財務省による請求書電子化の促進に向けた動き

Hiroaki Funakoshi |

先日メディアにて、「請求書の紙保存が不要となり、税務手続きが完全に電子化される」という財務省による請求書電子化促進に向けた取り組みが取り上げられました。


記事に記載されているポイントとしては、以下の通りです。

  • 10月の消費増税により、10%と軽減税率の8%が併存するため、企業における経理作業は複雑になった。

  • しかしながら、普及しているクラウド上の会計サービスへの対応に対して、税制は後手に回っていた。

  • 今後、2020年度の税制改正大綱において、電子帳簿保存法の改正方針を盛り込み、6月に閣議決定した成長戦略である、税務手続きの電子化・自動化を促進させることとした。

  • 現在でも、電子帳簿保存法の要件に従えば、紙の請求書をスキャナ等で電子化するなどして、データのみで保存することは認められている。

  • しかしタイムスタンプの付与など、コストがかかる要件を満たす必要があるため、特に中小企業において、電子化が普及していない要因になっている。

  • そのため今後の税制改正の議論において、現行の要件を緩和し、請求書の電子化を促進し、軽減税率への対応を容易にする方針である。

 

現在の電子帳簿保存法に沿って、紙の請求書を電子化する場合は、拙著「電子帳簿保存法はこう活用する!領収書・請求書電子化完全ガイド」にある通り、事務処理フローを整え、国税局・税務署へ申請した上で、要件に適合したシステムを利用し、画像にタイムスタンプを付与して保存する必要があります。

一方、電子的に請求書を受領した場合であれば、以下のいずれかの方法で保存することで、システム上に保存可能です。かつ、この場合は、国税局・税務署への申請は不要です。

  1.  紙の請求書を電子化して保存する際と同様に、指定のタイムスタンプを付与してシステムに保存する。
  2.  電子的に受領した請求書を、正当な理由無く訂正や削除をすることを防止するための「社内規定」を設けて、それに沿って保存する。

つまり2の要件に従えば、当局に申請せずとも、社内規定さえ整えて運用すれば、タイムスタンプを付与する必要もなく、電子的に受領した請求書を保存することが可能です。

分かりやすい例で言いますと、紙ではなく、PDFファイル形式で受領した請求書の場合、このPDFファイルが不正に訂正や削除されないように保存するルールを定め、システム上などで保存することができれば、当局への申請をしなくても、電子的に保存することが認められ、紙で印刷して綴じておく必要がありません。

しかしながらこの方法の認知度が低く、かつ、知っていたとしても、「本当にこんなに簡単な方法でいいのか?」という、企業の疑心暗鬼的な反応もあり、電子的に受領した請求書の、「電子のままでの保存」は、あまり広まっておりません。

今回の記事は、この点について触れているものであり、2020年度の税制改正において、電子的に請求書を受領し、そのまま保存することを促進していくための新たな案を、財務省が検討しているとのことです。

前述の1,2の要件の他に、さらに緩和されたものができるとすれば、来年度以降は記事にあるような、中小企業においても、クラウドサービス上での請求書の電子化(ペーパーレス化)が、より一層促進されることでしょう。

経費精算における業務が、軽減税率により複雑化し、お悩みを抱えている皆様、来年度の税制改正を、ぜひ心待ちにしてください。
本ブログにおいても、継続してウォッチして参ります。

電子帳簿保存法はこう活用する!領収書・請求書電子化完全ガイド