシステムへの慣れが変革を阻んでいるためです。

市場では、モバイルワークフォースの増加やモバイルアプリへの出張・経費管理ソフトウェアの統合拡大、さらには経費精算処理の時間短縮ニーズの高まりが、導入を後押ししています(参照*2)。また、デジタル庁は、インボイスのやり取りを含めてバックオフィス業務をデジタルで完結させることは事業者にとって重要な課題であるとしています(参照*3)。非生産的な経費精算を放置するリスクは、年を追うごとに大きくなっています。

 

経理精算クラウドでできること|主要機能の全体像

外部サービス連携による入力ゼロの実現

経理精算クラウドでできることの中でも、外部サービスとの連携は最も実務を変えるポイントです。ICカード、QRコード決済、法人クレジットカードなどの利用データが、金額や日付を改ざんできない状態でシステムに自動で取り込まれます。従業員が手で金額を打ち込む必要がなくなるため、転記ミスも起きません。

Concur Expenseは、外部サービスから交通費などの決済データを取り込む機能に注力しています(参照*1)。自動連携されたデータは元の決済記録と一致しているため、人が金額や日付を確認する作業自体を省けます。入力をゼロにできるかどうかは、経理精算クラウドを選ぶときの判断基準として欠かせない観点です。


AI監査・不正検知による人的チェックの削減

AI監査・不正検知は、人の目だけでは見分けにくい不正への対策になります。近年、AIで作成された偽造領収書は人の目では見分けがつきにくくなっています。こうした不正を防ぐには、AI自身が申請内容を精査する仕組みが必要です。経理精算クラウドでできることの1つとして、AIによる監査機能はこれからの必須要件といえます。

コンカーは、AIを活用した不正検知機能であるVerifyを2025年にリリースしました。大量のデータで学習済みのAIが申請内容をチェックし、領収書の重複、偽りの領収書、不適切な加盟店、グリーン車の利用、ホテルの各種オプション利用、市場平均価格との比較などを検知します(参照*1)。また、出張・経費管理ソフトウェアにおけるAIの利用が、今後数年間の市場成長を促進する主要な理由の1つであるという調査結果もあります(参照*2)。AI監査を備えているかどうかは、経理精算クラウドを比較する際に確認すべき項目です。

 

グループ展開・グローバル対応の機能

企業がグループ会社を持っていたり、海外に拠点を展開していたりする場合、経理精算クラウドで必要な機能としてグループ展開やグローバル対応の機能も含まれます。グループごとに異なる経費ポリシーの適用、多言語・多通貨への対応、為替レートの自動換算といった機能がなければ、拠点ごとにバラバラの運用が続き、ガバナンスを保てません。

世界の出張者のほぼすべて、97%が今後12か月以内に出張する意思を「ある程度」以上持っているという調査結果があります(参照*4)。出張が増えれば海外での経費精算も増加します。導入を検討する段階で、グローバル対応が標準で備わっているか、あるいは追加で必要になるかを確認しておくことが実務上の分かれ道になります。

 

「経費精算を楽にする」と「経費精算をなくす」の違い

従来型システムと次世代型システムの発想の差

従来型の経費精算システムは、紙の台紙をデジタルに置き換える発想で設計されています。入力フォームが画面上に用意され、承認フローが電子化されますが、従業員が数字を打ち込み、上長が1件ずつ確認する工程は残ったままです。一部の利用データはシステムに連携されるものの、交通系ICカードをリーダーに読み取らせる必要があったりして、つまりは作業を「楽にする」だけであり、作業自体はなくなっていません。

一方、次世代の発想では精算プロセスそのものをなくすことを目指します。デジタル庁は、効率化は大前提にすぎず、その先にある新たな付加価値をいかにして実現するかが重要なポイントであるとしています(参照*3)。また、財務部門はビジネスの舵取りやイノベーションの推進においてますます重要な役割を担い、部門横断的なプロセスの自動化と標準化、ビジネスモデルの変革を促進するとも指摘されています(参照*5)。経費精算を楽にするか、なくすか。その違いが、財務部門の役割を事務処理から経営参画へ変える起点になります。

 

自動連携でチェック自体が不要になる仕組み

ICカードや法人クレジットカードなどの決済データが、改ざんできない形でシステムに自動取り込みされると、金額や日付の正確性は決済事業者側で担保されます。そのため、経理担当者が金額を照合し、上長が目視で確認するというチェック作業自体が不要になります。管理者がすべての経費精算書を承認・精査する必要があるのかという問いかけは、コンカーも今後の重要な論点として挙げています(参照*5)。

消込データモデルを参照した業務システムや請求・決済手段を採用することで、消込精度の向上や債権債務管理業務のデジタル完結・自動化が実現できるとされています。その結果、バックオフィス業務を担っていた人手を本来業務に集中させることができ、生産性の向上を図れるとIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)はまとめています(参照*6)。チェック工程をなくすことで初めて、経費精算に費やしていた時間を別の価値ある仕事に振り向けられます。

 

経理精算クラウドの選び方|機能比較ではなく判断基準を持つ

機能の有無よりも「精算プロセス自体をなくせるか」という視点

経理精算クラウドを選ぶとき、機能一覧表を並べて丸やバツで比較したくなるかもしれません。しかし、機能の数がどれだけ多くても、従業員が手入力し、上長が毎回承認する運用が変わらなければ、非生産的な時間は減りません。判断基準は「精算プロセス自体をなくせるかどうか」に置くべきです。

複雑な判断を要しない単純作業の多くはシステムにより完結され、人がそのために費やしてきた時間は相当削減されるとデジタル庁は述べています(参照*3)。外部連携で入力をゼロにできるか、AI監査で人的チェックを省けるか、グローバル対応でポリシーを自動適用できるか。この3点を軸にして候補を絞ることが、機能比較に振り回されないための具体的な方法です。

 

導入後の運用設計と組織変革の重要性

経理精算クラウドは導入しただけでは成果を生みません。システムを入れた後に、社内の経費ポリシーやルールをどう変更すれば、出張者がツールに費やす時間を最小限に抑えつつガバナンスも担保できるかを検討する必要があります(参照*5)。承認フローの段数を減らす、一定金額以下は自動承認にするなど、運用ルールの再設計が求められます。

さらに、テクノロジーへの投資とセキュリティインフラへの投資を最優先にすべきだという指摘もあります。セキュリティやプライバシーに関するリスクは今後も増大が続くと見込まれ、企業はリスクを抑えながら顧客への提供価値を高めるテクノロジーを求めています(参照*5)。導入前の機能選定と同じ比重で、導入後の運用設計とセキュリティ体制の構築に時間を割くことが、経理精算クラウドを企業成長の武器にする条件です。

こちらのホワイトペーパーでも詳しくまとめています
「システムを導入しただけでは意味がない?よくある悩みとその解決策を解説!」

 

導入時の注意点と失敗しやすいポイント

機能比較に終始して本質を見失うケース

導入プロジェクトでよく起きるのが、候補製品の機能を1つずつ比較することに時間を費やし、肝心の「経費精算をなくす」という目的を見失うケースです。機能の差異は製品ごとに存在しますが、それだけで判断すると、精算プロセス自体は残ったまま単に画面が変わるだけの結果になりかねません。

出張・経費管理ソフトウェアの市場は2024年から2029年にかけて29億3,170万米ドル成長し、年平均成長率は10.2%と予測されています(参照*2)。選択肢が増えるほど機能比較は複雑になります。比較表を作る前に、自社の経費精算業務のうちどの工程をなくしたいのかを明確にし、それを実現できるかという基準で候補を絞る手順が欠かせません。

 

法制度対応・電子帳簿保存法やインボイス制度との整合

経理精算クラウドを導入する際には、日本の法制度への対応状況を確認する必要があります。国税庁は電子帳簿保存法について、電子帳簿・電子書類関係、スキャナ保存関係、電子取引関係のQ&Aを公開しています(参照*7)。また、令和5年10月1日から適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度が開始されており、一定の事項が記載された帳簿および適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件となっています(参照*8)。

導入候補を評価する際は、電子帳簿保存法への対応状況、インボイス制度との整合も確認対象に加えてください。

おわりに

経理精算クラウドでできることは多岐にわたりますが、機能の豊富さだけで選ぶと、経費精算をなくすという本来の目的から外れてしまいます。外部連携による入力ゼロ、AI監査による人的チェックの削減、グローバル対応という3つの軸で候補を絞ることが出発点です。

経費精算に費やしていた時間を、財務部門の経営参画や本来業務への集中に振り向ける。その発想で経理精算クラウドを選び、運用設計まで踏み込むことが、システムを企業成長の武器に変える道筋になります。

参照

 

 

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これまで日本市場の開拓にあたり、多くのパートナー企業の皆さまにご支援・ご協力をいただき、現在の実績を築くことができました。異業種・異業界のパートナー企業の皆さまが、「コンカー」という共通テーマのもとに集い、経費精算だけに留まらない幅広いテーマで学び合い、懇親し、まるで“仕事仲間”のように交流できる場―― それが、コンカーが提供するコミュニティキャピタル 「シゴトナカマ」 です。
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