出張・経費管理トレンド
複雑さを増す 2025 年の出張事情 ― SAP Concur による年次調査で明らかに
今回で 7 度目となる SAP Concur グローバル出張調査の結果が公開され、本年の出張予算が増加する見込みが示されました。しかし旅費/経費管理 (T&E) 業務の複雑化も明らかになり、「良い面はあるが、一方...」といったような状況が組織内で生じていることも示唆しています。
「本年の調査からは、出張予算が増加すること、従業員が出張に前向きであること、出張エクスペリエンスをより向上させるために自費を費やす意思のある従業員が少なからずいることなどが明らかになりました。」と Concur Travel のプレジデント、チャーリー・スルタン (Charlie Sultan) 氏は述べています。「単なる出張の話と片づけたくなるかもしれませんが、話は単純ではありません。出張に関する方針が厳格化されつつあり、頻繁な出張は相変わらず企業の悩みの種です。雇用主は出張者の期待に応えられていません。」
出張に関して世界規模で実施されたアンケート「グローバル出張調査」で明らかになった主な知見は以下のとおりです。このアンケートは 24 の市場の 3,750 名の出張者、7 つの市場の 700 名の出張管理者、さらに本年からは 6 つの市場の 600 名の CFO を対象に、2025 年 4 月 30 日から 5 月 12 日にかけて実施されました。
ほぼすべての出張者が、本年の出張に前向きであるものの、企業のリーダーは彼ら出張者の間に不満がくすぶっていないか、注意する必要があります。
世界の出張者のほぼすべて (97%) が、今後 12 か月以内に出張する意思を「ある程度」以上持っています。ところが、出張管理者や CFO は、従業員が出張を躊躇したり拒否したりしないかを最も懸念しています。
出張者の 94% は、自分の役割を果たすために出張が有益である (39%)、さらには不可欠である (55%) と回答しています。興味深いことに、不可欠であるとした回答者は女性 (49%) よりも男性に多い (58%) こともわかりました。
リーダーにとって気がかりな結果もあります。理由は様々あるものの全体として 90% の出張者が、状況によっては出張を拒否する可能性があると回答しているのです。理由の主なものとしては、次のようなものがあります。
- 世界の特定の地域に出張する場合の安全や社会的な懸念 (40%)
- 目的地までの旅行中の健康に関する懸念 (38%)
- 出張疲れを感じ、休息が必要 (26%)
出張者の 51% が、現在の出張の頻度をほぼ適正と感じているものの、約半分 (49%) は自分の希望と実状が異なっていると回答しています。現在の出張頻度が希望よりも多いと回答したのは調査対象となった全出張者の 30%、逆に少ないと回答したのは 19% でした。出張頻度が自分の希望にそぐわないとする回答者は、もっぱらオンサイトで働く従業員 (46%) やハイブリッド就業者 (45%) よりも、完全リモートで就業している従業員に多くみられました (64%)。
本年初めに発生した航空機衝突事故などの影響で、出張者の半分強 (58%) が飛行機による出張に関して懸念を示しているものの、41% は出張計画には影響しないとしています。
今後 12 か月の間に出張する意思が「ある程度」以下であるとした回答者のうち 68% が、今年の空の旅の安全性について懸念を抱いています。今年、出張する意思が「極めて強い」回答者についても、全体平均の 58% をわずかに下回る 53% もが不安を感じています。
2025 年の企業の出張予算は増加または従来と同額を維持すると予想されているものの、出張経費の許容支出額は削減されつつあります。
この調査は、国際貿易に関する不確実性が高まっていた時期に実施されましたが、世界の出張者の 89%、出張管理者の 93%、CFO の 90% は、本年の出張予算が増加または同額を維持するとしています。
しかし、投資上積みの有無にかかわらず、予算の多くが依然として不足しているという状況も示唆されています。出張管理者の 69% は、会社を成功に導くうえで出張が極めて重要であるにもかかわらず、それが出張予算に反映されていないという意見に同意しています。CFO の 81% は、予算の制約のせいで、従業員が必要な頻度で出張できていないことを認めています。
全回答者の過半数 (出張者 (60%)、出張管理者 (59%)、CFO (59%)) が、予算削減は通常、最低運賃の選択、手荷物預かり利用の自粛、ホテルの部屋や座席のアップグレードの自粛など、出張全体にわずかな影響しか及ぼさず、出張に関する企業方針の転換などには至らないとしています。それでも、削減が進行中であることは認めています。
出張者の 87% が、以前は認められていた出費がここ 12 か月の間に削減されたと回答しました。認められなくなった内容としては、移動を含む日帰り出張の「長い一日」を避けるための 1 泊 (30%)、ビジネスクラスやプレミアムクラスの利用 (30%)、顧客関連以外の目的での出張 (28%) などがあります。
旅行の公私のけじめを厳格化している企業もあります。出張者の 26% が、休暇旅行中のリモートワークに対する許可を厳格化したと回答しています。こうした「役得」的な旅行は、特にコロナ禍の頃に盛んに行われていました。出張者の 25% は、出張に私的旅行を付け足すことも許可されなくなったとしています。
従業員は出張エクスペリエンスを向上させるための差額を自費で負担することに積極的です。通常、私的旅行よりも若干贅沢できる傾向があるからです。
世界的にほとんどの出張者 (84%) が、出張と私的旅行のときで自身の行動が変わるとしています。出張は、次のような点が私的旅行と異なります。
- よりグレードの高いホテルに滞在したり、プレミアムルームを予約したりする (34%)
- 運賃が高額になっても直行便を予約する (33%)
- Uber やリムジンなどの個人貸し切りの交通手段を使用する (32%)
- 高級レストランで食事をするなど、飲食により多くのお金をかける (29%)
- 外食せずにルームサービスを頼む (26%)
- チップをはずんだり、通常必要とされていない場合にもチップを支払ったりする (22%)
会社が負担してくれない場合でも、出張者の 85% は出張エクスペリエンスを向上させるための自費負担に前向きです。宿泊施設のグレードアップ (38%)、移動時間も含む「長い一日」を避けるための宿泊日数の延長 (35%)、プレミアムシートの利用 (30%) などです。
しかしこれと同時に最近では、ほとんどの出張者 (84%) が出張時の支出を抑え、予算内でやり繰りする対策を講じはじめています。一般的な取り組みとして、次のようなものがあります。
- 日当または出張手当を下回る安い食事を取る (36%)
- 個人用のカードまたは特典などを使用してポイントやマイルを獲得する (34%)
- 日当または出張手当を下回る食事を自分で用意する (28%)
- 軽食や余った飲み物や食べ物を家に持ち帰る (26%)
- ホテルの石鹸や会議の記念品などのアメニティを家に持ち帰る (24%)
出張者の 4 分の 1 が、私的旅行の出張への相乗りが難しくなっていると回答しているものの、27% は最近、費用節約のためにこのような手段を取ろうとしており、私的旅行の予算を抑えるためにこの方法は今後も広く使われつづけると思われます。
本年のグローバル出張調査で明らかになったその他の知見については、こちらからホワイトペーパーをダウンロードしてご確認ください。
日本エディションもあります。こちらからダウンロードしてご確認ください。
【調査概要】
SAP Concur Global Business Traveler Survey (SAP Concur グローバル出張者調査) は、Wakefield Research 社によって、2025 年 4 月 30 日から 5 月 12 日にかけて実施されました。調査対象は、24 の市場の 3,750 名の出張者で、対象国は米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、ベネルクス三国 (ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、イタリア、スペイン、ANZ (オーストラリア、ニュージーランド)、中東 (UAE、サウジアラビア)、日本、韓国、インド、メキシコ、ブラジル、SEA (シンガポール、マレーシア)、南アフリカ、ポルトガル、スイス、オーストリアです。
SAP Concur Global Travel Manager Survey (SAP Concur グローバル出張管理者調査) は、Wakefield Research 社によって、2025 年 4 月 30 日から 5 月 12 日にかけて実施されました。調査対象は、7 つの市場の 700 名の出張管理者 (出張業務を指示または管理する責任者) で、対象国はドイツ、イタリア、カナダ、日本、ANZ (オーストラリア、ニュージーランド)、英国、米国です。
SAP Concur Global CFO Survey (SAP Concur グローバル CFO 調査) は、Wakefield Research 社によって、2025 年 4 月 30 日から 5 月 12 日にかけて実施されました。調査対象は、6 つの市場の 600 名の CFO で、対象国はドイツ、カナダ、日本、ANZ (オーストラリア、ニュージーランド)、英国、米国です。
