[イベントレポート]荏原製作所様登壇!企業の成熟度モデルから見るデジタルトランスフォーメーションの成功と失敗パターン

企業の成熟度モデルから見る

デジタルトランスフォーメーションの成功と失敗パターン

~DX成熟度診断であなたの会社をヘルスチェック~

アフターコロナのニューノーマル時代に向けてデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれる中、多くの企業がDX推進部門を立ち上げるなどの施策を進めています。しかし、DX推進の取り組みを始めたものの、実際のビジネス変革にはなかなかつながらないという実態も見られます。本セミナーでは、DXを推進する株式会社荏原製作所の事例を紹介するとともに、経済産業省の「DX推進指標」をベースに作成した「簡易DX成熟度診断アンケート」の調査結果を報告します。


 

荏原製作所のDXの取り組み状況と目指す方向性

 

荏原製作所(以下、荏原)は2020年2月、10年後に向けた長期ビジョン「E-Vision2030」を策定しました。E-Vision2030では「技術で、熱く、世界を支える」をスローガンに掲げ、2030年に向けて解決・改善すべき重要課題と課題解決の経営戦略を設定しています。そうした経営戦略の一つに「リソース戦略」があります。これは「財務・投資戦略」「製造・技術・情報に係る戦略」「人的資源に係る戦略」という3つの戦略で最適な経営リソースの配分を実現しようというものです。この中の「製造・技術・情報に係る戦略」には「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進による製品やサービス、ビジネスモデルの変革に取り組む」ことを盛り込んでいます。

 荏原は、E-Vision2030のスローガンを実現するために、DXにより業界をリードする効率性の高い経営・事業遂行を実践することを目指しています。DXは大きく、データとデジタル技術を駆使して製品・サービス・ビジネスモデルをグローバルに変革する「攻めのDX」と、それらを支える情報インフラを整備する「守りのDX」に分け、攻めと守りの両面からDXに取り組んでいます。

 具体的には「新規ビジネスの創出」に向けてAI画像解析の応用、IoT・データマイニングの推進、VR/AR(仮想現実/拡張現実)技術の応用などに取り組み、「既存ビジネスの変革」を実現するためにIoTを活用した生産自動化、3Dデジタル製造や3Dパラメトリック自動設計の活用、多目的最適化技術の応用などを進めています。一方、社内の「革新的な生産性向上」を実現するために、ERP・CRM・グローバル調達システム・タレントマネジメントなどを活用する取り組みに着手しています。これまでも部分的な業務プロセスの改善・刷新には取り組んできましたが、現在のDXは研究開発や生産、製品への組み込みなど全社のあらゆる業務に関わる取り組みとして進めているところに特徴があります。

(図)荏原のDXの取り組み

DX推進の一環としてERPの全社導入に着手

E-Vision2030の実現に向け、2020年から2022年までの3カ年中期経営計画「E-Plan2022」も策定しました。ここにはDX推進の一環として「ERPの全社導入による業務インフラの整備」を挙げています。

 多くの企業は従来、世界各国ごとに事業会社を設立し、それらが緩やかに連携した「インターナショナル経営」を取り入れてきました。しかし2000年以降、世界の事業会社を一体運営する「グローバル経営」へと徐々に移行し始めています。グローバル経営はローコストオペレーションが可能でガバナンス・内部統制強化を実現し、適材適所の人材活用やビジネス環境の急変にも迅速に対応できるといった様々なメリットがあります。ERPは、こうしたグローバル経営に必要な業務標準化を実現する仕組みなのです。

 荏原はまさにインターナショナル経営からグローバル経営への過渡期にあり、2024年までにERPをグループ全社に導入して、グローバルで業務標準化を目指しています。ERP導入プロジェクトは社長をはじめ経営陣が参画し、DXの知見をもつ高度な専門人材を採用するなど専任組織体制で進めており、それぞれの部門ごとに異なっていた業務プロセスを見直してERPに業務システムを統一しようとしています。ERP導入によってタイムリーかつ正確な経営の可視化を実現し、業務効率化・高度化とコスト削減を両立するという効果が得られるものと期待しています。またこれまでは、人手による定型業務を抽出してRPAで自動化するという取り組みを行ってきましたが、今後は経営のデータから現場のデータまであらゆるデータを一貫して統合管理できるERPへ集約していく予定です。

 このほか経費精算業務を効率化するために、SAP Concurを導入しています。SAP Concurにより交通系ICカードやコーポレートカードでの精算が可能になり、承認者の業務が簡素化されるなど、経費精算ルールをシンプル化することができています。

 

簡易DX成熟度診断結果に基づくDX成功の要諦

現在、多くの企業がDXに取り組み始めています。過去3年以内にDXを検討・試行・実行した企業は87%(出典:富士通「グローバル・デジタルトランスフォーメーション調査レポート」)にも上ります。

 しかし、DXをどのように定義しているのかは、企業によってまちまちです。今回、Regrit Partnersが実施した「簡易DX成熟度診断アンケート」で「会社全体もしくは各部門・領域にてDXをどのように定義して取り組んでいるか」を質問したところ、全体の44%の企業が「データの活用やビジネスプロセスのデジタル化を通じて全社的な改革を実現すること」と回答しています。続いて「デジタル技術を活用して商品・サービスやビジネスモデルそのものを変革すること」(22%)、「デジタル技術を活用した企業変革を通じて組織の文化・風土、人の考え方まで変革すること」(19%)という回答が挙がっていますが、多くの企業では破壊的なイノベーションよりも、実現性の高いデータ活用やビジネスプロセスのデジタル化を通じた改革に注力していることが明らかになりました。

 しかし、DXとは単なるIT化・デジタル化ではありません。DXの本質は「デジタル技術を活用した企業全体の変革」―― すなわち提供する製品やサービス、ビジネスモデルだけでなく、組織の在り方、日々の業務、さらには組織の文化・風土、人の考え方まで、まったく新しい形、考え方に変革することにあります。デジタル技術はあくまでもツールであり、それを活用して今までのやり方、考え方を変えることがDXなのです。

 現在は各社各様に進められているDXですが、アンケートではDXの成果を創出・体感出来ている企業はまだまだ少なく、成果を創出・体感できていたとしても一部の部門・領域に限られるという結果が出ています。

「簡易DX成熟度診断」の結果と次の一手

会社全体でDXの成果を創出・体感できている企業が少ないのは、どこに原因があるのでしょうか。それを明らかにするために、Regrit Partnersでは、経済産業省が策定した「DX 推進指標」に基づき、企業がDXを成功に導くために必要となる環境整備の成熟度を簡易的に評価する「簡易DX成熟度診断」を作成しました。

 診断結果のサマリーは、図のとおりです。ここでまず注目したいのは、平均スコアと最高スコア企業とのギャップです。例えば「ビジョン」や「経営トップのコミットメント」にはスコアのギャップが大きいものの、実はこれが成果の創出に影響があるわけではありません。実は成果が限定的なのは、「仕組み」の整備に原因がある可能性が高いのです。

 Regrit Partnersはこの診断結果に基づき、以下のように考察しています。

  1.  各社経営層は DX に対する関心は強く、会社全体としてのビジョンも掲げ、経営計画にも反映させる形で推進していく姿勢を取っている。
  2. 上記に伴い、社内の仕組みの整備も進められてはいるものの、 十分機能しているとは言い難い。
  3. 特に各社整備が遅れているのは、 DXを成功に導く仕組み作りの重要項目である「人材採用・育成」(部門横断でリーダーシップを取れる人材)。
  4. ゆえにDX推進組織が組成されたとしても、個別部門の支援に留まってしまうことが多く、部門横断での改革を推進している企業は50%以下となっている。
  5. ビジョンやゴールが明確であっても成果を創出・体感するには至らず、当該ビジョンやゴールを達成するための仕組み構築とのバランスが重要。
  6. つまり、多くの企業がDX推進に向けた環境整備に注力しているものの、取り組みが中途半端に終わるケースも散見されるので、注意が必要というわけです。

 では、DXを成功に導く次の一手はどうすべきでしょうか。まずはDX推進組織が部門横断で取り組みを推進できるように進化するために、組織を構成する人材を見直すとともに、社員に対するデジタル教育/変革マインド醸成を実施します。DX推進組織は既存の情報システム部門内に設置されるパターンが最も多いのですが、既存のメンバーだけでなく事業やオペレーションを熟知したメンバーも補強することが求められます。

 そしてDXプロジェクトを円滑に推進するために最も重要なのが、「チーム・組織マネジメント」「リソースマネジメント」「コミュニケーションマネジメント」の3つです。チーム・組織マネジメントでは組織構造的な問題の無意味な調整を排除するように構造・仕組みを変え、リソースマネジメントでは社内に固執せず社外のリソースも活用するオープンイノベーションを推進し、さらにコミュニケーションマネジメントでは改革のインフルエンサーとなる各部門のキーマンを見極めて巻き込むことが重要になります。

 

(図)「簡易DX成熟度診断」結果サマリー

 

以上がイベントのレポートとなります。コンカーでは、経費領域における間接業務のデジタルトランスフォーメーションを支援しています。関心のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

 

 

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