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【イベントレポート】経費精算の未来を再定義する — コンカーのAI戦略と「Joule」の全貌
2026年1月29日に「経費精算の未来を再定義する — コンカーのAI戦略と「Joule」の全貌」(主催:株式会社コンカー)を開催し、38社56名の皆様にご参加いただきました。
当日は、KPMGコンサルティング株式会社 執行役員パートナー 黒木 真人氏にご登壇いただき、「AI Transformationの潮流」と題して講演をいただいた後、コンカーのカスタマー&ソリューション統括本部プロダクトマーケティング部部長 舟本 憲政より「経費精算の未来を再定義する:コンカーのAI戦略とJouleの全貌」というテーマでお話ししました。本ブログ記事では当日の様子をご紹介します。
【基調講演】AI Transformationの潮流

KPMGコンサルティング株式会社 執行役員パートナー 黒木 真人氏より、「AIの業務活用への期待値」「AI活用のユースケース」「AI業務活用に向けたアプローチ」というテーマで、AI活用についてご紹介いただきました。
AIの業務活用への期待値
AIの期待値に関して、KPMGの主要11カ国、約1,300人のCEOに対する調査「KPMG CEO Outlook 2025」から、テクノロジーとAIに関する情報を抜粋してお伝えします。
この25年間で、71%がAIへの投資が最優先と回答し、前年の約64%から増加しています。さらに、投資回収期間についても67%が1~3年以内を見込んでおり、AIの実装が始まって手応えを感じている状況が統計から明らかになりました。

人材の観点で見ると、AIの生産性向上には人材の教育・採用・職務設計の見直しが必要であることが読み取れます。また、スキル向上やキャリアパスの再設計、人材採用、人材配置への投資が進む一方、人員削減は主要な戦略ではなく、AI活用を前提とした企業の成長が重視されています。
また、日本のCFO(経理・財務部門責任者)を対象とするアンケートでは、文章生成や翻訳はすでに活用が進む一方で、分析や将来予測にもAIを利用したいという期待があるものの、生成AI活用スキルがある人材が不足していることが課題として認識されています。
続いてAI技術の進化として、統計型のクラシカルAI、生成AI、AIエージェント、そして最近注目が集まっている自律的に計画・実行するエージェンティックAIがあります。とくに生成AI以降のAI活用において、プロンプト設計力やコミュニケーション力、情報のマネジメント、リテラシー、ハルシネーションを見極める観点が求められるといった課題に対するリスキングも重要だと考えています。
エージェンティックAIは、ある一定の目的に対して自律的に解釈して動いていくもので、人とAIが共存し、業務を効率化する方法についての考え方が変わり始めています。
AI活用のユースケース
いくつかのユースケースを紹介します。まず、経理・財務分野では、AIを活用していく中で、従来の記録・報告中心の業務から、より戦略的な意思決定を支援する役割への期待が高まっています。記録・報告業務の効率化に加え、報告において潜在的な洞察を示すことにもAIの活用が求められます。また、予測や予算編成では予測モデルの構築やシナリオ作成、財務報告ではチェック業務や資料作成の負担軽減などにおいて、AI活用のケースが想定されています。
ここでは具体例を3つ取り上げます。1つ目は、請求書照合の例外検知に関するユースケースです。ERPに蓄積された入庫伝票と請求書を照合した不一致データをもとに、AIが対応方法を提案する仕組みです。従来は担当者が証憑やメールを確認しながら原因を特定していましたが、チェックの初動にAIを取り入れることで、過去の不一致データをもとに例外処理をサポートします。経験差による業務効率のばらつきを抑え、業務の標準化やBPOの検討にもつながります。
2つ目は、需要予測におけるAI活用として「KPMG Intelligent Forecasting」というソリューションがあります。データリポジトリには自社データに加えて外部データも蓄積されており、相関性の高いデータを抽出して需要予測モデルに反映します。膨大なデータ分析の手間を減らしながら予測精度を高め、予測作成の作業時間を短縮することで、人が意思決定に時間を割ける環境を作り、業務の意思決定の高度化に貢献します。
3つ目は、エージェンティックAIの調達・支払い領域における活用例です。まず、サプライヤーの契約やサービスレベルを分析し、次にSLAやサービス状況を確認して潜在的な問題や保障の可能性を抽出します。そのうえで、過去の分析や調査結果を参照し、必要に応じて追加調査を行うといった一連のプロセスをエージェントが代替します。これにより、人は例外対応や意思決定が必要な部分に集中できるようになると期待されています。
これらの事例からお伝えしたいことは、AI導入にはしっかりした業務理解とデータの標準化がポイントであり、適切なデータの中でAIを活用することで、業務の効率化と高度化が実現できるということです。
AIの業務活用へ向けたアプローチ
AIを業務システムに取り込むには、まず目指すビジョンを明確にし、それを組織で共有したうえでロードマップに落とし込むことが重要です。また、AI活用の公平性やセキュリティ、リスク、ガイドライン策定といった「Responsible AI」の観点も欠かせません。さらに、「Change Management」として、ステークホルダーの認知・行動変容を踏まえながら、どのように定着させていくのかも重要なポイントです。
活用を考えていくうえでのフレームワークとして、「ターゲットオペレーティングモデル」という、業務プロセス、人材、サービス提供モデル、テクノロジー、パフォーマンス・インサイト&データ、ガバナンスの6つの象限で分かれているものがあります。これによって、検討の抜け漏れ防止になります。

業務プロセスは、AIの影響を最も大きく受ける領域です。繰り返し発生する取引を自動化し、これまで手作業で行っていた仕訳や調整・照合などの定型業務を効率化することで、人がより例外処理に集中できるようにすべきと考えます。まずは業務の全体像を分析し、最もAIの恩恵がある領域を特定することから始めます。
人材については、AI活用による影響評価を実施し、単に業務を効率化するだけでなく、空いた労力をどのように活かすのかまで含めて検討する必要があります。AIに業務を奪われるのではないかという懸念から、AI推進の反対派を作らないためにも、どの業務にどのようなインパクトがあるのかを理解したうえで進めることが重要です。
- サービス提供モデルは、プロセスと人の役割を踏まえて最終的に決定されるものであり、その内容が業務に影響します。
- テクノロジーについては、AIを前提とする場合、従来の静的な仕組みから、より動的で拡張性や信頼性の高いものへと転換していくという観点が求められます。
- パフォーマンス・インサイト&データは、AIを定着化させるためのKPIを見て、どのようにギャップを埋めるかといった設計が重要になります。
- ガバナンスについては、AIを活用していく中でのリスク対応やガバナンス設計は専門性が高く重要であるため、AIモデルを評価しながら進めます。
- チェンジマネジメントは、どのプロジェクトでも必須であり、Vision(=構想策定フェーズ)からEvolve(=稼働後の定着化と拡張)までの全フェーズで実施することが重要です。
まとめとして、「人の価値向上に注力した業務設計とAI活用を行うこと」「新たなリスクへの理解を含め、適切なフレームワークを踏まえた対策を講じること」「信頼性の高いシステムの検討と選定を行うこと」の3点が重要であると説明しました。
経費精算の未来を再定義する — コンカーのAI戦略と「Joule」の全貌
株式会社コンカー カスタマー&ソリューション統括本部 プロダクトマーケティング部 部長 舟本 憲政より経費精算のAI戦略と「Joule」について紹介しました。

間接費領域における経理・財務部門が抱える構造的課題
間接費領域を取り巻くマクロの社会課題には3つのテーマがあります。
まず、生産年齢人口の減少による人手不足です。次に、先進7カ国の中で最下位である収益性、そして経費精算に起因する不正などのガバナンス問題があります。AIの普及により単純業務の縮小が見込まれており、とくに事務定型業務が最も急速に縮小するといわれています。一方で、経理・財務はコスト削減にとどまらず、価値創出を主導する重要な部門としての役割も期待されています。たとえば、コスト分析や戦略立案といった重要な領域です。
現状の経理・財務は単純・定型業務に多くの時間を費やしており、戦略領域に時間を割けていないのが実情です。課題解決にはAIによる自動化が有効ですが、信頼できるデータとノウハウ、人の関与が不可欠です。こうした取り組みを通じて、経理・財務の戦略領域へのシフトを支援するのがSAP Concurです。
戦略経理・財務へのシフトを支援するSAP Concur
SAP Concurには、「強力なAI基盤」「質が高い大量のデータ」「経験とナレッジ」という3つの強みがあります。

まず、強力なAI基盤とは、Google、Microsoft、Amazonなど最先端のAI技術をもつベンダー各社とパートナーシップを結び、最適なAIを自由自在に組み合わせて活用できる点にあります。
次に、データも大きな強みです。たとえば、年間10億件以上の経費明細や3,000万件以上の出張データなど、非常に大量のデータを活用できます。さらに、ビジネスで使う質の高いデータで学習しているため、高い信頼性を備えています。今後は、SAP のデータ基盤であるSAP Business Data Cloudにより、経費精算のデータだけでなく、財務や人事、購買などのデータも統合し、AIが横断的に分析できるよう進化していく予定です。
経験とナレッジについては、SAP Concurの特徴的な部分と考えています。たとえば、継続的に業務を高度化するための「成熟度マップ」の提供や、専門性や経験をもつ人による支援サービス、パートナーと協業して課題解決に対応するパートナーエコシステムなどがあります。
また、本日のようにお客様同士が交流できる場を提供していることも、SAP Concurを選ぶポイントの1つになっています。
AIを活用した新しい出張経費精算
コンカーは、創業当時からのビジョンとして、「経費精算のない世界」を目指すことを掲げています。今後は自立運用の考えのもと、ユーザー側だけでなく管理者側でもAIによる自動化に取り組めるよう進化していく予定です。
「Joule」は対話型のAIで、テキストや音声で指示をすることで業務処理を実行します。一方、「Joule Agent」はSAP版のエージェンティックAIで、自律的に複数の業務を処理するテクノロジーです。ここでは、現在リリース調整中の新機能についてご紹介します。
JouleとAIエージェントを搭載した機能として「経費精算内容の検証エージェント」があります。AIが経費内容の問題点や抜け漏れを自動的に検知し、ユーザーに提案します。
「出張手配エージェント」は、通常Concur Travelの画面操作で行う出張手配について、画面を開かずにJouleとの対話だけで完結できる機能です。
また今年の下半期以降、経費精算の作成をより自動化し、まさに「経費精算のない世界」を実現するための機能アップデートを予定しています。
さらに、戦略インサイトとして、横断的なデータ活用により経営に貢献するインサイトの提供も計画しています。たとえば今後の展望として、ROI(投資対効果)の可視化や出張経費予算の最適配分を考えています。
さいごに

コンカーの桃井より、ご参加いただいた皆様にお礼を申し上げ、閉会の挨拶とさせていただきました。イベント終了後は簡単な懇親会の場を設け、ご参加者様同士の活発な情報交換が行われました。
コンカーでは今後もこのようなイベントを多数開催していく予定です。ご関心をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。
ご参加いただいた各社の皆様、ご登壇いただいた黒木様、この度はありがとうございました。