経理・総務の豆知識

経費精算とは?今更聞けない経費の定義や経費精算の方法

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従業員が業務にともなって立て替えた費用を、会社が後から精算する手続きが「経費精算」です。対象となる支出や処理の流れ、会計上の取り扱いには一定のルールがあり、誤解や属人化によって煩雑さが生じやすい業務でもあります。

本記事では、経費精算の定義と仕組み、対象となる経費の範囲、処理の具体的な手順、業務負担を軽減するための方法を解説しています。

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経費精算とは?

経費精算とは、得意先訪問時の交通費、集合研修時の出張宿泊費といった従業員が事業に関係する活動を行う際にかかった金銭を、会社に申請して払い戻しを受ける行為を指します。この申請にあたって、従業員は立て替えた金銭が事業に関係する活動のために支払われたことを証明するため、領収書をはじめとする証憑を提出します。申請が上司や経理部門に承認され、金銭が従業員に払い戻されるまでが経費精算の一連の流れです。

また経費精算には主に「小口精算」「交通費精算」「旅費精算」の3種類に大別されます。電車代や交通費は交通費精算、出張に伴う費用は出張旅費精算といった風に、支出した金銭の用途に応じた経費精算が行われます。

また、先に会社が一時払いする仮払金精算の場合は事業に関係する活動のために仮払金を使用したことを証明するため、領収書をはじめとする証憑を提出し、差額を調整します。

経費精算の「経費」とは?費用との違いは?

ちなみに、私たちが「経費を精算する」という時に使う「経費」という言葉。この言葉が何を指しているかご存知ですか?

「経費」と「費用」の意味と違い

法人の場合、経費とは財務会計における「費用」の一部を表します。「費用」とは、企業活動において収益を得るための労務費や材料費等にかける金銭を指します。財務会計では、この「費用」を「収益」から引いて「利益」を求めます。
ですが、企業が納める法人税は税務会計上の「所得」に税率を乗じて算定します。税務会計では、「所得」は「益金」から「損金」を引いて求めます。つまり、「損金」とは「法人税を計算する際に、益金から差し引くことのできる費用」となります。

 経費精算が利益や税額に与える影響

従業員が経費を使うと、会社の売上から費用としてマイナスになるので、結果として利益が減少します。経費をたくさん使うと費用は大きくなり、費用のうち損金となるものであれば、税務会計上の損金も大きくなります。その結果、税務会計上の所得が小さくなるのです。

利益や所得が小さくなるって、なんだかマイナスなイメージがありませんか?でも、企業は色々なものを経費にしたがります。なぜ、経営者たちはわざわざ利益や所得を小さくするために、経費にしようとするのでしょうか?
その理由は、所得が大きくなれば収める税額が増え、会社のお金は減ります。経費が増えれば所得が小さくなり、収める税額も少なくなるため、会社のお金が減らずにすみます。

しかし、ここで注意をしたいのが、上で述べた「費用のうち損金となるものであれば」という一文です。財務会計においては会社が支出したものはすべて費用となりますが、税務会計においては一部取り扱いが異なる項目があり、費用=損金とはなりません。財務会計上の収益・費用に一定の調整を加えて、益金・損金とし、所得を計算します。

経費の対象になる費用とならない費用

では経費の対象になる費用とはどのようなものでしょうか。以下に、対象となる費用とならない費用の例をあげていきます。

経費の対象になる費用

  • 旅費・交通費

旅費交通費は、営業や出張に伴う移動費・宿泊費などを処理する際に使用される勘定科目です。

  • 消耗品費

消耗品費とは、文具やプリンターのインクカートリッジなど取得価額が10万円未満、または使用可能な期間(法定耐用年数)が1年未満の消耗品を購入した際の費用です。デスクやパソコンといった固定資産にあたるものでも、価格が10万円に満たなければ、消耗品費として経費計上ができます。(ただし、中小企業者等の場合、取得価額「30万円」未満である資産であっても、特例で経費となる場合があります。)

  • 接待飲食費

交際費等のうち、「飲食その他これに類する行為のために要する費用(社内飲食費を除く。)」ものが接待飲食費と呼ばれます。つまり、接待飲食費とは、交際費等のうちの飲食に関するものから、社内飲食費(社内での食事や打ち上げ、飲み会など)を除いて、領収書があり、飲食の内容(参加した人、飲食の年月日等)が明らかなもののことです。

交際費等については経費精算の対象にはなるけれども、損金に算入できる・できないには様々なルールがあり、それに伴う規定が定められている企業がほとんどです。詳細は以下の記事で紹介しています。(記事:接待交際費とは?経費に算入するためのルールと実践事例)

  • 通信費

通信費は、インターネットの回線使用料や電話料金のほか、切手代・送料などの郵便料金も該当します。しかし、はがきや便せんは消耗品費に分類されるほか、祝電やお悔やみの電報も通信費ではなく交際費となるため注意しましょう。

  • 福利厚生費

福利厚生費には、社内イベントの実施など、従業員間の交流を促進するための費用が該当します。原則として損金算入が可能ですが、支出が過度であったり、目的が不明確であったりする場合には、福利厚生費として認められないケースもあります。

以上、経費として精算ができる主な費用を例として上げました。このうち、損金として算入されるためには売上に紐づいていることが前提ですが、交際費等(接待交際費)などは売上に紐づく費用であっても、損金に算入されないこともありますので注意が必要です。

経費の対象にならない費用

  • 法人税など

法人が納める税金のうち、法人税、法人住民税は経費として処理することができません。また、個人事業主の場合も、所得税や住民税は経費として扱うことはできません。ただし、事業所税などは損金への算入が認められています。参入時期など制度の詳細は国税庁のホームページに掲載されています。

  • 個人利用のために支出した費用

経費として取り扱う支出は、事業活動の一環として支払った金銭となります。例えば出張先で仕事を終えたあと観光地に立ち寄って支出した金銭は、事業との関連性がないため経費になりません。

経費精算業務のフローは?

では、実際にそういった経費を使用したとき、精算はどのように行われるのでしょうか。ここでは立替金の場合の従来のフローをご紹介します。

  1. 立替払いを行う
    交通費や接待飲食代、あるいは備品の購入など、従業員が会社の費用を代わりに現金等で立替払いを行います。
     
  2. 紙の領収書をもらう
    立替払いを行った証明として領収書などの証憑を受け取ります。
     
  3. 紙の領収書を保管する
    受け取った証憑を、無くさないように財布やデスクに保管します。
     
  4. 台紙に領収書を貼り付け、経費精算書を作る
    受け取った領収書を台紙など規定の申請書にのりで貼り付けし、経費精算書を作ります。
    なお、経費として認められる範囲や上限金額、申請期限などは企業ごとに異なるため、事前に社内ルールを確認しておくことが重要です。申請漏れを防ぐためにも、マニュアルの内容を把握しておきましょう。
     
  5. 経費データをエクセルなどに入力する
    交通費の場合は手帳を見て日付を調べたり、路線情報を調べたりしながら、エクセルや会社のシステム等に立替経費のデータを入力します。
     
  6. 紙の経費精算書を提出する
    紙の経費精算書に伝票番号などを記入し、上長がいることを確認したら提出します。
     
  7. 上長が経費精算書を確認し、押印等を行って承認する
    紙の経費精算書を受け取り、必要があれば押印をして承認します。月末はこのためだけにオフィスに行く必要もあります。承認された経費精算書は経理へ渡ります。
     
  8. 経理が経費精算書を確認し、承認する
    経理でも間違いがないか確認を行い、問題がなければ承認されます。
     
  9. 規定の日に従業員への払い戻しが行われる
    給与日など会社規定の日に立替経費の払い戻しが行われます。
     
  10. 経費精算書は経理にて原本を最低7年間保管する
    経費精算書に張り付けられた領収書は、ファイリングを行って保管します。期間は最低7年です。

以上が経費精算業務のフローになります。しかも営業活動を頑張れば頑張るほど量が増えてしまいます。通常の業務をこなしながら、こういった作業をしなければならないのはかなり骨が折れますね。

経費精算に手間がかかる理由

経費精算に対して、多くの方が「煩雑で手間がかかる」という印象を抱いているでしょう。主な理由を順に見ていきます。

社員の全員がルールを正確に理解することが難しい

経費精算のルール把握には、専門的な知識が求められます。経費として認められる支出の把握、領収書の記載要件の理解、社内で定められた申請手続きのルールを理解することが必要となります。

しかし専門外の事柄について正確に理解することは難しく、社員ごとに理解の差が生じてしまいます。申請内容のばらつきにつながり、申請の差し戻しや修正が発生すれば、その分だけ処理に時間と手間がかかります。

申請内容の妥当性をチェックする必要がある

経費精算におけるトラブルを防ぐには、支出が業務に関連しているか、社内の精算ルールに適合しているかを確認する必要があります。たとえば私的利用が含まれていないか、支出区分が誤っていないか、領収書の形式が妥当かといった点を確認します。

内容によっては申請者への追加確認も発生するといった手間も生じますが、確認を省略すれば、誤った申請や不正な支出の見逃しにつながるおそれがあります。

正確さを求められる手作業が多い

経費精算では、領収書に記載された日付・金額・費目などの情報を、正確にシステムや帳票へ転記する必要があります。加えて、内容の集計や従業員への振込手続きなど、複数の工程で正確な処理が求められます。

手作業をゼロにすることは未だ難しいため、入力ミスや確認漏れが起きた場合は差し戻しや修正が必要となり、業務全体の負担を増加させる要因となります。

業務が属人化していると進捗が滞るときがある

経費精算の処理が特定の社員に依存している場合、担当者の不在や退職により業務が一時的に滞る問題が発生します。たとえば、申請の判断基準や承認フローが属人的になっていると、代替要員では対応できない場面が生じます。

分業体制では業務の属人化が起きやすいため、担当者の不在時にも対応できるよう、判断基準や手順のマニュアル化といった対応が求められます。

経費精算にかかる手間を解決するポイント

経費精算手続きにおける手間の多さや業務の属人化を解決するポイントをご紹介します。

経費精算の業務フローを把握する

はじめに行うべきことは、現在の業務フローの可視化およびボトルネックの特定です。たとえば、申請から承認、精算までにどの程度の手間が発生しているのか、どの工程に時間がかかっているのか、ヒューマンエラーが多いのはどの場面か、といった点を洗い出します。

こうした分析を行うことで、具体的に対策を打つべき工程が明らかになり、ツールの導入やルール整備といった対応も進めやすくなります。

明文化されたルールがない場合はマニュアルを作る

業務フローの把握と並行して、経費精算に関するルールが明文化されているかを確認する必要があります。特に少人数で運営している中小規模の企業では、業務が口頭や慣習で進められているケースが少なくありません。ルールが曖昧なままでは、担当者ごとの判断に頼る場面が増え、属人化や担当者の負担増、ケアレスミスにつながります。基本的な申請基準、証憑の取り扱い、処理手順などを明文化し、簡易なマニュアルとして整備することが、効率化の第一歩となります。

自社の業務フローに合うツールを導入する

業務フローを把握しルールを整備したあとは、自社に適した経費精算ツールの導入を検討します。必要な機能が備わっているか、既存の業務と矛盾なく連携できるか、導入コストを抑えやすいかなどの観点から、ツールの比較・検討を行うことが重要です。

具体的には、交通費の自動計算や領収書の読み取りといった入力支援機能、部署単位での承認フロー設定、従業員数に応じた柔軟な料金体系などが挙げられます。

ツールの導入前に運用プランを立てる

ツールの導入自体はあくまで手段であり、業務改善の効果を引き出すには、導入後の運用を見据えた準備が不可欠です。機能が豊富であっても、社内に定着しなければ業務負荷の軽減にはつながりません。

どの部門から段階的に導入を進めるか、初期登録を誰が担うか、社内マニュアルや説明会をどう設計するかなど、定着を前提とした運用プランを事前に立てておく必要があります。

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経費精算ツールを導入するメリットは?

​​経費精算ツールの導入には、経理業務の効率化のほか、人的ミスの削減や不正防止といった効果が期待できます。ここでは主なメリットを2点に絞って紹介します。

不正な申請の防止につながる

経費精算ツールには、入力内容の自動チェックや承認ルートの管理といった機能が備わっており、人の目による確認作業に比べてミスや不備を発見しやすくなります。

たとえば、上限金額を超えた申請に自動でアラートを出したり、領収書との整合性をチェックする仕組みを導入することは、入力ミスの削減につながります。また、申請者・承認者・経理担当者の操作履歴が記録されることで、透明性の高い精算プロセスが実現され、不正な申請の抑止にもつながります。

作業時間を大幅に節約できる

経費精算業務には、申請内容の入力、証憑の確認、仕訳の作成、振込処理など、さまざまな工程が含まれます。入力支援や仕訳の自動作成、振込データの自動生成といった機能の活用は、これらの作業にかかる工数を大幅に削減可能です。

申請内容の転記や金額の再確認といった反復作業が不要になるため、経理担当者の作業負担が軽くなるだけでなく、月末や期末のピークタイムにも安定した処理が可能になります。属人化の回避にもつながり、業務の標準化も期待できます。

経費精算は手間がかかる業務。簡単に処理する方法は?

経費精算は、本来であれば「立て替えた分の払い戻しを受ける」だけのシンプルな手続きのはずです。しかし実際には、申請、承認、記帳、振込といった複数の工程を経る必要があり、手間と時間のかかる業務となっています。コンカー調べによると日本のサラリーマンは生涯52日、のり付けに12日間も費やしています。

経費精算ツールの導入は、これらの手間の削減だけでなく、不正の抑止にもつながるため、企業全体としてのコンプライアンス強化にも貢献します。

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