出張・経費管理トレンド

【経費不正は自動で防げる?】AI×監査のメリットとは?AIが求められる背景や具体的な活用例などを解説

SAP Concur Japan |

2023年、NHKで発覚した元記者による経費不正請求問題は「取材源の秘匿」という報道機関の職業倫理を悪用したことで、不正請求は410件・総額約789万円に及ぶ組織的な問題となりました。また、2015年の東芝不適切会計問題では、経営トップの関与のもと1,500億円を超える利益操作が行われ、「140年の歴史の中で最大のブランドイメージ毀損」と評される事態となりました。これらの事例に共通するのは、内部統制の機能不全と監査体制の脆弱性です。 

参考:NHK社会部元記者の不正請求問題,歴代部長ら9人を懲戒処分|NHK放送文化研究所 
東芝「不適切会計」とは、何だったのか  1500億円以上の利益をカサ上げした背景とは|東洋経済オンライン 

こうした事例が見受けられるため近年では、企業には強固なガバナンス体制の構築が求められています。その実現手段として注目されているのが「AI×監査」です。本記事では、なぜ不正が発生するのか、それを防ぐためのガバナンス強化策、そしてAI監査による具体的な解決方法、おすすめのAI監査ツールについて詳しく解説します。 

後述しますが、コンカーではAI不正検知サービス「Verify」を提供しています。このサービスは申請されたデータをAIとML(機械学習)、そして経験豊富なコンカーの人的チェックを複数組み合わせた不正検知サービスです。 

なぜ企業の不正・不祥事は発生するのか 

企業の不正・不祥事は後を絶ちません。先述した事例のほかにも規模を問わず、今でも発生しています。なぜこうした不正・不祥事は発生するのでしょうか。まず、その原因を解説します。 

不正が発生する3つの要因 

不正が発生するメカニズムは「不正のトライアングル」理論で説明できます。 
不正トライアングル

  • 動機

第一に「動機」があります。業績プレッシャー、個人的な金銭的困窮、経営陣の保身などが該当します。東芝のケースでは経営トップからの過度な業績要求が、NHKのケースでは個人的な金銭欲求が動機となりました。

  • 機会

第二に「機会」です。内部統制の不備や監視体制の甘さ、チェック機能の形骸化などにより不正を実行できる環境が生まれます。

  • 正当化

第三に「正当化」があります。「会社のため」「みんなやっている」「バレない」といった自己合理化により、不正行為への心理的ハードルが下がります。

この3要素が揃ったとき、不正発生リスクは大幅に高まるのです。

従来の監査体制ではすべてを防止できない

従来の監査体制には構造的な限界があると考えられており、主に「人的リソースが限られている」ことが大きな問題とされています。限られた監査担当者で膨大な取引や経費申請をすべてチェックすることは物理的に不可能であり、結果としてサンプリング(監査対象となる母集団からその一部の項目を抽出して監査すること)に頼らざるを得ません。

特に紙ベースやExcelでの管理では、異常なパターンや傾向を把握することも困難です。それでも企業のブランドや信頼度を守るために、ガバナンス強化に取り組む必要があります。

企業のガバナンス強化に必要な対策

企業のガバナンス強化には以下のような対策が有効です。
 

対策

内容

内部統制システムの整備

職務分掌の明確化・承認プロセスの多層化、定期的な内部監査の実施など

リスク管理体制の構築

リスクアセスメントの実施など

コンプライアンス教育の徹底

定期的な研修の実施など

内部通報制度の整備

社内外に通報窓口の設置など

テクノロジーの活用

AIやICTツールの活用など

 
   

内部統制システムの整備

企業ガバナンスの基盤となるのが内部統制システムです。まず重要なのは職務分掌の明確化です。申請者、承認者、実行者、チェック担当者の役割を明確に分離し、一人の担当者に権限が集中しない体制を構築します。

次に承認プロセスの多層化が必要です。金額や重要度に応じて複数の承認者を設定し、相互に監視できるような体制を築きましょう。

さらに定期的な内部監査の実施も欠かせません。監査部門は経営層から独立した立場で業務プロセスの適切性や規程の遵守状況、リスクの評価などを定期的にチェックし、問題があれば是正勧告を行います。

これらの仕組みを文書化し、最後に全従業員に周知徹底することで、不正の「機会」を大幅に減らすことができます。

リスク管理体制の構築

効果的なガバナンスにはリスク管理体制の構築が不可欠なため、リスクアセスメントの実施が必要です。自社の業務プロセスにおいて、どこに不正のリスクが潜んでいるか、どの部門や取引が高リスクかを体系的に評価しましょう。このような仕組みを構築することで、不正が拡大する前に対処できます。

コンプライアンス教育の徹底

制度や仕組みだけでなく、従業員の意識改革も重要です。定期的な倫理研修を通じて、不正行為がもたらす影響の大きさや企業や社会に与える損害、個人が負う法的責任などを具体的に伝えます。「少額なら問題ない」「バレなければ大丈夫」といった誤った認識を正し、高い倫理観を醸成することが不正の「正当化」を防ぎましょう。

さらに経営層自らがコンプライアンスを重視する姿勢を示し、「正直に報告する文化」「失敗を隠さない文化」を組織全体に根付かせることが、ガバナンス強化につながります。

内部通報制度の整備

内部通報制度の整備も欠かせません。不正の兆候を発見した従業員が安心して通報できる窓口を社内外に設置しましょう。NHKの事例も内部告発がきっかけで発覚しました。

テクノロジーの活用

先述したように従来の人手による監査には限界があるため、テクノロジーの活用が求められます。例えば業務プロセスをデジタル化することで、すべての取引や申請がデータとして記録され、透明性が大幅に向上します。また、紙の書類やExcelでの管理から脱却し、クラウドベースのシステムに移行することで、いつ誰が何を承認したか、どのような経緯で決裁されたかが明確に追跡可能になります。

さらにデータ分析技術を活用すれば、膨大な取引データから異常なパターンを抽出し、不正の兆候を早期に発見できます。

このようにテクノロジー活用は豊富なメリットがあるため、多くの企業で積極的な活用が実施されています。中でも現在注目されているのがAI技術の活用です。機械学習により過去の不正事例のパターンを学習し、類似の兆候を自動検知することで、人間では気づけない微細な異常も発見可能になります。

AI監査とは

AI監査とは、人工知能技術であるAIを活用した監査手法であり、徐々にその存在が普及しつつあります。具体的には、機械学習やディープラーニングなどのAI技術を用いて、経費精算や会計仕訳、購買取引などの膨大なデータを自動分析し、不正や誤りの兆候を検知します。

従来の監査では人間の経験と知識に頼って一部をサンプリングチェックしていましたが、AI監査ではアルゴリズムが全件を瞬時に分析し、通常のパターンから逸脱した異常な取引を自動的に抽出します。

このようにAIを活用することで従来にはないスピードと精度をもって監査が可能になるのです。

AI監査を導入するメリット

AI監査を導入するメリットを紹介します。

監査精度が大幅に向上する

AI監査の導入の大きなメリットとして、監査精度の向上が挙げられます。従来の人間による目視での監査では疲労や見落とし、先入観による判断ミスが散見されており、高い精度で監査を実施することは困難でしたが、AIは常に一定の基準で客観的に判断でき、全項目を同レベルの質でチェックできます。この監査制度であれば大小にかかわらずあらゆる不正を発見・防止できるでしょう。

業務効率化を実現できる

次に監査工数の大幅な削減が可能になります。従来は数週間から数ヶ月かかっていた監査業務が、AIなら書類を読み込ませるだけで瞬時に処理を行うため、数時間から数日で完了できます。人間は最終的なチェックだけ行えば良いためこれまでよりも大幅な業務削減に役立ちます。

このように業務効率化を実現できることで、担当者は定型的なチェック業務よりも、さらに高度な分析業務や改善提案などの付加価値の高い業務に時間を割けるようになるでしょう。

不正の早期発見・予防

AIを活用することで、不正を未然に防ぐことも可能になります。例えば不正な申請がシステムに入力された瞬間に異常を検知し、承認前に不正発見・ブロックすることができます。これは事後的に不正を発見する従来の監査とは根本的に異なるアプローチですが、不正発見後の大規模なチェックを大きく削減することに役立ちます。

AI監査の活用例

AI監査はどのように活用できるでしょうか。活用例を解説します。

経費精算

一般的な企業では、従業員が提出する経費精算申請は件数が多く、一つ一つを人間が詳細にチェックするのは困難です。AIなら全申請を瞬時にチェックし、規程違反や不自然な支出パターンを自動検知します。

具体的には、以下のような異常を検知できます。

  • 同一店舗への頻繁な申請
  • 深夜や休日の高額飲食費
  • 領収書とクレジットカード明細の不一致
  • 申請金額の端数処理の異常
  • 同じ金額の繰り返し申請

こうしたAI監査により、処理時間を大幅に短縮できるだけでなく、正確性も向上します。結果として、残業時間の削減や従業員満足度を高めることに期待できます。

AI監査ツールの選び方

AI監査ツールには多種多様なツールが存在します。選定ポイントを事前に理解しておくことで、最適なツール導入につながります。

課題にあった機能を持っているか

AI監査ツールを選定する際は、自社の課題に合った機能を持つツールを選ぶことが重要です。まず監査対象を明確にしましょう。経費精算、会計仕訳、購買取引、在庫管理など、どの領域の監査を強化したいかによって最適なツールは異なります。経費精算に特化したツール、会計全般をカバーするツール、業界特化型のツールなど多様な選択肢があります。

既存システムと連携できるか

次に既存システムとの連携性を確認します。会計システム、経費精算システム、ERPなどと円滑にデータ連携できるか、API連携やファイル取込などの方法が自社の環境に適合するかをチェックします。また、ベンダーのサポート体制も重要です。導入時の設定支援、運用開始後のトラブル対応、定期的なシステムアップデート、ユーザートレーニングなどが充実しているかを確認しましょう。

コストパフォーマンスが高いか

最後にコストパフォーマンスです。初期費用だけでなく、月額利用料、ユーザー数による課金、カスタマイズ費用なども含めた総コストを試算し、期待される効果と比較検討しましょう。

ここで注意したいのが、単純な価格の安さだけで判断しないことです。「コストを低く抑えられるから」という理由で安価なツールを選んだ結果、機能が不十分で監査業務の効率が上がらず、かえって手作業が増えてしまったというケースは少なくありません。

真のコストパフォーマンスとは、投資額に対してどれだけの業務改善効果が得られるかという視点で評価するものです。価格とパフォーマンスの両面をしっかり見極め、長期的な視点で判断することが重要です。

ここで数多くあるAI監査ツールの中でも上記の選定基準をクリアしている、おすすめの監査ツールを紹介します。

経費監査ならConcur Expense +Verifyがおすすめ

Verifyは、コンカーが提供する、AI不正検知サービスです。Concur Expenseで申請された経費データに対し、AI・機械学習(ML)と経験豊富な専門スタッフ(Concur Auditor)による人的チェックを組み合わせた監査システムを提供します。

主な特徴としては以下の通りです。

  • 問題のあるデータのみを報告
  • 38種類のチェックシナリオを用意
  • 日付や金額などの基本チェックから領収書の使いまわしや高額請求や私的利用の発見など不正を発見
  • グリーン車利用の有無、事業者登録番号など日本独自の項目にも対応
  • クラウドサービスのためいつでもどこでも利用可能
  • Concur Expenseと連携可能

Verify

Verifyの導入メリット

Verifyの導入により、さまざまなメリットがあります。

Verify2

ガバナンス強化につながる

AIと機械学習、そしてプロフェッショナルな専門家による監視体制により、企業のコンプライアンス管理が大幅に強化されます。38種類のチェックシナリオが経費申請を多角的に精査し、不正な領収書の使い回しや私的利用などの不適切な申請を高精度で検知できます。コンカーの調査によると提出されたレポートは100%チェックできているため、大きくガバナンス強化に貢献できます。

業務効率化につながる

Verifyは問題のあるデータのみを自動抽出することできるため、監査担当者の負担を大きく軽減します。これまでチェックに費やしていた膨大な時間・工数を50%も削減でき、本当に確認が必要なケースにのみ集中できる環境が実現します。このように効率的な経費処理は月次決算の早期化にも寄与し、経理部門全体の生産性向上につながります。

不正による被害コストを抑えることができる

高精度な不正検知システムにより、不正申請やその被害による金銭的損失を最小限に抑えることが可能です。これにより企業のブランドだけでなく、財務的被害も未然に防ぎます。実際にVerifyを導入したことで被害コストの割合を14%にとどめているなど、豊富な実績もあり、IT初心者の方でも安心して利用できます。

Verifyは次世代のAI監査ツールとして多くの企業に注目されています。ぜひこの機会に一度導入を検討してみませんか?

AI監査を実施する上での注意点

AI監査には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや課題も存在します。必ずこの注意点も理解しておきましょう。

コストがかかる

まず初期投資コストは必ずかかることを理解しておきましょう。システム導入費用や既存システムとの連携費用、カスタマイズ費用などが発生します。しかしコストがかかる分、業務効率化や不正防止に大きく役立つため、今の時代においては導入がおすすめです。

AIは完璧ではない

AIの判断に対して過信するのは注意しましょう。AIも完璧ではなく、誤検知(正常な取引を異常と判断)や見逃し(異常を正常と判断)が発生する可能性があります。

そこでVerifyでは経験豊富な担当者が最終確認する二重チェック体制を構築しています。これにより可能な限り精度の高い監査が可能になっています。

AI監査で強固なガバナンス体制を実現し、企業の信頼性を高める

NHKの経費不正問題や東芝の不適切会計問題が示すように、企業の不正行動は組織の信頼を根底から揺るがし、ブランドイメージに回復困難なダメージを与えてしまうでしょう。しかし従来のような監査方法では人的リソースに限界があり、すべての不正を取り締まるのは困難です。

そこで注目されているのが「AI監査」です。従来は発見困難だった不正も早期に検知でき、監査工数も大幅削減可能になるなど豊富なメリットがあります。

数あるAI監査ツールの中でも「Verify」がおすすめです。AIとML、そしてプロフェッショナルな人材がチェックする監査システムのため、監査精度が高まり、不正防止に大きく貢献できます。

企業ガバナンスの強化は一朝一夕には実現できませんが、AI監査という先進技術を活用することで、従来よりも効率性と精度の両方を向上させた監査体制を構築できます。自社の監査体制に課題を感じている方は、まずは経費精算などの身近な領域から、AI監査の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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